交通事故の被害で負傷した場合は、加害者から治療費はもちろん、慰謝料の賠償請求もできます。
ここでは交通事故で治療院に通った場合の、慰謝料についてまとめました。
交通事故の治療院と慰謝料
交通事故の慰謝料の算定方式は次の3つがあります。
・自賠責保険基準
・任意保険基準
・弁護士会基準
(参考:慰謝料はどのように算定するか)
交通事故で治療院へ通院をする場合は、主に後遺症なしの傷害によるものが多いです。
それぞれの基準で、慰謝料の算定方法は次のようになります。
●自賠責保険基準
日額4,200円
事故発生から完治までの日数か、治療に要した日数×2の短い方が慰謝料算出のための日数となる
●任意保険基準
保険自由化によって、各保険会社が独自に設定。
全体的に自賠責保険基準と弁護士会の中間、もしくは自賠責保険基準寄り(中間よりも低い)の金額になります。
●弁護士会基準
入院の期間と通院の期間によって、月単位で基準額の一覧表が用意されています。
参考URL:http://kiso-hayashi.sakura.ne.jp/jiko-page.0904-3.html
通常の傷害とムチウチ症状で他覚症状がない場合で基準額が異なります。全体的に弁護士会基準は、自賠責保険や任意保険基準よりも慰謝料が高くなります。
自賠責保険基準と弁護士会基準の慰謝料算定例比較
交通事故で整骨院や接骨院などの治療院に通う場合の多くは、入院を伴わない傷害です。
ここでは入院期間なしの場合の、具体的な慰謝料算定事例を見ながら、自賠責保険基準と弁護士会基準の慰謝料の違いを見てみましょう。
入院なし 治療期間30日 治療日数16日の場合
・自賠責保険基準:治療期間が治療日数の50%を超えているため、治療期間30日 × 4,200円の計算で12万6千円になります。
・弁護士会基準:入院なし、治療期間1ヶ月の場合、ムチウチ症で他覚症状が無い場合の別表2の基準例で19万円です。ムチウチではなく別表1の基準額が適用されれば28万円になります。
入院なし 治療期間60日 治療日数20日の場合
・自賠責保険基準:治療日数が治療期間の50%未満のため、60日ではなく、治療日数20日×2で算定されます。その結果、治療日数40日 × 4,200円の計算で16万8千円になります。
・弁護士会基準:入院なし、治療期間2ヶ月の場合、ムチウチ症で他覚症状が無い場合の別表2の基準例で36万円です。ムチウチではなく別表1の基準額が適用されれば52万円になります。
弁護士費用特約がなければ、自賠責保険基準が適用される事が多い
傷害慰謝料の算定は、治療院に通うムチウチなどの入院を伴わない傷害の場合は、弁護士を立てない限り自賠責保険基準が適用になる事がほとんどです。
弁護士に依頼しても弁護士会基準が認められるとは限らず、示談の場合は中間の任意保険基準で決着する事も多いです。
1〜2ヶ月程度の入院を伴わず、後遺症なしの通院の場合は、弁護士費用を自己負担して任意保険基準や、弁護士会基準が適用されても、弁護士への報酬費用が発生するので手元に残るお金に大差がありません。
任意保険に弁護士費用特約を付けていなければ、自賠責保険基準が適用される可能性が非常に高いです。
治療院の治療日数計算
自賠責保険基準で慰謝料を算定するときは、治療期間か治療日数×2の少ない方で計算されます。
整形外科などの医療機関の入院・通院は治療日数×2で計算されますが、整骨院・接骨院・針灸院などの治療院の場合は条件に応じて、次のようになります。
・柔道整復師の国家資格を持っている方に施術してもらう場合
:医療期間と同様に、治療日数×2日で計算されます。
・鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師など国家資格保有者による施術や、柔道整復師の院長の診察を受けてその治療院のスタッフに施術される場合
:治療日数×1日で計算されます。
このように、治療院の多くは、治療日数×1日の計算で医療機関よりも慰謝料の算定が減額されます。慰謝料を多くもらうには、柔道整復師に直接施術してもらえる整骨院などを利用するとよいでしょう。
まずは、治療を受ける前に電話や受付窓口で、交通事故治療を受けたい旨と柔道整復師の施術希望を伝えて相談してみるとよいでしょう。
治療院の通院期間が長くなったり、通院頻度が多すぎると保険打ち切りになる場合も
治療院を利用する場合、自賠責保険基準によって慰謝料が算定される事が多いです。自賠責保険基準は治療日数が、慰謝料に大きな影響を与えるので、治療院への通院を繰り返した方が有利になります。
しかし、加害者の保険会社もなるべく支払う賠償金額を少なくしようと考えています。治療院の通院が長引いたり、週に3回以上の頻度で治療院に通うと、保険打ち切りを通告される場合があるので注意しましょう。
そもそも、慰謝料目的で通院するのは規則違反なので、身体の容態を見ながら、医師などと相談して適切な治療を受けるようにしましょう。