会社を経営している方の場合、自動車保険を会社の名義で契約する方法と、個人の名義で契約する方法があります。
自動車保険をそれぞれの名義で契約した場合の違いや注意点を紹介します。
車の名義人と自動車保険の契約者
車の名義人と自動車保険の契約者は同一にしておく事が一般的です。しかし、車を法人名義とし自動車保険を個人契約にしたり、その逆にするなど、別々に設定する事も可能です。この場合、それぞれ個人名義の場合は、法人の代表者の名義にしておくのがよいでしょう。
代表者以外の個人でも、車の名義と自動車保険の名義を組み合わせる事は制度上は問題ありませんが、代表者以外の名義を使用すると、その名義人が会社を辞めてしまった時などにトラブルが発生します。
例えば会社名義の車を個人が保険契約した場合、個人が会社をやめてしまうと、法人は新規に自動車保険を契約しなければいけなくなります。
個人名義と法人名義は契約や等級の引継ぎ
個人の場合は同居の親族であれば等級継承をして、親から子供へ保険を引き継ぐ事も可能ですが、法人の場合は、例え代表者であっても原則、契約を引き継ぐ事ができません。
ただし例外として、法人登記してから1年以内の場合、代表者の名義の車である事を条件に法人に契約と等級を引継ぎできるケースもあります。
しかし、それ以外のケースでは、たとえ現状個人で割引率が高い20等級で契約している場合でも、法人で契約をしなおすと運転する人が変わらなくても6等級の新規契約(法人で別途11等級以上の契約があれば、セカンドカー割引適用の7等級)となります。
個人で自動車保険に加入しても経費で落とせる
会社など事業で使用している車の場合、「保険料を経費計上できるか?」が大きな焦点となってきます。
車も保険も法人名義の方が経費上の処理がスムーズに行きますが、一方が個人の場合であっても会社が個人から借り入れるという方法を取る事で、経費計上可能です。
代表者以外の個人名義を使用する場合はイレギュラーなケースで業務や会社の関係で変わる可能性もあります。必ず会社の顧問税理士等と相談しながら、代表者以外の個人名義を使用するようにしましょう。
会社契約と個人契約で変わってくる自動車保険のプランと料金
自動車保険は契約者が個人の場合と法人の場合で設定や特約が変わってきます。
全般的に個人契約よりも法人契約の方が選択肢が少なくなります。
その詳細は各保険会社で変わりますが、一例を紹介します。
運転者限定
個人契約では本人限定や家族限定など、運転者の範囲を任意で細かく指定して保険料を安くする事が可能です。法人はこうした運転者限定が設定できない場合が多いです。
その車を会社の社長だけしか運転しない場合や、家族経営の会社で、同居の親族しか運転しない場合は個人契約にして、運転者を限定した補償にすると、若干保険料が安くなります。
年齢条件
個人契約でも法人契約でも年齢条件を設定する事ができるプランが多いです。
個人契約の場合は、年齢条件を35歳以上に設定する事もできますが、法人契約にする事によって、上限設定が30歳以上となる事があります。この場合は個人契約の方が2〜3%程保険料が安くなります。
人身傷害が搭乗中のみ補償に限定される
運転者や同乗者の交通事故による怪我や死亡・後遺症を補償する人身傷害には、個人契約の場合は車の搭乗中以外の傷害についても、記名被保険者とその家族に対して補償する特約があります。
しかし法人契約にした場合の人身傷害は、搭乗中の傷害に補償が限定されます。
法人契約だとファミリーバイク(原付)特約をつけられない
自動車保険は主に車に対してかけるものですが、125cc以下の原付バイクを条件に、ファミリーバイク特約などで対人賠償や人身傷害(運転者・同乗者の補償)を車とセットにする事で安く保険で補償する事が可能です。
しかし、法人契約の場合は例え法人名義の原付バイクを所有しても、自動車保険の特約で原付を補償する事はできません。法人の場合は、原付は専用のバイク用任意保険に加入する必要が出てきます。
法人契約だとロードサービスがつかない事も
ロードサービスについては、各保険会社で対応が分かれます。一部の自動車保険だと法人契約にした場合、ロードサービスが付帯されないケースも
あるので、保険会社を選ぶ時は、ロードサービスもポイントとして考えておきましょう。
保険料は個人と法人で違ってくるの?
自動車保険の保険料は個人であっても法人であっても、基本的な料金はほとんど変わりません。
しかし契約内容やプランの違いでも紹介している通り、個人にしか設定できないプランや限定条件などもあります。こうした細かい限定や特約の付け方によって、個人の方が保険料を安くする選択肢が出てくる場合があります。
まとめ:結局個人と法人どっちで契約するべき
自動車保険を法人で契約するメリットは、経費上の手続きが簡単な点と、長く事業を続けていき、将来的に家族以外の人を社長に任命したり、経営者が変わったりした時にも、その自動車保険の契約を引き継げるメリットがあります。
軌道に乗っている事業で、長く運営していける見込みがあれば、法人で契約しておく事がオススメです。
小規模の会社で、個人契約から法人契約にする事によって保険料が高くなる見込みがあれば、無理に法人契約をせずに、個人契約をして利用する事も可能です。ただし個人契約から法人契約に等級を引き継ぐ場合は、法人立ち上げから1年以内と条件がある場合もあるので、立ち上げたばかりの法人は、慎重に考える必要があります。
細かい内容や条件はそれぞれ変わってきますので、顧問税理士や自動車保険の代理店などと相談して、後々後悔のしない方法をしっかり説明を聞いて検討する事が重要です。