自賠責保険は交通事故の被害者救済を目的にした強制保険で人身事故にのみ保険金が支払われます。
ここでは、さらに詳しく自賠責保険の補償内容と支払い限度額を解説します。
ケース別の自賠責保険の支払い限度額
自賠責保険の補償内容は以下のとおりです。
- 死亡事故 3,000万円まで
- 後遺障害 最大4,000万円
- 傷害事故 120万円まで
補償は被害者1名あたりの上限額で、被害者が複数名いる場合の人数の上限はありません。
たとえば、バスを相手に40名を死亡させる事故を起こした場合は、加害者の自賠責保険から、死亡保障最大3千万円の40名分で12億円の保険金が支払われます。
また、自賠責保険は被害者救済を目的にした保険なので加害車両の運転手の補償はありませんが、同乗者は補償の対象になります。
(参考:自賠責保険は同乗者にも適用できる)
死亡事故による支払い限度額
死亡事故の場合、自賠責保険から被害者1名あたり、最大3千万円の保険金が支払われます。
死亡による賠償金は次のものがあります。
・死亡に至るまでの治療費
・葬儀費
・逸失利益
・慰謝料
それぞれ、死亡事故による賠償金の支払い基準(自賠責保険基準)は次の通りです。
●死亡に至るまでの治療費
:通常の傷害事故の賠償金と同じ算出方法
●葬儀費
:原則60万円まで
●逸失利益
:収入(年収) × (1-生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
●慰謝料
:死亡者本人の慰謝料は350万円
:遺族の慰謝料は請求者の人数に応じて次の金額
・・・1名:550万円
・・・2名:650万円
・・・3名以上:750万円
さらに被害者に被扶養家族がいる場合は200万円加算
それぞれ、自賠責保険基準の計算方式です。実際には弁護士会基準や任意保険基準によって、さらに高額な賠償金になる事例が多いです。
(参考:死亡事故の算定例)
死亡事故の場合、ほとんどの場合で、自賠責保険の上限3千万円以上の賠償額になります。自賠責保険では対応できない部分は、加害者の任意保険の対人賠償から保険金が支払われます。
後遺障害が残る傷害事故による支払い限度額
後遺障害が残る傷害事故は被害者1名あたり、自賠責保険から最大4千万円の補償があります。
後遺障害の症状が固定するまでの期間は、後遺障害がない傷害事故と同様の計算式で、最大120万円までの治療費が後遺障害の賠償金とは別に支給されます。
自賠責保険基準では、後遺障害の等級に応じて次の金額が支払われます。
●介護を要する後遺障害1級 4,000万円
:常に介護が必要な状態の重度の後遺障害
●介護を要する後遺障害2級 3,000万円
:随時介護が必要な状態の重度の後遺障害
●1級 3,000万円
:両眼失明、言葉を発せられない状態、両上肢を肘関節以上での切断、両上肢または両下肢の機能の全廃、両下肢の膝関節以上の切断など
●2級 2,590万円
片眼失明、もう片方の眼の視力0.02以下、両眼の視力0.02以下、両上肢を手関節以上で失ったもの、両下肢を足関節以上で失ったものなど
●3級 2,219万円
片眼失明、もう片方の眼の視力0.06以下、咀嚼又は言語の機能を廃したもの、障害によって終身労務に服する事ができないもの、両手の手指を全部失ったものなど
●4級 1,889万円
両眼の視力が0.06以下、咀嚼及び言語の機能に著しい障害、両耳の聴力を失う、片腕、片足を膝もしくは肘関節以上で失ったもの、両手の手指の機能の全廃など
●5級 1,574万円
片眼失明、もう片方の眼の視力0.1以下、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの、四肢の一部を失ったもの、足指機能の全廃など
●6級 1,296万円
両眼の視力が0.1以下、咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの、著しい聴力障害、上肢または下肢の3大関節中2つの関節機能を廃したもの、手指を親指を含め4本以上切断など
●7級 1,051万円
片眼失明、もう片方の眼の視力0.6以下、日常生活に支障をきたす聴力障害、軽易な労務以外の労務に服することができないもの、親指を含み3本の指の切断、もしくは親指以外の4本の指の切断、両足の指の切断など
●8級 819万円
一眼失明、脊柱に運動障害を残すもの、親指を含む2本の指の切断もしくは親指以外の3本の指の切断、上肢または下肢の3大関節中、1つの関節機能を廃したものなど
●9級 616万円
両眼の視力0.6以下、片眼の視力0.06以下、鼻の欠損もしくは著しい機能障害、1m以上の普通の話声が聞こえない聴力障害、手指の親指、もしくは親指以外の2本の指の切断など
●10級 461万円
一眼の視力0.1以下、十四歯以上に対し歯科補綴、手の親指もしくは親指以外の2本の機能を廃したもの、関節に著しい障害が残ったものなど
●11級 331万円
十歯以上に対し歯科補綴、両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害、両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度、脊柱に変形を残すもの、手の人差し指、中指、薬指の1本をいずれか切断、労務の遂行に相当な程度の支障があるものなど
●12級 224万円
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形、七歯以上に対し歯科補綴、手の小指の切断、手の人差し指、中指、薬指のいずれか1本の用を廃したもの、局部に頑固な神経症状を残すものなど
●13級 139万円
一眼の視力0.6以下、五歯以上に対し歯科補綴、手の小指の機能を廃したもの、胸腹部臓器の機能に障害、下肢を1cm以上短縮したものなど
●14級 75万円
三歯以上に対し歯科補綴、軽度の聴力障害、上肢または下肢の露出面に手のひらの大きさの醜い跡が残るなど
傷害事故による支払い限度額
障害事故の自賠責保険からの支払い限度額は被害者1名に対して120万円です。
補償対象項目と支払い基準は次のとおりです。
●治療費
:診察料、手術料、投薬料、入院費などかかった費用に実費
●付添看護費
:医師が看護を認めた場合(12歳以下は許可不要)、職業付添人は実費。
親近者の付添費は次のとおり。入院付添費:4,100円/日、通院付添費:2,050円/日。
●入院中の諸雑費
:1日あたり定額1,100円
●通院交通費
:通院に要した費用の実費分(参考記事:57.自賠責保険の交通費)
●義肢などの費用
:義肢、義眼、メガネ、補聴器、松葉杖など
●診断書などの費用
:発行に要した必要かつ妥当な実費
●文書料
:交通事故証明書、印鑑証明、住民票の印紙代など
●休業補償
:原則1日5,700円、これ以上の収入源の立証で最大19,000円まで
●慰謝料
:1日あたり4,200円。治療期間と、通院日数×2の少ない方で算出