交通事故にあったら、まずは被害者救済をする必要があります。
被害者救済は交通事故の加害者の義務の一つです。

万が一、被害者救済の処置を怠ると、道路交通法72条の措置義務違反によって罰せられます。

●措置義務違反の罰則(運転の停止と負傷者の救護および危険防止措置)

事故の種類 懲罰の対象 罰則
死傷事故 運転者 5年以下の懲役または50万円以下の罰金
死傷事故以外 運転者および搭乗者 1年以下の懲役または10万円以下の罰金

被害者救済とは

交通事故を起こした際に行う被害者救済について紹介します。

被害者救済における「被害者」とは「負傷者」のこと

被害者救済における「被害者」とは、過失割合が低い方ではなく、事故によって負傷した方の事を指します

明らかに過失が大きい危険運転をした方が相手であっても、負傷しているようであれば、まずは最優先して適切な救護処置を取りましょう。

救護措置のノウハウがある方がいれば立場に関係なく任せるようにする

交通事故の救護措置は、事故の当事者や加害者などの立場は関係なく、人命を守る事を最優先しなければいけません
その場で救護措置のノウハウがある方がいれば、立場を問わず主導権を握ってもらうように依頼して、指示を仰いで行動するようにしましょう。

被害者救済の救護措置は、加害者の義務で怠ると罰金がありますが、これは加害者が必ず主導権を取って救護措置を取るという意味ではありません。
加害者は、その場にいる人と連携して自分にできる最善の方法を取っていれば、直接被害者の手当を行わなくても措置義務違反にはなりません

2次災害の危険防止措置をする

事故を起こした直後は、明らかに重症な負傷者がいたとしても、まずは後続車からの2次災害の危険防止措置を取る事が大切です

車には必ず発炎筒が常備されているので、発炎筒を燃やして後続車に事故が起こっている事を伝えましょう。
すぐに発炎筒が用意できない時は、手をふったり、タオルや上着など大きな物を振り回して事故が起こっている事を伝えます。

負傷者の救護活動も急務な時は通行人などにも声をかけて、危険防止措置や119番、応急手当などを手伝ってもらようにしましょう。
危険防止措置を取る事も、重要な被害者救済措置です。

加害者はまずは、相手の怪我の状態をチェックする

明らかに事故の加害者側だった時は、相手の怪我の状態をチェックします。

被害者の車に乗っていた方や歩行者など事故に巻き込まれた方が、怪我もなく元気そうにしている場合でも、まずは「お怪我はございませんか?」と確認の言葉をかけましょう。こうした一言があるのと無いのでは、先方からの印象が違い、その後の示談交渉にも影響を与えます。

また、車から出てきた人が元気でも、実は車内に残っている方や、見えない所にいた人が怪我をしている場合もあります。
交通事故は怪我をした人を把握する事が大切です

被害者の救護活動の方法

交通事故における救護活動は教習所の実習項目でもありますが、免許を取り立ての方を除いて忘れてしまっている方が多いでしょう。
今一度、救護活動でやるべき事や注意点を認識して、有事の際には適切な処置ができるようにしましょう。

まずは被害者の状態の確認

一番最初に行うのは、被害者がどのような状況なのか確認する事です
意識の有無や心肺停止など一刻を争う事態なのか、それともムチ打ちや捻挫などの事故処理が終わってから通院してもらえばいいような、命に別状が無い状態なのかを確認します。

事故が起こって被害者が倒れていると、真っ先に119番に電話する方がいます。これは間違った事ではありませんが、最低限意識の有無や生命の危機に直面しているかだけでも把握しておくと、適切な指示を仰ぐ事ができます。

万が一、心肺停止など至急蘇生措置を取らないといけない場合は、大きな声で周囲に助けを求めましょう。蘇生法は時間との勝負なので、すぐに実践する事が大切ですが、救急車も一刻も早く呼ぶ必要があります。

なるべく周囲に助けを求めて、複数の事を分担して同時進行する事が望ましいです

頭を打っていないか確認する

被害者の状態の確認で重要なのが頭を打っているかです。頭を打っているのであれば、無理に素人が触って動かさない方がいいです。意識を失っている時も同様に、頭を打っていると仮定して考えましょう。

頭を打っていた場合は、その場で頭にタオルを挟むなど最低限の処置をして、意識や痛みの確認を取りましょう。そして倒れている場所に応じて、後続車追突防止の2次災害防止措置にも力を入れるようにします

もし怪我をしているのが手や足の場合は、路肩や歩道など、安全な場所に被害者を移動させる介助を行います。
本人が「大丈夫」と言っても、頭を打っている形跡があったり、フラついている素振りがあれば救急車が来るまで安静にさせるようにします。

119番通報をする

119番通報は、なるべく早く行った方が良いですが、優先順位は後続車からの2次災害防止や状態の把握の後です。もし重症で一刻を争う場合は、周囲にいる人に119番通報をしてもらうように頼みましょう。

119番通報では、交通事故があって負傷者がいる旨と場所を伝えます。そして、負傷者の状態を伝えて指示に従って応急処置を取るとよいでしょう。119番通報をしたら、被害者に「すぐに救急車が来るから」などと声をかけする事も効果的です。

119番通報で交通事故と伝えれば、110番に電話しなくても警察も事故現場へ急行してくれます。

被害者救済は最低限の義務。一段落したら適切な対応を取る

交通事故が起こった時は被害者救済が最重要項目ですが、救急車が来たり被害者に大きな怪我がない事を確認すれば、それで事故処理は終わりではありません。

被害者救済が一段落したら、すぐに事故現場の写真を取ったり、目撃者に実況見分に立ち会ってもらうなど、その後の事故の示談交渉で不利にならないように自分を守るための行動を取りましょう。

まとめ

・交通事故を起こした際は被害者救済を最優先する
・被害者とは、負傷者の事で過失がある方でも負傷していたら全力で救護する
・後続車からの追突防止の危険防止措置も重要な被害者救済措置のひとつ
・被害者救済措置を取らないと道路交通法によって罰せられる
・救護活動は、負傷者の状態の確認、119番通報、最低限の応急処置がある
・被害者救済は負傷者が重症の場合は立場を問わずその場にいる人全員が連携を取る事が大切