交通事故の被害を受けたら、加害者に対して損害賠償請求を行います。
損害賠償請求は基本的に被害者本人が行います。
しかし、交通事故の場合は被害者が死亡してしまう場合などで、被害者本人に請求能力が無い場合もあります。こうした場合は誰が損害賠償請求をできるのでしょうか?
ここでは、交通事故の損害賠償をできる人と条件についてまとめました。
被害者本人以外が交通事故の損害賠償を請求できる場合
交通事故は原則、被害者本人が損害賠償の請求をします。
しかし、次の場合は被害者本人以外からの請求が可能です。
- 被害者本人が死亡した場合
- 被害者本人に重度の後遺症が残り、本人が直接損害賠償を請求できない場合
- 被害者が未成年
- 被害者が被後見人
いずれの場合も、近親者をはじめ、特定の要件を満たす方のみが被害者本人に変わって損害賠償請求できます。
それぞれ、請求できる方を紹介します。
本人が死亡した場合
交通事故で被害者本人が死亡した場合は、損害賠償の請求権は相続されます。
相続は配偶者がいる場合は、無条件で配偶者が相続人になり、配偶者に加えて以下の順位の最優先者が相続人になります。
第1順位:直系卑属(子・孫)
子供がいる場合は子供(胎児含む)、子供が既に死亡していて孫がいる場合は孫。配偶者がいる場合の法定相続分は配偶者1/2、子(孫)1/2。
第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
被害者本人の親がいる場合は親。親が死亡して祖父母がいる場合は祖父母。配偶者がいる場合の法定相続分は配偶者2/3、親(祖父母)1/3。
第3順位:兄弟姉妹またはその子
被害者本人の兄弟が多い場合は、それぞれで持分を分割して相続します。兄弟が全て死亡していて兄弟の子供がいる場合は相続人になります。配偶者がいる場合の法定相続分は配偶者3/4、兄弟1/4。
本人が死亡した場合は、相続人によって交通事故の賠償請求をします。被害者本人の賠償のほか、相続人の自分自身の慰謝料請求もできます。なお、相続で得た交通事故の賠償金は相続税の課税対象になりません。
本人が死亡した場合の賠償請求権者の例外として、内縁の妻がいた場合は自賠責保険で賠償請求権を認めています。しかし、ほかに相続人がいる場合はトラブルや法律上の問題も多く発生します。必ず法律の専門家によく相談をして行動しましょう。
相続は相続人同士の持分でトラブルが起こる事が多いですが、交通事故の賠償請求までは相続人が一致団結する事が大切です。
被害者本人に重度の後遺症が残った場合
被害者本人の後遺症による第三者の損害賠償請求は、後遺症の症状が死と同視できるような重大な後遺症に限ります。身体障害者1級の認定を受けても、本人に意思があり、適切な判断や意思表示できる能力があれば被害者本人が直接請求します。
死と同視の後遺症が残った場合の損害賠償の請求権者は、原則、次の一定の近親者です。
- 父、母
- 配偶者
- 子
本人が生きている後遺症障害の場合、相続は発生しないので、配偶者や親が単独で賠償請求し、損害賠償で得たお金を管理できます。
被害者が未成年者の場合
被害者が未成年者の場合は本人に請求権がなく、原則親権者(親)が損害賠償請求をします。親がいない場合は、同居の親族が損害賠償請求権を持てます。
被害者が未成年でも結婚している場合は成人とみなされ、被害者本人から損害賠償できます。また、被害者が結婚していて死亡した場合は、その配偶者(未成年含む)も損害賠償権を相続します。
被害者が被後見人の場合
被後見人とは、精神的な障害などを理由に、自分の行為の結果に合理的な判断をする能力がないと認められた方です。被後見人は未成年者と同様に、単独で法律行為をする事ができません。
交通事故の損害賠償請求をする場合は、後見人が法定代理人として損害賠償権を持ちます。被後見人は本人や配偶者、補助人、検察官などが家庭裁判所に申請をして、認められている必要があります。
被後見人が行った法律行為は取消する事ができます。事故現場で過失の話や損害賠償をしない約束を書面に残していた場合でも、後から全て無効にする事ができます。