交通事故の解決は、一般的にまずは示談での解決を目指しますが、示談は双方の合意が必要です。
示談による解決が難しい場合は、調停を考えることになります。

調停による解決とは?

調停とは、訴訟のように原告・被告が法定で争うのではなく、裁判所で調停委員が立ち会って、意見や助言を聞きながら和解を目指す解決法です。費用は訴訟に比べて安く、時間的負担と精神的負担も少ないです。

ただし、調停委員の意見や助言は強制力がなく、あくまでも示談と同様に最終的にはお互いの同意が求められます。調停でも同意に至らない場合は不停(調停不成立)となり、訴訟(裁判)に進むほか方法がなくなります

調停で合意をすると、調停調書を作成します。調停調書は裁判の判決と同じ効力があり、調書の内容に違反(賠償金の未払など)があると、強制執行も可能になります

調停が活用される主なケース

調停は次の場合に活用される事が多いです。

  • 示談交渉が決裂したとき
  • 示談交渉が難航して、時効が迫っているとき
  • 相手が保険会社や弁護士などのプロで、本人が知識不足のとき
  • お互いに感情的になっているとき
  • 相手が無保険など資力がなく、債権の確保をしっかりしておきたいとき

調停は、費用が安く訴訟に比べても手軽にできます。示談が難しいと感じた場合や、示談によって提示された条件の正当性に不安を感じる場合は、調停の利用を検討してみましょう。

調停委員とは

調停委員の正式名称は「民事調停委員」といいます。
調停委員は次のいずれかに該当する方で、人格識見の高い40歳以上70歳未満で、最高裁判所が任命した者です。

  • 弁護士となる資格を有するもの
  • 民事もしくは家事紛争の解決に有用な専門知識や経験を有するもの
  • 社会生活の上で豊富な知識経験を有するもの

調停委員は調停申立人と、その相手方である加害者・被害者双方の言い分を交互に聞きながら、平等な目線で妥当な解決点を見つけ出します。
調停は訴訟とは異なり、非公開で裁判官1名と調停委員2名が担当します。

調停申立の手続き

調停は加害者側・被害者側の双方が申立をできます。被害者側が加害者側の賠償金を増額を求めて、調停申立人になる事が多いです。

調停を申し立てる裁判所は、相手方の住所の管轄する簡易裁判所、あるいは両者の話し合いで決めた地方裁判所、または簡易裁判所です。人身事故の場合は、損害を請求する人(被害者)の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てる事もできます。

調停をする手続きは、調停申立書もしくは口頭で事故の損害や希望賠償金を申し立てます。

調停申立書の記載項目

調停申立書は、裁判書のホームページから書式と記載例をダウンロードできます。
(http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_minzityoutei/syosiki_02_12/index.html)

調停申立書の記載項目と、添付書類には次のものがあります。

記載項目 添付書類
・申立人の情報と捺印
・相手方の情報
・申立ての趣旨(具体的な金額の要求もしくは相当額の要求)
・事故の発生日時、発生場所
・加害車両運転者の氏名と相手方との関係
・被害者の情報
・損害の程度(死亡・負傷・物損)
・後遺症の有無
・損害額
・添付書類情報
・交通事故証明書
・診断書写し(2通必要)
・商業登記謄本または登記事項証明書

 

調停に必要な費用

調停申立書を提出するときは、希望賠償額に応じた金額の収入印紙を貼らなければいけません。
必要な収入印紙代は訴額の費用によって変わります。

例)
10万円まで  500万円
50万円    2,500円
100万円    5,000円
300万円   10,000円
訴額が決まらないとき  13,000円

このほか、郵便切手費用が必要です。詳しくは申立をする裁判書に問い合わせてみましょう。

民事調停の費用は原則、申立人が申立時に支払います。調停やその後に行われる裁判の中で、加害者負担や双方の折半にするか協議します。

調停費用は賠償額によって微々たる金額になるので、加害者への請求交渉をせずに、被害者が自己負担で済ませてしまう場合も多いです。

申立から調停までの流れ

調停申立をしてから調停までの流れは次のようになります。

1.調停申立書を裁判所に提出

2.調停日時の決定
裁判所から調停期日を決定するために連絡が来るので、相談の上、調停の日時を決定します。
日時が決定すれば、相手方に「調停申立書」の副本と一緒に調停への呼出状が送付されます。
調停に強制力はなく、相手が調停に出席しなければその時点で調停不成立に終わります。
調停申立をする際は、相手へ調停によって協議することの同意や、出席可能日時の確認まで済ませておくとよいでしょう。

3.調停当日
調停当日は双方が裁判所に出頭します。裁判とは違い、法廷ではなく個室に調停の場が用意されています。
調停がはじまると、まずは双方の意見を述べ、その後調停委員が最終的な解決策を提示します。

4.調停成立・不成立
調停に強制力はなく、双方の合意が得られなければ不成立になります。
解決案に双方合意すれば調停調書が作成されます。

5.執行
調停調書は裁判の判決と同じ効力があります。
加害者は調停調書に書かれた賠償額を期日までに支払わなければいけません。
万が一、賠償金の支払いを怠り調停調書に違反する行為があれば、裁判不要で給料や財産の差し押さえなど強制執行が可能になります。
被害者は調停調書に記載された賠償額以外の請求をする事はできません。