交通事故の示談交渉は、加入している任意保険が代行するのが一般的です。交通事故の示談を多数扱っているプロに任せる事で、スピーディーな解決が見込めます。
当事者同士で示談交渉すると、お互いに感情的になってトラブルに発展する場合もありますが、第三者の専門家が、状況に応じた交渉をしてくれるのも大きなメリットです。
その一方で、事故の相手もほとんどのケースで保険会社が示談代行をしてきます。当然相手もプロなので、それなりの心構えが必要です。
保険会社と示談交渉するときの注意点
相手の保険会社と直接交渉する時は、次の心構えを持っておきましょう。
- 保険会社のいいなりにならない
- 事前の準備を怠らない
- 分からない事や不安な事があれば、その場で返事せず自分の保険会社の担当者や弁護士と相談した上で返事すると伝える
- 恐れない
- 感情的にならずに冷静に対応すること
- 納得いくまで話し合い、疑問があれば素直に伝えること
示談交渉を自分の保険会社に代行してもらう場合でも、相手の保険会社と直接電話などを通じて話をする機会もあります。特に人身事故の被害にあった場合は、謝罪や身体の状態の調子伺いを含めて、直接相手の保険会社から連絡が入る事が多いです。
保険会社の示談代行は、不当に有利な示談を進めようとしてくるケースは少なく、示談を適切かつスピーディーでトラブルなく解決するために、親身に接してくれます。臆することなく、しっかりと話を聞いて納得がいかない事や、分からない事は積極的に聞いたり要望を伝えるようにしましょう。
また、自分の加入している保険会社に示談交渉を依頼する場合でも、何もせずに待っているだけではありません。交通事故は賠償請求や過失の立証などで、様々な必要書類の提出を求められます。
保険会社の担当スタッフの指示に従い、必要書類を速やかに揃えるように心がけ、不安や疑問があれば納得のいくまで保険会社の事故担当スタッフと話を聞きながら、示談を進めてもらうようにしましょう。
賠償金の算出には基準がある
交通事故の賠償金は示談によって、それぞれの保険会社の裁量によって決めているのではなく、賠償金の算出基準に基づいて、適正な賠償額を協議しています。
たとえば、慰謝料をもっとたくさんもらいたいと要望を出しても、慰謝料の算出基準を大きく上回る金額を提示した場合、示談交渉では応じてもらう事は厳しいです。
賠償金の算出に基準を設ける事で、双方に平等でスピーディーな示談成立が可能となっています。
(参考:死亡事故の算定例、傷害事故の算定例(後遺症なし)、傷害事故の算定例(後遺症あり))
賠償金の算出基準は3つある
交通事故の損害金の算出基準は次の3種類があり、次の順番で賠償金の基準額が高いです。
弁護士会基準 > 任意保険基準 > 自賠責保険基準
(参考:賠償額算定の基礎知識)
賠償金の算出基準を自賠責保険基準から、任意保険基準や弁護士会基準に変更する事が交渉によって認められれば、賠償額が大幅に高くなる場合もあります。
基準額によって算出された賠償額だと、保険会社から説明を受けた場合は、どの基準で賠償金を算出したのか確認し、ほかの基準による請求ができないか確認しておくとよいでしょう。
過失割合の認定
交通事故の示談交渉で大きな焦点になるのが過失割合の認定です。それぞれに何パーセントの過失があるかによって、受け取れる賠償金や保険金が変わってきます。
特に人身傷害に加入していない時の人身事故の賠償や、車両保険に加入していない時の物損事故の請求は、過失割合によって事故の当事者が受ける影響が非常に大きいです。
過失割合の認定も、過去の判例をもとに基準値が用意されていますが、加害者と被害者で言い分が食い違う事がよくあります。目撃者の証言やドライブレコーダーの記録、事故直後の現場の写真など証拠を確保しておくと、過失割合の認定交渉が有利になる場合があります。
(参考:過失割合の認定)
収入証明の提出
交通事故の損害賠償の中で、逸失利益や休業補償の賠償額を算出するときは、被害側が自らの収入を立証する資料を提出しなければいけません。
(参考記事:逸失利益の算定、休業損害の補償)
給与所得者であれば源泉徴収や勤務先から発行される休業損害証明書の提出で、実際の収入額が算出できますが、個人事業主をはじめ事業者は経費や減価償却など税金対策の問題などで、実際の利益を証明するには帳簿や通帳のコピーなどの提出を求められる場合がありあす。
収入証明によって認められる収入額に納得のいかない場合は、実際の収入額を立証する証拠を集め、必要に応じて弁護士や第三者機関に相談するとよいでしょう。
示談交渉がまとまらない時
示談交渉は保険会社に代行してもらった場合でも、必ず納得の行く希望通りの着地点になるとは限りません。また、自分が保険会社に提示された過失割合や賠償金の算定に同意しても、相手側の同意が取れなければ示談成立にはなりません。
このように示談交渉がまとまらない時は、次の対処法があります。
弁護士に示談代行を依頼する
任意保険会社に依頼していた示談交渉を一度打ち切り、弁護士に示談代行を依頼します。弁護士が出てくる事で相手が譲歩したり、適切な言い分や証拠の立証によって、示談交渉が進展する可能性が上がります。
なお、弁護士に依頼すると当然費用がかかります。任意保険の弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用も補償されます。また、一部の弁護士事務所や自治体主催などの相談会では、初回無料で相談に乗ってもらえる場合もあります。
相談所などの斡旋
交通事故の示談交渉が難航した時にオススメの相談機関には次のものがあります。
それぞれ、示談の斡旋を依頼した場合、原則無償で中立、公平な立場で専門家が示談交渉の斡旋をしてくれます。ただし、示談の斡旋は加害者、被害者双方が希望した場合にのみ行われます。
また、あくまでも示談交渉の範囲内なので、法的強制力はなく双方が納得できなければ、示談の合意に至らない場合もあります。
調停・訴訟
どうしても示談がまとまらない時の最終的な解決策は、調停や訴訟などの法的行為です。調停は強制力がありませんが、訴訟によって判決が確定した場合は、法的効力によって賠償責任が発生します。
(参考:事故の発生から解決まで)
原則、「示談交渉 → 調停 → 訴訟」の順番で、どうしても双方の合意に至らなかった場合は、次のステップに移っていく流れになります。