車は日常生活から、仕事、レジャーなど幅広い場面で活躍する便利な乗り物ですが、一歩間違うと凶器と化して人を死傷させてしまう事もあります。

公道で車を走らせるには、万が一の事故の被害者救済を目的に自賠責保険への加入が義務付けられてます。
ここでは自賠責保険の種類と請求手続きについて紹介します。

自賠責保険はどこで加入しても、全て同じ

自賠責保険は大手損保会社をはじめ、複数の保険会社と共済で取り扱いをしています。

主要な自賠責保険取扱会社
東京海上日動 三井住友海上 損保ジャパン日本興亜
あいおいニッセイ同和損保 朝日火災海上 富士火災海上
日新火災海上 共栄火災海上 ジェイアイ傷害火災
大同火災保険 セコム損害保険 セゾン自動車火災保険
JA共済 全労済 全国自動車共済(全自協)
全国トラック交通共済

自賠責保険はどこの保険会社や共済で加入しても構いません。
全ての保険会社や共済が扱う自賠責保険は、保険料や補償内容が全て同一になっています。

自賠責保険の補償内容

自賠責保険は交通事故によって死傷した被害者救済のための保険です。
そのため、加害車両の運転手の補償や、車の修理代金などの物損事故の補償はありません。

自賠責保険の補償内容は次のとおりです。

  • 死亡事故 3,000万円まで
  • 後遺障害 最大4,000万円
  • 傷害事故 120万円まで

(参考:自賠責保険の支払い限度額)

上記で紹介している金額は、被害者1名ごとに全額が補償されます。
たとえば加害者が1台の車で、5名が死亡する事故だった場合は、加害者の自賠責保険から3,000万円 × 5名=合計1億5千万円が支払われます。

自賠責保険の対象範囲

自賠責保険の補償対象になるのは、公道走行中の事故だけではありません。
加害車両が原因で起こった事故は原則全て補償対象になります。

よくある自賠責保険が適用される事故の例をまとめました。

  • 駐車場での事故
  • 停止中の自動車のドアの開閉によって、相手を怪我させた
  • 坂道でサイドブレーキを引き忘れ無人の車が動き出して人と接触した
  • ダンプのトラックの荷下ろし中の事故

ただし、運転手が故意で事故を起こした事が判明した場合は、自賠責保険も一切利用できません。
(殺意を持った轢き殺し行為など)

また、自賠責保険は加害車両や自損事故の車両の運転手の補償はありませんが、加害車両の同乗者の死亡や怪我は補償されます。

自賠責保険と任意保険の対人賠償の関係

自賠責保険は死亡事故3千万円、傷害(怪我の補償)120万円までしか補償されません。これは非常に少ない金額で、死亡事故はもちろん骨折や軽度の後遺障害が残る事故でも、自賠責保険の枠では対応しきれない事が多いです。

そのため、人身事故の加害者になった時のリスクを抑えるため、任意保険で対人賠償無制限に加入する事が車所有者のスタンダートになってます

任意保険に加入すると、自賠責保険と合わせて対人賠償を2重で加入する形になりますが、人身事故を起こした場合は必ず自賠責保険の賠償分が先に適用されます。
任意保険の対人賠償は原則、自賠責保険の補償枠から飛び出した分だけを補償します。

たとえば、賠償額の総額100万円の人身事故の場合、任意保険に加入していれば、全て任意保険の事故担当者がサポート、示談交渉代行、請求手続きを行ってくれますが、賠償金は全て自賠責保険から支払われていて保険会社は保険金を支払っていません。

自賠責保険の請求手続き

自賠責保険は加害者が加入している保険です。そのため、加害者請求が基本です。しかし、自賠責保険は被害者救済を目的にしている保険なので、被害者やその遺族が直接請求する事も可能です。
また、事故の当事者だけではなく、加入している保険会社による手続き代行も可能です。

現在、対人賠償の任意保険付帯率は73.8%で、人身事故のほとんどは、任意保険会社の事故担当窓口が面倒な手続きを代行してくれて、加害者、被害者が直接請求する事は少ないです

自賠責保険は仮払い可能

人身事故の損害賠償額の最終的な決定は、死亡事故の場合は裁判や示談交渉が決着するまで、傷害事故は完治したり後遺障害の症状安定するまでの時間を要します。
その間にも事故の損害で治療費や葬儀費用、家族の生活費など被害者が立て替えないといけない負担金がたくさんあります。

そこで自賠責保険は賠償金が確定する前でも、条件に応じて保険金の一部を仮払いや内払いで支払う制度を用意しています。
(参考:自賠責保険は仮払いあり)

自賠責保険の請求書類一覧

自賠責保険は必要書類を保険会社に提出する事で保険金の請求をします。
自賠責保険の請求書類は次のものがあります。

自賠責保険の請求書類 用途
仮渡金支払請求書 被害者が仮渡金の請求をする際に必要
保険金支払請求書 加害者側が保険金請求する場合の書類
損害賠償額支払請求書 被害者側が保険金を請求する場合の書類
交通事故証明書 人身事故の場合は提出必須。都道府県の自動車安全運転センターで交付してます
医師の診断書 傷害事故の場合に必要
死体検案書または死亡診断書 死亡事故の場合に必要
住民票または戸籍謄本 被害者が未成年で親権者が被害者請求する場合のみ必要
委任状および印鑑証明 被害者、加害者の事故の当事者が第三者に委任して請求する場合に必要
領収書、レシート等 被害者や加害者がタクシー代や移動交通費など料金を立て替えた時の領収書
戸籍謄本(全部事項証明書) 死亡事故(仮払含)の場合に必要
印鑑証明 原則、いかなる場合でも必要
診療費明細書 仮払の際は扶養
休業損害証明書または所得証明書 休業補償や逸失利益算出のために必要。被害者が仕事に一切影響出ない軽傷の場合は不要になる場合もあります
その他、損害額を立証する資料 クレジットカードの利用明細や、電車やバスで移動して通院した場合は、自宅から病院までの公共交通機関のルート案内など
示談書 示談成立の場合のみ提出

このように自賠責保険の請求のための書類は多岐にわたります。必ず保険会社に問い合わせをして指示に従って必要書類を用意していきましょう。

提出書類は、早めに提出する事が求められるものと、提出を急がないものがあり優先順位もあります。必ず、保険会社(自賠責保険会社、任意保険会社)に相談して、指示に従って必要書類を揃えていきましょう。

加害車両が自賠責保険に未加入だった場合

加害者が自賠責保険を含め、保険に未加入でなおかつ賠償金の支払い能力がない場合は、国が自賠責保険の補償額を上限に損害補償をしてくれます。
相手が無保険車だった場合の請求は、自賠責保険を扱う保険会社で対応しています。

代理店やコールセンターで無保険車両の事故被害に遭った旨を伝えて相談すれば、請求手続きの案内や受付をしてくれます。