交通事故を起こすと、法律に基づいて加害者側が責任を負うことになります。
交通事故と法律責任についてまとめました。

交通事故の責任

交通事故は次の3つの責任があります。

  • 民事上の責任(賠償責任)
  • 刑事上の責任(主に傷害事故)
  • 行政上の責任(違反点数の加点や免許停止・取り消し等)

ひとつの事故でも、民事責任しか問われない事もあれば、「民事・刑事・行政」の3つすべての責任が発生する場合があります。

民事責任は基本的に示談交渉を経て、賠償金や慰謝料によって解決しますが、示談交渉は民法に則って行われます。つまり、それぞれの責任において法律によって、罰則や賠償責任が決められます。

交通事故の法律

交通事故の法律は次のものがあります。

  • 民法709条以下  → 民事上の責任
  • 自動車損害賠償保障法 → 民事上の責任
  • 自動車運転死傷行為刑罰法 → 刑事上の責任
  • 道路交通法 → 行政上の責任、刑事上の責任

それぞれ詳しく説明します。

民法709条以下の不法行為とは

民法709条は次のように定められてます。

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」

つまり、交通事故によって、相手の権利や利益を侵害した場合に、加害者は損害賠償をしなければいけません。民法は人身事故と物損事故の双方に適用され、交通事故以外でも相手のものを壊したり、人を怪我させた際の慰謝料・賠償金請求でも適用されます。

民事上の責任は通常、示談によって決着しますが、示談でも裁判でも民法に則って賠償責任が協議されます。民法によって決定された示談書や、裁判の判決に従って賠償金の支払いを行わないと、法律によって財産や給与の差し押さえ等の強制執行が可能になります

自動車損害賠償保障法とは

自動車損害賠償保障法とは、自動車の運転によって人の生命または身体が害された場合の賠償を保護する法律です。

自賠責保険(強制保険)の加入が義務付けられているのも自動車損害賠償保障法によるもので、自賠責保険についての法律とも言えるでしょう。補償の対象になるのは人身事故のみで、物損事故についてはすべて民法になります。

民法は交通事故によって受けた損害の全額に適用されますが、自動車損害賠償保障法は自賠法施行令条、別表1、別表2に基づいて、次のとおり上限金が決められてます。

  • 傷害事故  最大120万円
  • 死亡事故  最大3,000万円
  • 後遺症障害 等級により最大3,000万円(常に介護を要する1級障害のみ4,000万円)
自動車運転死傷行為処罰法の罰則

自動車運転死傷行為処罰法には、「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」の規定があります。
飲酒運転や暴走行為など危険な運転行為をしている中で起こした事故は、「危険運転致死傷罪」が適用になります。それ以外の通常の交通事故は「過失運転致死傷罪」が適用されます。

また、殺意を持って人を車で轢き殺した場合は、「殺人罪」になります。
それぞれの罰則は以下のとおりです。

●過失運転致死傷罪
7年以下の懲役・禁固または100万円以内の罰金

●危険運転致死傷罪
人を負傷させた場合  15年以下の懲役・禁固
人を死亡させた場合  1年以上の有期懲役

●殺人罪
死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役

基本的に、過失運転致死傷罪の場合は執行猶予があるので、刑務所で服役する事はほとんどありません。
執行猶予期間を無事に経過できれば、刑事責任は果たした事になります。

道路交通法違反

道路交通法は、公道を自動車が走るための危険の防止、安全の確保、他の交通との円滑化を目的にした法律です。
交通事故を起こさなくても、取締により罰せられる事もあり、車のドライバーはとても関係の深い法律です。

交通事故を起こした時や事故が起こるまでの過程で、信号無視や飲酒運転などの道路交通法違反を犯していた場合は、当然、処罰の対象になります。

人身事故は起こした時点で安全運転義務違反として2点加点されます。これに上乗せして被害者の怪我の完治期間や後遺症、死亡など傷害の度合いによって、運転免許の違反点数が2点〜20点加点されます

さらにひき逃げをした場合は措置義務違反で35点加点されます。当然、その他道路交通法違反があった場合は、それぞれの違反点数も加点されます。

違反点数の加点・累積状況によって、免許停止や取消処分があり、違反の内容によって反則金の支払い義務が発生します。

示談が終わっていると、刑事責任が軽くなる事がある

交通事故の法律や責任は、民事、刑事、行政の3つのカテゴリーに分かれていて、それぞれ本来は別々に独立して罰せられます。

しかし、人身事故を起こした際に、民法による示談交渉がすでに終わっている中で裁判を行うと、刑事上の責任で加害者側が有利になる場合があります。