人身事故の被害で入院した場合は、入院費、治療費、慰謝料、休業補償のほかに、「治療費の雑費」も自賠責保険から補償されます。
ここでは、自賠責保険の治療費の雑費について詳しく解説します。
自賠責保険の治療費の雑費の範囲
自賠責保険の治療費の雑費として認められるのは、主に入院のみです。
通院や在宅療養でも認められる場合がありますが、軽傷の傷害程度ではほとんど認められません。
通院の場合は原則雑費は認められませんが、交通費(入院、退院時も交通費は支給されます)は認められます。
(参考:自賠責保険の交通費)
入院中の雑費は「必要かつ妥当な実費」と定められていて、主に次のものが該当します。
- タオル、パジャマ、洗面具などの生活用品
- テレビカードや新聞、雑誌などの文化費用
- 電話代、切手代などの通信費
- 医師の指示によって購入した栄養補助食品など
- 家族の通院交通費
見舞い客の接待費用(被害者本人のための費用ではなく間接的な費用)や、炊飯道具やポータブルDVD、ゲーム機など、治療後も使用価値が残るような物の購入費用は、自賠責保険の規則では雑費として認められません。
自賠責保険の治療費の雑費は定額制
入院中の諸雑費は、数百円単位の物が多く、テレビカードや病院のタオルレンタルサービスなど、その都度領収書を発行するのが困難な物もあります。
また、入院期間が長い患者もいる事を考慮されて、治療費の雑費は自賠責保険の場合、1日あたり1,100円の定額制が導入されています。購入した物の領収書の提出は原則不要で、入院日数に応じて定額で雑費費用が支給されます。
仮に30日入院した場合は、1,100円×30日で33,000円が治療費の雑費の賠償額になります。
また、自賠責保険の治療費の雑費は1日1,100円ですが、任意保険基準や弁護士会基準で損害賠償が認められた場合は、治療費の雑費が1日あたり1,400円〜1,600円で計算されます。
(参考:積極損害はどこまで認められるか)
治療費の雑費は実質用途自由
治療費の雑費は紹介している通り、必要かつ妥当な実費として認められる用途と、認められない用途があります。
しかし、実際には領収書の提出不要で、請求した治療費の雑費の用途までは原則確認されません。そのため、治療費の雑費は実質用途自由になっています。
医師の指示ではない通常の飲料水や、治療後も財産として残る物など使用を禁止されている物に使ったり、節約して現金をそのまま手元に残しても大きな問題にはなりません。
ただし、次項で紹介しているように、1日1,100円の定額払いの上限を超える請求をする場合は、1,100円の定額実費の用途を問われる場合があります。
雑費費用が1日1,100円を超えた場合、必要かつ妥当な実費として認められれば請求可能
入院中の雑費費用が継続して1日1,100円をオーバーする場合は、必要性を立証して妥当な実費として認められれば、1,100円の定額払いを超えた分の費用も賠償請求できます。
たとえば、次の場合は1日1,100円を超える雑費が認められる可能性が高いです。
- 医師の指示によって1つ200円のヨーグルトを朝昼晩の1日3回分毎日購入している
- 病院のタオルとパジャマのレンタル費用が1日500円
- 新聞を朝刊130円で毎日売店もしくは新聞用の自販機で購入している
- 冷蔵庫を使用するのに1日200円分のテレビカードを消費している
毎日必ずかかる定額費用のほかに、家族の通院交通費や文化費、通信費の妥当性を立証して認められれば追加で請求できます。
テレビ視聴のためのテレビカード購入(1,000円分)や雑誌の購入費用など、1日に限って1,100円を超えて、なおかつ購入した物が翌日以降も使用できる場合は、妥当性の立証が困難です。
治療費の雑費の定額制は、入院期間を総合的に見て1日平均の金額として支給しています。1日だけ突発的に定額の上限金を超えても賠償請求できない可能性が高いです。
治療費の雑費の妥当性を立証するためには、領収書の提出を求められる場合もあります。原則は領収書の提出不要で定額払いで請求できますが、念の為雑費として購入した物のレシートは保管しておくとよいでしょう。