自動車を運転して、死亡・傷害などの人身事故を起こすと、刑事上の責任と行政上の責任を問われます。
交通事故が原因で刑務所に入る事例もありますので、車の運転には注意が必要です。

交通事故の責任

交通事故の責任は次の3つがあります。

  • 民事上の責任(賠償責任)
  • 刑事上の責任(主に傷害事故)
  • 行政上の責任(違反点数の加点や免許停止・取り消し等)

民事上の責任は主に、人身や物損に対する金銭的賠償を行います。刑事上の責任と行政上の責任は法律によって罰せられます。
(参考:交通事故で問われる法律責任、交通事故の法律と責任)

ここでは、主に刑事上の責任と行政上の責任について紹介します。

刑事上の責任とは

自動車を運転して死亡や傷害などの人身事故を起こすと、「自動車運転死傷行為処罰法の過失運転致死傷座時」または「危険運転致死傷罪」によって刑事責任が問われます。
それぞれ検察の起訴によって、略式起訴、もしくは正式に裁判にかけられます。

また、悪意を持って人を車で轢き殺した場合は殺人罪に問われます。
ほとんどの人身事故は略式起訴で済みます。

人身事故の罰則一覧

●過失運転致死傷罪
 7年以下の懲役・禁固または100万円以内の罰金

●危険運転致死傷罪
 人を負傷させた場合  15年以下の懲役・禁固
 人を死亡させた場合  1年以上の有期懲役

●殺人罪
 死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役

なお略式起訴の場合の判決は、100万円以内の罰金・科料の上限が定められてます。被害者や検察側が略式起訴の判決に不服がある場合は、略式起訴の結果が出てから14日以内に正式裁判の申立を起こせます。

物損事故の場合でも、刑事責任を問われる場合がある

基本的に物損のみの事故は、刑事上の過失の責任を問われる事はありません。

しかし、民家や商業施設などの建物に車が突っ込んで壊した場合は、けが人がいなくても、道路交通法の建造物損壊罪によって刑事責任を問われる場合があります。

建造物損壊罪は、「建造物又は艦船を損壊させた者に5年以下の懲役に処する」と定めています。建造物の定義は、主に基礎や屋根瓦がある建物で、移動可能な倉庫や駐車している車などは認められません。

行政上の責任

交通事故の内容によっては、交通違反と同じように違反点数の加点と罰金が科せられます。
違反点数やそれまでの累積点数と加点の状況によっては、免許停止や免許取消処分を受けます。

行政処分による交通違反の反則切符制度

交通違反が認められると、事故現場もしくは、事故で負傷して救急搬送された場合などは後日最寄りの交番・警察署に出頭して反則切符を切られます。

7日以内に銀行の窓口など指定の場所に反則切符を持っていき罰金を納付すると、刑事訴追される事はなく、免許の違反点数と罰金の支払いを持って行政上の責任を果たせます。

多発する交通事故や交通違反を迅速・簡易に処理するための制度で、「交通反則通告制度」と呼びます。

ただし次の違反行為があった時は、交通反則通告制度(違反切符による罰則)ではなく、刑事責任を問われて裁判になります。

・速度超過30km以上(高速道路は40km以上)
・無免許運転
・大型免許等無資格運転
・酒気帯び運転、飲酒運転
・過労運転
・反則行為をして人身事故を起こした場合

交通反則通告制度(反則切符)に応じないと、刑事責任を問われる

交通事故における行政責任は、交通反則通告制度による反則切符を期日内に罰金を支払い、違反点数の加点状況によっては講習、免許停止、免許取消処分を受ける事で終わります。
しかし、違反切符を切られても応じないと警察本部長から「通告書」が届きます。

通告書が郵送されてから10日経過しても反則金の納付に応じない場合は、裁判(略式・正式)にかけられて刑事責任が問われます。
裁判で罰金を命じられると前科が付いてしまうので注意しましょう。

さらに裁判から罰金の支払い命令が出たにも関わらず、罰金を払わないと労役所で罰金額に達するまで強制労働を強いられます。労役所の日当は事件ごとに裁判所が決めますが、一般的な相場は一日5千円ほどです。

刑事責任や強制労働に発展する前に、違反切符を切られたら速やかに納付するようにしましょう。