繁華街の周辺で深夜にお酒に酔いつぶれた人が道端で寝転がっている事を見た事はありませんか?
酔いつぶれた人が寝ている場所が歩道であれば、まだ良いのですが、車道に寝てしまうと車に轢かれる可能性が高いです。

人が横になって寝る事を横臥と呼びます。ここでは「横臥者と車の事故」の過失割合認定事例を紹介します。

道路横臥者の事故の過失割合認定事例

ここで紹介する事故の発生状況は次のとおりです。

  • 被害者Aは泥酔して道路上で寝ていた
  • 被害者Aは幹線道路上で横臥していた
  • 加害者Bは自家用車で幹線道路を法定速度で走行中
  • 事故発生日時は深夜
  • 加害者Bは幹線道路で人が寝ている事に直前になって気付いたが、ブレーキが間に合わず被害者Aを轢いてしまった

道路横臥者の被害事故は、お酒を飲む人が多い夜間〜深夜・早朝です。

時間帯的に暗く道路に寝ている人を車から気付く事が難しく、そのまま横臥者を轢いてしまう事故が多いです。

過失割合の認定は「被害者A 30」対「加害者B 70」

道路横臥者の被害事故での過失割合認定基準は「加害者 80」対「被害者 20」です

道路横臥者は車に轢かれるリスクが高いため、基準で2割の過失を問われます。
実際の事故では次の修正要素が加わります。

  • 夜間・・・被害者に20%加算
  • 幹線道路・・・被害者に10%加算
  • 加害者の前方不注意・・・加害者に20%加算

この結果、修正要素を差し引きして、今回の事故事例は「被害者A 30」対「加害者B 70」の過失認定になります

夜間の横臥者は車から気付きにくい特性がありますが、それでも注意していれば気付いて止まる事も可能です。
そのため、横臥者の被害事故はほとんどが、加害者の前方不注意によって20%加算されます。

幹線道路以外で日中などの条件であれば、100対0の事故になる場合もあります。
ただし、横臥者の被害事故は大半が夜間で、街頭の有無を問わず日没後で空が暗ければ、夜間による20%加点が適用され被害者の過失が発生します。

また、スピードが出て路面状況の配慮が欠けやすい幹線道路での事故が多いです。そのため横臥者の被害事故は、「被害者3」対「加害者7」になる事が最も多いです。

ドライブレコーダーの動画や、同じ時間帯に行った現場検証で、横臥者の早期発見による事故回避が困難と認められ、前方不注意がなければ、夜間、幹線道路の条件で5対5の事故になります。

視認性の高さが過失割合に影響を与える

道路横臥者の事故は、事故当時の視認性の高さによって過失割合が変わる場合があります。
夜間と昼間の過失割合の目安はありますが、夜間でも街灯があり明るい道路や、被害者が蛍光色の服を来ているなど視認性が高ければ、前方不注意の20%加算を取られます

昼間の事故でも、大雨だった場合やトンネル内の事故など視認性が悪い状況であれば、被害者の過失割合が加算される場合があります。

横臥者が相手の事故は刑事責任を問われない場合も

道路横臥者の事故は、無防備に寝ている人を車が轢いてしまうので、死亡事故や重度の後遺症が残る人身事故がほとんどです。
死亡事故を起こすと、本来であれば慰謝料などの賠償責任のほかに刑事責任を問われます。

しかし、横臥者が被害者の事故は、回避が困難な事故だと判断されれば、加害者側の刑事責任が問われない場合があります

死亡事故や重度の後遺症が残る重大事故は裁判に発展する事が多いですが、賠償金の精算が済めば、警察・検察から起訴される事も少なく、被害者の親族も横臥による死亡事故は加害者に実刑を求めない事が多いです。

死亡事故や後遺症の事故で刑事責任を問われるかは、事故ごとに厳正に検討されるので必ず刑事責任が発生しないとは言い切れません。

また、運転手の過失が少ない事故でも、任意保険の対人無制限に加入していなく、賠償金の全額をすぐに払えない場合は、被害者側が加害者に対して、せめて罪を償ってほしいと刑事責任を求める場合があります。