交通事故で各種保険を利用する時はいくつかの注意点があります。
交通事故の保険金は非常に金額が大きいため、知らなかったでは済まされない重要な事もあります。
最低限おさえておきたい各種保険利用の注意点を紹介します。
各種保険利用の注意点
交通事故で各種保険を利用する際に、最も注意しなければいけないのが、保険が利用できないケースです。自賠責保険や任意保険に加入しているのに保険がおりないケースは、主に免責事由に該当した場合と時効の成立です。
それぞれ詳しく紹介します。
免責事由とは
免責事由とは、保険会社が保険金や給付金を支払わなければならない責任から免れる場合の事由です。つまり、免責の条件に合致すると、保険に加入しているにも関わらず、保険会社からの保険金が一切支払われない場合があります。
免責事由は自賠責保険と任意保険によって違います。任意保険と比べて自賠責保険の方が、被害者救済を目的に国が加入を義務付けている保険という特性上、制限が厳しく、免責事故になる事が少ないです。
自賠責保険の免責事由
自賠責保険は、交通事故の被害者を幅広く救うための対人賠償のみの強制保険です。そのため、免責事由は非常に厳しく制限されていて、実際に免責が認められるケースはほとんどありません。
自賠責保険では、次の3つの要件を全て加害者側が立証しなければいけません。
- 自己のために自動車の運行の用に供する者および運転者が自動車の運行に注意を怠らなかったこと
- 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと
- 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
これらは、運転者自らの証言だけでは免責事由の立証はできません。特に、運転者や運行供用者の注意を怠らなかったことや、被害者や第三者の過失を証明する事は非常に困難です。
自賠責保険で免責事由をクリアする事は不可能に近いと言われています。
(参考:加害者が免責されるとき)
任意保険の免責事由
任意保険は、保険の自由化に伴い保険会社ごとに免責条項が違います。詳しくは、加入している自動車保険の免責条項で確認してください。
ここでは、一般的な任意保険の免責事由に該当する事例をまとめました。
年齢条件違反
任意保険は運転者の年齢条件を設定する事で保険料が変わります。原則、年齢条件を高く設定するほど保険料の割引率が高くなります。
年齢条件は補償する方を限定する特約ですので、万が一年齢条件をクリアしていない配偶者や子供などが運転した場合は、規約上、免責事由に該当します。
運転者限定違反
任意保険は契約車両の運転者を限定する事で保険料を安くできます。限定範囲が狭まるほど保険料の割引率は高くなります。
運転者限定を付けているのに、同僚や友人、別居で既婚の子供など、運転者限定の範囲外の人が運転した場合は、免責事由に該当します。
地震による噴火や津波
天災には様々な種類があって、自動車保険は保険商品によって天災への対応が異なります。車両保険に加入した場合、洪水や落雷被害は補償しますが、地震による噴火や津波は免責事項にしている保険商品が多いです。
しかし、東日本大震災で大量の車が津波で流されて自動車保険の補償がなかった事が問題視され、地震による噴火や津波を含めて天災を幅広くカバーする特約を用意している保険会社も増えています。
保険を付帯していない場合
自動車保険(任意保険)の中には、対人や対物の賠償をはじめ、傷害、車両保険など幅広い保険(補償プラン)があります。
対人賠償や対物賠償は、自動車保険に加入する上で付帯が必須になっている事が多いですが、人身傷害や搭乗者傷害の傷害保険と車両保険は補償を外せる場合があります。
当然、保険を付帯していない場合は免責事由になり、一切補償はありません。
泥棒運転、ハコ乗りなどの危険運転、意図的に事故を起こした場合など
車を窃盗して泥棒運転した場合や、ハコ乗りなどの危険運転、ひき殺す事や保険金詐欺をする事を目的に意図的に事故を起こした場合は、免責事由によって保険金は支払われません。
悪質性が低ければ保険会社の裁量で見逃してもらえる場合も
著者は長年、自動車保険の代理店として、多くの顧客の自動車保険を扱ってきました。その中で、運転者の年齢条件違反など、免責事由に該当している中で事故を起こしてしまった案件がありました。
しかし幸いにも、著者が扱った案件は全て保険会社の裁量によって保険金の支払いがありました。
年齢条件違反など、設定ミスによって起こりうる免責事項で、なおかつ長年無事故で加入している顧客だった事もあり保険会社に交渉して免責事由にならないように特例措置を取っていただきました。
初犯で契約者に免責事由になる違反の認識が低いなど悪質性が低いと認められれば保険会社の裁量で見逃してもらえるケースもあります。この場合、その年の保険料の年齢条件を事故を起こした方の年齢条件に変更した場合の差額を徴収する事で保険適用扱いになります。
ただし、こうした事例はあくまでも保険会社の好意による特例措置です。保険約款に免責事由と定めてある行為をした以上、保険会社から突き放された場合、免責事由を受け入れる以外方法はなくなります。
自動車保険は、定期的に補償内容や賠償範囲を見直して、適切な条件に設定しておくようにしましょう。
保険金請求の時効
保険金請求権には時効があります。自賠責保険、任意保険ともに、時効は保険金請求権が発生してから3年です。
時効の起算点は事故の状況によって次のように定められてます。
●加害者請求
・被害者に賠償金を支払ったとき
●被害者請求
・後遺障害なしの傷害事故:事故発生時
・後遺障害ありの障害事故:後遺症の症状固定時
・死亡事故:死亡時
・物損事故:事故発生時
時効は中断できる
保険金請求は示談交渉による賠償金や過失割合の決定が長引いたり、治療が長期化する事で時効の期限を迎えてしまう場合があります。
この場合、法的的続きに進むか、配達証明付内容証明郵便で請求書を送り催告をするなど、状況に応じて適切な処理をする事で時効の中断ができます。
必ず示談交渉を依頼している自動車保険の事故担当スタッフや、弁護士などプロの専門家に相談して時効の中断するための適切な対処をしましょう。