交通事故を起こして、相手を怪我や死亡、後遺症傷害させるなどの人身事故や、車への接触など物損事故による損害を与えると、治療費、慰謝料、修理代などの賠償責任を負います。

交通事故は、交通違反による違反点数の加点や罰金(行政上の責任)や、過失運転致死傷罪など(刑事上の責任)は刑法や道路交通法によって罰せられます。
しかし、賠償問題などお金の話に関しては、民法に基づいた中で示談交渉によって行われます。

ここでは交通事故による民事上の責任(損害賠償責任)について紹介します。

民事上の損害賠償とは

民事上の損害賠償の範囲はつぎのようになります。

人身事故の損害 物損事故の損害
傷害による損害 死亡による損害
狭義の傷害による損害 財産的損害 営業保障
財産的損害 死亡による逸失利益 代車料
付添看護費 葬儀費用 修理費(修理不能な場合は物の価格)
雑費 精神的損害 ※物損の場合は精神的損害は認められなし
通院交通費 慰謝料
休業損害
精神的損害
入院治療に対する慰謝料
後遺障害による損害
財産的損害
後遺障害による逸失利益
後遺障害に対する慰謝料

軽い事故でも損害範囲は多岐に渡る

交通事故による損害は、軽い物でも治療費や修理費用だけ払えばいいというものではありません。捻挫やムチウチなどの軽傷を負わせただけでも、病院までのタクシー代や慰謝料、休業補償について、加害者は賠償責任を負います。

車のバンパーを軽く凹ませただけの物損事故でも、修理期間のレンタカー費用や営業保障をする必要があります。

そのため、軽い事故で一見、賠償金は数万円程度に見える場合でも、最終的には数十万円〜数百万円の損害額に膨らむ場合もあります必ず自賠責保険のほかに、任意保険にも加入して、対人・対物の賠償補償は無制限で加入しておきましょう

交通事故の損害賠償は2つの法律が適用になる

交通事故の損害賠償は、次の2つの法律が適用されます。

  • 自賠法
  • 民法709条

人身事故については主に自賠法、不法行為責任(主に物損事故)は主に民法709条によって賠償請求が行われてます。

不法行為責任と民法の欠点

不法行為責任とは、民法709条によって次のように定められてます。

「故意または過失により他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、損害を賠償する責任がある」

この民法で盲点になっているのが、被害者側が加害者側の故意または過失を証明する事です。つまり、事故によって損害賠償するための証拠を、被害者側が用意する必要があります。

また、加害者または使用者以外の者に責任が追求できないと定められてます。(民法705条)
こうした加害者の過失を被害者が立証する事を「不法行為責任」と呼びます。

民法は明治29年に車社会が定着していなかった時代に作られた法律です。そのため、交通事故の被害者に不利な要素が高く、被害者の保護が難しい欠点があります。

自賠法は交通事故の被害者救済のために作られた法律

自賠法の正式名称は「自動車損害賠償保障法」です。
民法709条では交通事故の被害者の立場が弱い事から、昭和30年に制定されました。

自賠法の特徴は「無過失責任主義」と「運行供養者責任」があります。

●無過失責任主義とは

民法では被害者が加害者の故意又は過失を証明しなければいけませんでしたが、自賠法では加害者側が無過失を立証しないといけません。

→交通事故を無過失にするための違い

民法709条 被害者が加害者の過失を立証できなければ無過失
自賠法 加害者が自らの無過失を証明する

加害者が無過失を証明する事は不可能に近く、被害者が賠償請求をしやすいのが、自賠法の最大の特徴です。

●運行供養者責任とは

運行供養者責任とは、直接の加害者(運転者)だけではなく、その車を支配しているものにも責任を追求できる制度です。
たとえば、居眠り運転による人身事故が起きた場合に、雇用主の会社が過酷で睡眠時間を確保していない労働環境を用意していた場合は、被害者は勤務先に対しても賠償請求が可能です。

ほかにも飲酒運転の場合は、勤務先がアルコールチェックなどの管理をしていない事などを理由に賠償請求できます。
運行供養者責任によって、被害者は損害賠償を請求できる相手が広がり、損害賠償金を取りやすくなりました。

●自賠法が適用されるのは人身事故だけ

自賠法が適用されるのは、障害・死亡などの人身事故の限定され、物損事故の場合は民法709条の不法行為責任が適用されます。
物損事故の場合は、警察を呼ばずに示談を済ますなど実況見分もせず証拠が残っていないと、加害者が「こっちは悪くない」と開き直ると賠償請求が困難になる場合もあります。

不法行為責任による請求でも、事故現場で速やかに警察を呼び実況見分をする事や、自動車保険会社に示談交渉をする事で物損事故でも一切賠償請求ができないトラブルはほとんどありません。

しかし、人身事故に比べて物損事故は示談交渉のトラブルが起こりやすいので、現場で証拠写真を残したり、目撃者の証言を確保するなど、事故を起こしたら自分自身で証拠を確保して不利な要素を作らない努力をしましょう。