交通事故の過失割合は、保険会社の事故担当者や弁護士などの専門家が、過去の判例をもとに作られた認定基準を参考に協議されます。
判例基準は信号の色や、自動車と歩行者などそれぞれの立場ごとに、幅広い項目で過失割合の認定基準が用意されています。

ここでは過失認定の事例として、「住宅街でオートバイが歩行中の老人をはねた時」について解説します。

「オートバイ」対「歩行者」の過失割合の認定事例

ここで紹介する人身事故の状況は、以下のとおりです。

  • 住宅街の中央線がない狭い道路での出来事
  • オートバイは法定速度の30kmで走行中
  • 歩行者は横断歩道から少し離れた場所(横断禁止)で横断中
  • 歩行者の被害者は老人

オートバイは「前方不注意」などの過失がありますが、歩行者の老人も「横断禁止場所の横断」という事で過失があります。

判例では、横断禁止場所でのオートバイ対歩行者の事故は、「オートバイ7」対「歩行者3」になる過失割合の基準が用意されています。
しかし、今回の事故は「オートバイ9」対「歩行者1」の過失認定になりました。

過失割合の認定には修正要素がある

過失割合の認定基準は、基礎基準と修正要素があります。
今回の事例の場合は、狭く歩行者専用道路(歩道)が無い住宅街での事故で、被害者は老人です。
そのため、歩行者側の30%の過失から、次の要素で減算修正が行われました。

  • 住宅街  -5%
  • 被害者が老人 -5%
  • 運転手の脇見運転による過失 -10%

合計20%の減算修正があったため、「オートバイ9」対「歩行者1」の過失認定になりました。

横断歩道が無い道路であれば8対2が基準になる

今回の事例の事故では、横断歩行付近という事で、認定基準の基礎が「オートバイ7」対「歩行者3」の事故になりました。
横断歩道が近くにあれば、その付近でショートカットして渡ってしまおうとする方が多いですが、近くに横断歩道がある場合は、歩行者は横断歩道でわたるのがルールで、横断歩道付近は横断禁止場所にあたります。

もし、住宅街で近くに横断歩道が無い場所だった場合は、横断禁止場所にはあたらず、「オートバイ8」対「歩行者2」が過失割合の認定基準です。
今回のように住宅街や被害者が老人だった要素、運転者の脇見運転による減算が加わると、20%減算によって「オートバイ100」対「歩行者0」の事故になります。

なお、その他横断中の歩行者の事故の過失割合の認定基準は次のとおりです。

●信号のない横断歩道上を横断中

オートバイ100対歩行者0

●信号機がある横断歩道での事故での歩行者の過失割合

歩行者が青で横断通過、車が赤で横断歩道を通過   0%
歩行者が黄で横断通過、車が赤で横断歩道を通過   10%
歩行者が赤で横断通過、車が青で横断歩道を通過   70%

交通事故の認定基準は防御能力に欠けるものに有利

交通事故の車やオートバイと歩行者の事故の場合は、全体的に歩行者に有利な過失割合の認定基準があります。
さらに歩行者が防御能力に欠ける者だった場合は減算修正の対象になります。
防御能力に欠ける者は次のとおりです。

  • 子供(児童)
  • 高齢者
  • 障害者

主に防御能力が欠ける者が被害者だった場合の過失割合の修正は減算5%です。
さらに、事故を起こした場所が次の条件に当てはまるとさらに減算修正されます。

  • 公園の近く
  • 学校の近く
  • 障害施設の近く
  • 病院の近く

その他、防御能力の欠ける者が頻繁に出入りする施設の周辺は過失割合で歩行者側の減算対象になります。
場所や周辺環境を考慮して、車やオートバイの運転はより慎重に行う必要があります。