車のバック運転時は、直進に比べて死角が大きく、車両感覚も前へ進む場合と異なるためバック中の事故は多いです。

ここでは、「バック中に車の後ろで遊んでいた子供を轢いて怪我をさせた人身事故」と、「駐車場構内での車同士の接触事故」の過失割合の認定事例を紹介します。

バックした車が子供を轢いた時の過失割合の認定事例

ここで紹介する過失割合認定事例の事故の発生状況は次の通りです。

  • 事故発生現場は住宅街
  • 路上駐車していた車が出発する際に一度バックで車を下げる必要があった
  • 車がバックをする前に一度警笛を軽く鳴らして合図をした
  • 路上駐車している車の後ろで子供が遊んでいた
  • 子供は車の後部ガラスより低い位置にして死角になっていた(バックカメラ非装着車)
  • 子供は遊びに夢中で動き出した車に気付かず接触して怪我をした

「車」対「人」で、車がバックしている時の過失割合の認定基準は「車8」対「人2」です
しかし、実際の事故ではそこから修正要素が加わり、車に不利な過失割合になる事が多いです。

警笛を鳴らした事の立証で、過失割合が大きく変わる

ここで紹介している事故事例の判例は、「車9」対「人1」の過失認定が出ています
認定基準の8対2から、後方不注意、急発進、住宅街などの条件が加点修正の対象になります。

しかし、子供も道路上でなおかつ駐車している車のすぐ後ろで遊んでいた事の過失が1割取られる形でした。
防御能力が弱い子供が被害者なので、同様の事故でも裁判官の判断によっては、車100対人0の事故になる可能性もあります。

ここで紹介している事故事例のポイントは、運転手が車を動かす前に警笛を鳴らしていた事です。
周囲に警告を促して車を動かしたのであれば、車の過失が緩和され、「車75」対「人25」の過失割合になる可能性があります

しかし、被害者が子供で車対人の人身事故の状況を考えると、運転手の証言だけでは警笛を鳴らしていた事が立証できません。
目撃者がいて、「車は警笛を鳴らしていたのに子供は動こうとしなかった」など、車の加害者を擁護する証言があれば、車の過失が75%程度になる可能性があります。

警笛を鳴らした事実が立証できなければ、車9対人1もしくは100対0で被害者の無過失事故に認定されます。

駐車場内の接触事故の過失割合の認定事例

駐車場構内は複数の車が停車していて、商業施設や市街地のコインパーキングでは、随時複数の車が駐車場から入出庫しています。
駐車場構内は狭く、バックする車が多いため、事故多発ポイントになっています

ここでは、前向き駐車をしていた車が、出庫時にバックで出ようとした際に、通路を直進してきた車と接触した事故の過失割合を紹介します。

バック対直進の車同士の過失割合認定基準は7対3

バックをして駐車場から出ようとしていた車を「A車」、駐車場構内の通路を直進していた車を「B車」とします。
過失割合の認定基準は「A車 7」対「B車 3」です

前向き駐車からバックで出る場合は死角が多く、通路以外にも隣の車や柱などの障害物にも気を配らなければいけません。
しかし、あくまでも交通事故の過失割合の原則は直進車優先です。

通路を車が通過する可能性がある駐車場からバックで出庫しないといけない時は、通路の車の有無に注意を払い、直進車が来たら停車するか車を駐車区画に戻して道を譲るべきです。

B車が3割の過失を取られるのは、A車が前向き駐車からバックで車を出そうとしている事は認識しやすく、A車の死角が多い事情を踏まえて道を譲ったり、警笛を鳴らす配慮があったからです。

そのため、直進中という条件では高めの、3割の過失が認定基準です。
A車に次の行為があると、過失の加点修正の対象になります。

  • ハザードランプを出していない
  • 球切れや断線などの故障でバックランプが点灯していなかった
  • バックなのに徐行ではなく、急発進した
  • 駐車場ではなく、駐車禁止区域からの出庫

A車の過失の加点要素によって、8割〜9割の過失になる場合があります。
しかし、どれだけA車の過失が大きくても、B車が直進して車が動いている時の接触事故は、原則100対0のB車無過失事故にはなりません

B車は最低でも1割の過失責任になる可能性が高いです。