複数の車が絡んだ多重事故で最も多いのが玉突き事故です。
玉突き事故は、「信号待ちなどで停車している車の列に追突して、その衝撃で玉突きに発展する事故」と、「事故によって急停車したところに後続車両が追突する事故」の2種類があります。
玉突き事故の代表例を2つ紹介して、それぞれの過失割合の認定事例を見ていきましょう。
信号待ちで停車している車に追突して玉突き事故になった場合
ここで紹介する事例の事故発生時の状況は次のとおりです。
- A車は交差点で赤信号待ちの先頭で停車中
- B車はA車の後ろに赤信号待ちで停車中
- C車が停車しているB車の後方に追突
- B車は追突された衝撃でA車の後方に追突
A車、B車、C車3台の玉突き事故の過失割合認定基準を解説します。
停車している車に対しての玉突き事故は、追突した車に全ての過失がある
今回の事故の過失割合は、A車0対B車0対C車100です。
C車はB車の賠償はもちろん、A車の賠償も全額負担しないといけません。
仮にB車が停車時の車間距離が短く、ブレーキを踏んでいる強さが弱いなどの落ち度があっても、停車中であれば過失は問われません。
高速道路での多重玉突き事故による過失割合の認定基準基準
玉突き事故で多いのが、高速道路での事故です。
高速道路ではスピードが出ている中で、追突事故が起こると急停車する事になります。
事故が起こった時に後続車がブレーキをかけても間にあわず、後ろから追突してしまう多重事故の場合、過失割合はどうなるのでしょうか?
ここで紹介する事例の事故発生状況は次のとおりです。
- A車が高速道路を法定速度で走行中に、カーブ直前や飛来物など正当な理由でブレーキをかけた
- B車がA車に対して後方から追突した
- B車の後ろを走っていたC車もブレーキが間に合わず追突した
信号待ちでの事故と違う点は、走行していた車、もしくは事故発生直後の車に対しての追突で、玉突き事故になっている事です。
A車、B車、C車の過失割合について解説します。
追突した車が賠償責任を負う
今回の事故では、まず先頭を走っていて後方から追突されたA車の過失はありません。
ただし、正当な理由がない急ブレーキがあった場合は過失が発生します。
B車は、まずC車に追突される前にA車に追突しているので、A車に対しての過失が発生します。
C車は最後尾から追突しているので、基本的にはB車に対して100%の過失になります。
玉突き事故は基本的に後ろから追突した車に全ての過失があります。
ここで焦点になるのが、C車がA車に対しての過失が発生するかです。
C車がB車に対して追突した衝撃で、A車の破損や搭乗者の傷害が悪化した場合は、C車はA車に対しての過失も発生します。
たとえば、B車がA車に追突した時は軽い接触でバンパーが破損した程度だったが、その後C車がB車に追突した衝撃で、バックドアやフェンダー、エンドパネルが損傷した場合、A車のバンパーの修理代はB車が負担しますが、被害が広がった分のA車の修理代は全てC車が賠償責任を負います。
A車が正当な理由がない急ブレーキをしていた場合
先頭を走っていたA車が正当な理由がない急ブレーキをかけて追突事故の原因を作った場合、A車に20%〜30%の過失が発生します。
(参考:過失割合事例5)
玉突き事故の場合、先頭のA車と2台目を走っていたB車の間の過失割合の認定では、A車はB車に対して過失責任が発生します。
しかし、先頭のA車と3台目のC車の過失割合では、A車の過失は発生しません。
もし、A車とB車の追突事故で、B車がA車に対して安全な車間距離を取っていない事が原因で追突した場合は、B車とC車の事故においてB車に正当な理由がない急ブレーキが認められる場合があります。
つまり、A車の急ブレーキと、B車の不適切な車間距離で玉突き事故が起こった場合の過失割合は、次のようになります。
●A車30 対 B車70
・・・高速道路で前方に障害物がない状況での正当な理由がない急ブレーキは悪質なのでA車に3割の過失。
●B車20 対 C車80
・・・C車はA車の急ブレーキを事故発生前に確認できるので、C車の過失が90%〜100%になる場合もあります。
間を走っている車の玉突き事故の責任
玉突き事故の過失割合は、今回の3台の事故事例では真ん中のB車のように、間に挟まれる車の過失が焦点になる事が多いです。
間を走っている車の過失責任は、速度や車間距離などによって状況が変化します。
過去の判例を見ると、全体的には間を走っていた車の玉突き事故の責任は問われない事が多く、最後尾の車の全過失になる事が多いです。
しかし、一部の判例では車の運転は前方だけではなく、後続車両の状況も配慮して追突を避ける適切な対処をするべきだったとして、間を走る車の過失が認められたケースもあります。
後続車両の衝突を避けるための適切な対処は、次のものがあります。
・後続車両の車間距離が詰まっているのであれば、前の車との車間距離を空けて、急ブレーキを踏まないようにする
・渋滞の最後尾などで速度を落とす時は、ハザードランプの点灯やポンピングブレーキを活用して、後続車に速度を落とす事を知らせる
・後続車が追い越しをしようとするのであれば、無駄なブロックはせず、道を譲って先に行かせる