交通事故を起こした際、現場で警察が来るでの間に、当事者同士で示談交渉を進めてしまうことがあります。
こうした事故当事者同士の直接の示談交渉が、その後、大きなトラブルの原因になりやすいです。

警察が来るまでは示談交渉は一切行わないようにし、先方から示談を持ちかけられても応じないようにしましょう。

示談とは?

そもそも示談とは、裁判所を通さずに、当事者もしくは代理人(交通事故の場合は主に保険会社)が、直接賠償に関する合意を成立させる事です
交通事故が原因でも、車の修理代や治療費や慰謝料などのお金の話は、警察は介入しません。

本来であれば、裁判所によって賠償判決をもらうのですが、交通事故でわざわざ裁判を起こしていると、お金も時間も必要になり、お互いに不利益が発生します。

そのため、交通事故のほとんどは示談によって解決しています

示談は原則、保険会社に全て任せる

示談交渉は法律や判例の知識がない素人が、自ら行うのは危険です。
話がこじれてトラブルに発展したり、法外に高い賠償責任を負ってしまうリスクがあります。

自動車保険(任意保険)は、全ての保険会社で示談交渉の代行してくれます
自動車事故を専門に扱う保険会社に任せた方が、交渉を有利な方向に進めてくれますし、手間やストレスもかかりません。

警察が到着する前の示談は絶対にしない

警察が到着するまでの示談がダメな理由としては、次のものがあります。

  • お互いに冷静さを欠いでいる
  • 素人同士の示談結果は、間違った結論が多い
  • お互いに納得した示談結果でも保険会社が受け入れてくれない
  • 直接示談の話をした事によって、その後の交渉が難航する
  • 後から状況が変わる場合がある

実際にあったトラブル事例を交えて詳しく説明します。

事故直後は冷静さを欠いている方が多い

事故を起こした直後は、加害者側も被害者側も冷静さを欠いています。
そうした中で示談交渉を行うと、正しい事と誤っている事の区別が分からず、本心とは違う言葉を口にしてしまう場合があります。

よくあるトラブル事例を紹介します。

飛び出し事故にて

当事者Aさん 「こっちが優先道路だから、あなたが100%悪い。こっちは過失割合ゼロでいいですよね?」
当事者Bさん 「申し訳ありませんでした。私が全て悪かったです」

追突事故にて

被害者Cさん 「これから大事な商談なのに、事故のせいでキャンセルしないといけない。その分の売上損失も払ってくださいよ」
加害者Dさん 「はい。分かりました」

出会い頭の事故にて

当事者Eさん 「あんたが悪い」
当事者Fさん 「いいえ、こちらは悪くありません」
当事者Eさん 「なんだよ、その態度。反省していないなら、徹底的に戦うからな」
当事者Fさん 「なんなんですか?その言い方。絶対にこちらの過失は認めませんからね」

事故が起こった直後は、被害者が請求する事を、冷静に判断できずに、全て口約束で受けいれてしまう方が多いです。しかし、過失割合については、過去の判例を元に決められて、交通事故によって賠償される金額も相場や範囲があります

警察が来る前に示談交渉して口約束をすると、その後保険会社同士が示談交渉で話をまとめても、「あの時全て賠償するって約束されたので納得がいかない」と示談成立が難航してしまいます。

また、直接示談交渉をした事で相手に敵対心を持たれると、お互いに意地になって、示談の着地点を見つけるのに苦労する事もあります。

保険会社は要求通り全額賠償してくれる訳ではない

対人・対物などの賠償保険を無制限で加入している場合、保険会社が全て、相手からの請求分を払ってくれると思っている方がいます。しかし、自動車保険の賠償金は、相場や過去の判例に基づいた中で、適正価格のみ支払われます

たとえば、新車を納車した直後の方の車にぶつけてしまった場合、「事故修復車になるのは納得いかないから、新車を買って弁償してくれ」、と請求される場合があります。
しかし、自動車保険の対物賠償で支払われるのは、新車であっても修理費用のみです。

保険会社が全て払ってくれると思って、新車で賠償する事を約束すると、請求額と保険から出る金額で100万円以上の差額が出る事もあります。中古車の場合も、常にその車種の中古車としての時価を参考に支払われる上限金があります。

事故直後に当事者同士で示談交渉をまとめても、保険会社が認めてくれない場合があるので注意しましょう。

お金や過失割合の話をされたら、保険会社に全て任せると伝える

事故直後に、事故の相手から過失割合や賠償金の話をされた場合は、どのような要求であっても次のように答えましょう。

「事故についての事は保険会社に全て任せようと思っております。事故の知識がないので今ここでお約束はできません」

このように、賠償や過失割合の話は保険会社が窓口である事を伝え、その場での示談に応じない意思を明確に伝えましょう。

事故による本当の損失はその場では分からない

事故による被害は、警察の現場検証が終わってから判明する事が多いです。
事故処理が終わってから損失が拡大する事例を紹介します。

・事故当時は興奮して痛みを感じなかったが、事故処理が終わって落ち着いたり、一晩寝て起きたら身体が痛くなった。

・追突されて車が破損した際に見た目はドアが凹んだだけで、交換すれば直ると思っていたが、修理工場に出したらフレームやパネルが変形していて大規模な修復修理が必要だった

・軽く怪我をしたけど、先方から人身事故にしたくないから、慰謝料を多めに払うから物損扱いにしてくれと言われて応じた。しかしその後完治せずに後遺症が残ってしまった

このように身体の痛みや症状は事故当時には感じられない事もありますし、物損被害は実際に板金工場やディーラーなどプロに車を見てもらわないと本当の被害損失が分かりません。

怪我がない。車の損傷が経度だと思い込んで、その場で示談交渉すると、後日損失が大きかった事が分かった時にトラブルになります。

交渉や謝罪は慎重に行う

明らかに過失が大きい場合でも、交通事故現場では謝りすぎない事が望ましいです。事故当時は自分の過失が大きいと思っていても、実は先方の過失の方が大きい判例の事故だった可能性もあります。

事故当時に必要以上にしつこく謝罪をしていると、自分が過失が大きいと認めた証拠になり示談交渉が不利になる場合があります

また、当事者同時で直接示談した内容も、証拠として残ってしまうと過失が少ない事故でも、自分に不利な結果になる場合があります。特にメモで覚書を残すなど、明確な証拠を残さないようにしましょう。

まとめ

事故現場では、警察が到着する前に当事者同時で直接示談交渉するのはダメです。
事故現場では、損失や過失割合が明確になっていない事や、保険会社が賠償金を払う場合は、当事者同士の示談の内容を認めてもらえない事が多いからです。

示談交渉は全て後日保険会社に任せて、行き過ぎた謝罪など過失割合を認める行為も控えるようにしましょう。