交通事故の被害で傷害を負った場合、治療を続けても完治しない、もしくは完治まで長い年月を要する場合があります。

交通事故の傷害による損害賠償は、完治もしくは症状固定までの期間で算定されます。
ここでは、交通事故の症状固定について解説します。

症状固定とは

交通事故の症状固定とは、次のように定められています。

「医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」

つまり、治療を続けてもそれ以上の症状の改善が見込めない状態を、症状固定といいます
症状固定の主な事例は次のようなものです。

  • 骨折をして、骨はくっついたが関節障害が残ってしまった
  • 四肢や指などの身体の一部を切断で失ってしまい、切断手術やその後の外科的治療が終了した
  • むち打ち症の症状が長期化した

症状固定は主に後遺障害の認定

交通事故で負った傷害が完治せず症状固定になった場合は、主に後遺障害の認定を受けて、後遺障害に対する賠償金を請求することになります。

交通事故の損害賠償は、傷害(治療期間)と後遺障害(症状固定後の補償)で、それぞれ独立して算定されます。

症状固定の流れ

症状固定は、原則医師に後遺障害ありの診断書を発行してもらい、自賠責保険会社に提出をして審査を受けることで障害等級が付与されます。

障害等級は1級〜14等級あり、等級に応じて自賠責保険から認められる賠償額の上限や、逸失利益の算定基準が決まります。

ただし、むち打ち症の長期化など軽症や症状の重さが立証しにくい状況だと、医師の診断書があっても、障害等級が認定されない場合もあります。

後遺障害等級ごとの労働能力喪失率一覧

1級〜3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

労働能力喪失率はあくまでも目安で、実際に後遺障害を負った事で減少した収入の実績や、職種と障害部位の関係性などによって個別に判断されます。

労働能力喪失率によって、逸失利益が算定されます。
(参考:逸失利益の算定)

症状固定時期が与える損害賠償金への影響

交通事故で後遺障害を伴う傷害事故の被害にあった場合は次のように損害賠償金が算定されます。

●症状固定まで

症状固定までは、後遺障害がない通常の傷害事故と同様に賠償金を算定します。
症状固定までの損害賠償の請求範囲は次のとおりです。

・治療費
・交通費、入院雑費など
・付き添い看護費
・休業損害
・傷害慰謝料

●症状固定後(後遺障害の認定後)

症状固定までの損害賠償は、実際に発生した費用や損害状況によって算定されるのに対して、症状固定後は症状固定時点で、将来の損失も含めた賠償金の総額が算定されます。

症状固定後の損害賠償の請求範囲は次の通りです。

・逸失利益
・障害慰謝料
・将来の介護費

症状固定日の決まり方

傷害による賠償請求と後遺障害による賠償請求の双方をする場合は、症状固定日を境に賠償額の算定が傷害から後遺障害に切り替わります。
症状固定日は主に医師の後遺障害診断書に記載された「症状固定日」が基準になります。

ただし、診断書の症状固定日は絶対ではなく、訴訟になった場合は裁判所が個別に事故当時の容態やその後の経過の状況と医師の診断書の症状固定日を総合的に見て決められます。

原則、医師の診断書の固定日と違う症状固定日を希望する場合は、症状の経過や通院などの治療履歴などで立証しなければいけません。

症状固定は早い時期と遅い時期のどちらが有利

症状固定時期が早いと、治療費や傷害慰謝料などの症状固定までの賠償金は少なくなりますが、逸失利益など症状固定後の損害賠償額が増えます。症状固定時期が遅いと、症状固定までの賠償額が減って、症状固定後の賠償額が増えます。

つまり、症状固定時期と賠償金の関係は、一概に早い方と遅い方でどちらが有利といった明確な基準はありません。認定される障害等級や逸失利益の算定期間によって個別に状況は変わってきます。

どちらにしても、大きな賠償額の差は発生しないので、損害賠償のことを考えて医師に後遺障害診断書を書いてもらう時期を調整するのではなく、医師の診断のもと、適切な時期に後遺障害診断書を書いてもらうようにしましょう。