交通事故は加害者側と被害者側の双方が、賠償について合意をしたり、法律によって加害者が適切な罰則を受ける事で解決します。
ここでは、こうした交通事故の紛争解決方法について解説します。
交通事故の紛争解決方法は3つ
交通事故の紛争解決方法は次の3つがあります。
- 示談
- 調停
- 訴訟
交通事故の全体の約9割は示談によって解決されてます。
物損事故や、死亡・後遺症を伴わない人身事故や、ひき逃げ、飲酒運転など悪質性が高い特定の事故を除いて、まずは示談によって解決を目指すようにしましょう。
示談とは
示談とは、訴訟や調停などの裁判所を通さずに、当事者の代理人(主に保険会社同士)もしくは当事者本人が、直接、賠償をめぐる話し合いをして合意を目指す事です。
裁判所を通した調停、訴訟をするよりも、手間もコストもかからず交通事故の紛争を解決できます。
示談は加入している自動車保険の事故担当スタッフが、過去の自動車事故による判例や民法をもとに、過失割合や適切な賠償金を算出し、双方の合意を求めます。
示談は加害者側、被害者側が合意をする必要があるので、もし調停や訴訟を行った場合でも、同等の結果になるように事故状況や被害状況を分析して、適切な結果になるよう行われます。
示談がまとまったら、示談書を作成し公正証書にすれば、裁判による判決と同じ効力を発生します。
示談がまとまらない場合は民事調停による解決を図ります。
(参考記事:示談による解決法)
調停とは
調停とは、訴訟のように原告、被告が法定で争うのではなく、調停委員の意見や助言を聞きながら、当事者間の合意を図るものです。
訴訟に比べて時間も費用も安く済み、弁護士を雇う必要もありません。
調停がまとまれば、調停調書を作成し、これもまた示談書(公正証書)や裁判の判決と同じ効力を持ちます。
調停は主に次の場合に活用されます。
・示談が決裂した時
・紛争解決をめぐり、お互いもしくは片方が感情的になっていて、直接の示談交渉が難しい場合
・片方が交通事故紛争解決のプロ、片方が素人(自動車保険未加入者など)で直接示談すると公平な結論が見込めない場合
・加害者に賠償金の支払い能力が無い。もしくは不安があり債権の確保をしっかりしておきたい時
主に調停は示談が決裂した時の次のステップとして活用されます。
調停委員の意見や助言には強制力がなく、調停をしても双方の合意に至らず調停不成立に終わる場合もあります。
調停でも合意ができなければ、訴訟を行うしか紛争解決方法はありません。
訴訟とは
訴訟は裁判で決着をつけて、賠償や過失についての責任追求をする事です。
示談や調停など双方の合意が必要な紛争解決方法では、解決できなかった方が行う最終手段です。
裁判は、最終的に判決という強制力のある結論が出ます。
しかし、納得がいかなければ控訴・上告する事で、高等裁判所や最高裁判所による二審、三審に進む事もできます。
訴訟は目撃者の証言や現場検証・鑑定などの立証手続きをして、証拠を明確にしないといけません。
訴訟で勝つには専門知識が必要なため、主に被告側、原告側の双方が弁護士を代理人に立てて手続きを進めます。
裁判はお金と手間、時間がかかるデメリットがあるので、交通事故のほとんどは訴訟を避けるために示談、調停による解決を目指して行われます。しかし、交通事故はいつどこで、どのような相手と起こるか分かりません。
事故の当事者のいずれかが、一切示談、調停による合意に応じなければ訴訟で解決する以外の方法はありません。
万が一の事も想定し、自動車保険は弁護士費用特約をつけておくと安心です。
損害賠償請求権には時効がある
交通事故の損害賠償請求権には時効があります。
被害者と加害者の事故の当事者双方が、事故で損害が発生した事実を知った日から3年間賠償請求を一切行わないと、時効によって賠償請求権が消滅します。
後遺障害の場合は、原則症状固定から3年が時効期間です。
またひき逃げなどのように、損害と損害を加えた加害者が相手の事を知らなかった場合は、20年経過すれば時効が成立します。
示談が長引きそうな時は時効の中断をする
示談が長期化して時効の期日が近づいてきた時は、請求権者は時効中断の手続きを取ります。
時効中断手続きは内容証明郵便で相手方に賠償金の請求をして、それでも払わない時は6ヶ月以内に調停申立か訴訟提起をする事で、時効を中断されます。
まとめ
交通事故の紛争解決方法は原則、次の3つのステップを順を踏んで行われます。
示談 → 調停 → 訴訟
示談と調停は双方の合意が必要。訴訟は判決に強制力がありますが、控訴や上告で結論を先送りする事が可能です。
交通事故の9割は示談によって解決していますが、双方の合意が必要なため、事故の相手によっては些細な事故でも、裁判(訴訟)に発展する事もあります。