交通事故の損害賠償や補償などは、自動車保険以外の保険も活用できる場合があります。
使える保険は有効に活用して、少しでも交通事故に対して手厚い補償を受けられるように、自動車保険以外の保険の仕組みを理解しておきましょう。
自動車保険以外の保険の活用
交通事故の際に、自動車保険以外で活用できる可能性がある保険は次のものがあります。
- 健康保険
- 労働災害補償保険(労災)
- 政府保障事業制度
- 生命保険、医療保険
- 生活保護
それぞれ詳しく紹介します。
交通事故で使う健康保険
交通事故の被害による治療費は、原則、第三者行為による傷害となり健康保険の適用外になります。しかし、交通事故では被害者が治療費を一度立て替える事が多く、その際に全額自費診療の治療費を払う事は被害者の立替負担が大きくなります。
そのため、健康保険は交通事故の被害を受けた際に、「第三者行為による傷害届」を提出することで、本来健康保険が負担する医療費(主に7割)を健康保険が立て替えて、被害者は通常の医療行為を受ける場合と同様に、3割の自己負担金のみにする措置が取られます。
健康保険が立替した治療費は後日加害者に対して請求を行います。被害者が医療機関に支払った治療費も後日、加害者に対して請求を行います。
(参考:第三者行為による傷病届)
また、被害事故ではなく自損事故や、100%の加害事故による傷害は、第三者行為によるものではないので、通常通り健康保険を活用した保険診療が可能になります。
交通事故で使う労働災害補償保険
勤務中や通勤中の事故によって死傷した場合は、勤務先が加入している労災が適用になります。労災は治療費だけではなく休業補償も行われます。ただし、労災と加害者からの賠償金を重複して受け取る事はできず、どちらか一方を選ばなければいけません。
被害事故の場合は、加害者の対人賠償保険を選んだ方が、賠償額が高くなるケースが多いです。労災は加害者が無保険で賠償金の支払い能力が無い場合や、自損事故の場合に活用される傾向があります。
交通事故で使う政府保障事業制度
次のケースでは政府保障事業制度によって、国から損害賠償額に相当する給付金を受け取る事ができます。
- ひき逃げで事故の加害者が不明のとき
- 加害者が自賠責保険に加入していない、もしくは期限切れによって賠償能力がない場合
- 泥棒運転など、加害車両の保有者の責任が全く問えず、加害者の運転者に賠償能力がない場合
政府保障事業制度は、保険会社から自賠責保険の保険金の一部を国に納付されて運営しています。これによって、被害者が人身事故による損害賠償を受けられないリスクを緩和して被害者救済を図っています。
給付金の金額は自賠責保険の賠償額と同等で、政府保障事業制度の請求業務は自賠責保険を扱う保険会社が政府からの業務委託を受けて行っています。
(参考:加害者が保険に入っていないケース)
交通事故で使う生命保険・医療保険
加害者、被害者の立場を問わず、死傷した全ての方は、自分自身もしくは家族が加入している生命保険や医療保険からの補償を受けられます。生命保険や医療保険のほとんどは、交通事故による死傷も補償範囲と定めています。
生命保険や医療保険は損害賠償の算定の控除の対象にはならず、自動車保険から受け取る保険金とは別に全額請求できます。
(参考:加害者でも保険が使える)
交通事故で使う生活保護
交通事故によって、仕事ができないなど、生活ができない状況になった場合は、生活保護給付金を受け取れる場合があります。交通事故の場合、加害者の保険や自分が加入している任意保険の人身傷害によって、休業補償や逸失利益などの賠償補償を受けられます。
保険金で生活するための資金が確保できる場合は生活保護を受けられませんが、示談や裁判が長引いた場合に賠償金を受け取るまでの期間や、何かしらの事由によって、事故後に生活するための保険金を受け取れない場合は生活保護の給付対象になります。
生活費が苦しくなった場合は、市区町村の役場や治療を受けている病院のソーシャルワーカーなどに相談してみましょう。