示談は急がずに、損害の確定(怪我の完治や後遺傷害の症状固定)を待ってから行う事が望ましいです。
そのため、人身事故の場合は、事故発生から示談開始まで時間が空く事もあります。
被害者は事故発生から示談が始まるまで、何もせずに待っているだけではなく、しっかり事前の準備をしておくと有利でスムーズに交渉を進められます。
ここでは、示談交渉のためにやっておきたい準備について紹介します。
示談のための2つの準備
示談のための準備には、次の2つがあります。
- 示談についての基礎知識と、賠償額算定の勉強
- 必要書類を揃える
示談交渉はおもに任意保険会社が代理で行ってくれますが、必ずしも被害者に有利、もしくは平等な示談をしてもらえるとは限りません。自分自身でも基礎知識や賠償額の相場を理解して、納得の行く内容で示談成立を目指しましょう。
全くの無知の中で示談が始まると、保険会社の言いなりになって、不利な条件を知らぬうちに飲んでしまう場合もあります。
また、示談交渉をするうえでは、賠償請求額を立証するための資料提出が求められます。提出が必須の書類もあれば、証拠を立証するためにあった方が良い書類もあります。
交通事故の示談や保険請求で必要になる書類は多岐にわたるので、あらかじめ書類や証拠の用意をしておくとスムーズで交渉も有利になります。
損害賠償できる範囲を確認する
交通事故の損害賠償は、事故によって直接被害者が支出を余儀なくされる積極損害と、人身事故の際に事故がなければ得られたであろう利益や休業損害を補償する消極損害があります。
直接の治療費や修理費用以外にも請求できる項目は多数あるので、まずは損害賠償はどこまでできるのか範囲を確認しておきましょう。
(参考:賠償額算定の基礎知識)
損害賠償できる費用は領収書やレシートなど、被害者側がお金を使った(立て替えした)記録を残しておく事が必要です。
賠償額の算定は基準がある
損害賠償で重要になってくるのが、逸失利益・休業損害・慰謝料などの消極損害です。目に見えない部分の賠償という特性や、算定基準によって金額が変わる事もあり、交通事故の賠償でも示談によって金額が変動しやすい部分です。
こうした逸失利益は、それぞれ算定基準と賠償額を算出する公式が用意されています。
算定基準には次の3種類があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士会基準
任意保険基準は各保険会社ごとに異なり、また公表されていませんが、自賠責保険基準と弁護士会基準は明確な基準や目安があります。任意保険基準は、おおよそ自賠責保険基準と弁護士会基準の中間、もしくは中間より自賠責保険基準よりと認識しておきましょう。
示談の準備では、自賠責保険基準と弁護士会基準で、逸失利益・慰謝料・休業損害を自分で算定して、請求できる金額の目安を確認しておきましょう。
示談では加害者から、先に賠償額の提示をしてくる事がほとんどです。何も相場や知識がないと提示された金額が適性が判断できず、分からないまま示談に応じてしまう方が多いです。
事前に勉強や独自に算定しておく事で、提示された賠償額に対して、必要に応じて根拠を持って増額要求ができるようになります。
(参考:「慰謝料はどのように算定するか」「逸失利益の算定」「休業損害の補償」)
書類を揃える
損害賠償額の試算を自分自身で行うと、収入証明をはじめ、賠償額の算定に必要な書類を理解できます。損害賠償の請求は、原則すべて根拠を立証する事が必要で、収入証明は被害者側が用意する決まりです。
そのほか、示談や賠償請求で必要な書類、事故の賠償を証明する証拠(写真やドライブレコーダーなど)を事前に準備しておくと、示談がスムーズで有利に進められます。
特に証拠資料は示談が終わってから気付いて、もっと早く証拠提示しておけばよかったと後悔される方が多いです。証拠の出し忘れや、書類の不備で示談が停滞する事がないように、準備段階で整理と用意を心がけておきましょう。
また、その他分からない事や不安な事があれば、交通事故の専門機関を利用してみるのもよいでしょう。
示談交渉のために用意しておきたい書類
●交通事故証明書:交通安全センターで発行
・・・事故発生の証拠として提出必須。実況見分調書(検察庁)も用意しておくとよいでしょう。
●診断書と診療報酬計算書:医師や病院で発行
・・・治療費の算定や傷害の程度、入院、通院の証明によって慰謝料の算定にも必要になります。
●領収書、レシート
・・・通院でやもえない状況で利用したタクシー代や、事故による損害で発生した宿泊費や帰宅費用、その他事故に関連して必要になった出費は領収書、レシートをすべてもらっておくようにしましょう。
事前準備では、時系列(日付順)に領収書、レシートを整頓して、それぞれ事故と出費の関係を説明できるように、メモや記憶を整理をしておくとよいでしょう。
●収入証明書
・・・収入証明書は勤務形態や賠償請求の範囲(休業損害・逸失利益)に応じて適切なものを用意しましょう。
なお、収入証明書は次のものがあります。
・源泉徴収票、給料明細(勤務先から発行済みのもの)
・確定申告控え(事業所得者)
・休業損害証明書(事故後に勤務先より発行)
・内定書、雇用契約書(勤務開始前の事故の場合)
●戸籍謄本
・・・市区町村より発行。被害者と法定相続人の関係によって、必要な戸籍謄本の部数や取得者が異なります。
●後遺障害診断書
・・・後遺障害が残った場合に医師より発行
●死亡診断書
・・・被害者が死亡した場合に医師より発行。死亡事故の場合は除籍謄本も必要になります。