自動車保険の車両保険とは、事故などによる車の修理費用を保証する保険です。
車両保険には種類があり、保険会社によって多少名称は違いますが、一般的には
- 一般車両保険
- 車対車+A
- 車対車
の3種類があり、多くの保険会社は一般車両保険と車対車+Aの2種類を扱い、一部の保険会社のみ車対車のプランを用意してあります。
一般車両保険とは、自損事故やイタズラなど原因を問わず車が損傷している事実があればその修理代金を保証する内容でフルカバータイプとも呼びます。
車対車はその名の通り車同士の事故の際に限定して、被保険車両の修理代金を保証する内容の保険です。必ず示談交渉をする相手がいる事が前提となります。
車対車+Aの「+A」とは
車対車+Aの「+A」とは「Accident(アクシデント、災難)」の略で保険会社によって内容は異なりますが、一般的には
- 飛来中・落下中の物との衝突(主に飛び石など)
- 火災爆発
- 洪水・台風・高潮
- 落書き・イタズラ・窓ガラス破損
これらのアクシデント(+A)での事故は運転手がいかに安全運転しても避けられない原因による損傷で、2012年10月以前の契約では原則等級据え置き事故として扱われていました。
通常自動車保険の等級は、1~20の等級があり新規の場合は6等級からスタートして1年間無事故(保険未使用)であれば翌年には等級が1つあがり、事故を起こした(保険を使用した)場合、1事故に付き3等級ダウンします。それに対して+Aの等級据え置き事故は他に事故がなければ、保険を使用しても翌年も同じ等級に据え置くという内容でした。
しかし、2012年10月以降の改定で損保会社が相次いで等級据え置き事故を廃止しています。
なぜ等級据え置き事故は廃止になったのか
保険を利用しても、翌年の保険等級が据え置くというのは非常にメリットが大きいものです。
通常の事故であれば修理代金によっては翌年の保険料の上がる幅(3等級ダウンによる影響)を考慮して、「保険を利用するか?」「実費で修理をするか?」という選択が必要なのに対して、等級据え置き事故は保険を使用しないデメリットが少ないため、多くの方が気軽に利用できる保険でした。
しかしこうした被保険者有利の制度を利用した悪質業者が相次いだ為、保険会社が対策を取らざる得なくなった経緯があります。
等級据え置き事故の不正利用
新車ディラーなども含めた、自動車業者や板金業者(仲介業者含む)が売上を上げる為に過剰な保険金請求を行いました。利用方法は主に飛び石を理由としたものです。
使用している車であれば大小はありますが、少なからずバンパーやボンネットにも飛び石の傷があるものです。こうした本来であれば修理する程度でない傷に対して、等級据え置きで車が綺麗になると客を説得して等級据え置き事故で修理するという事が相次ぎました。
高級外車ディーラーであれば、見た目は無傷にも見える車をバンパーとボンネットの板金修理で30万円~50万円保険会社に請求したり、悪質な業者では保険会社に過剰に請求した保険金を客に還元するなどして保険使用を促していました。
現在の+A使用後の翌年等級
2012年より、等級据え置き事故を廃止する保険会社が現れ、2014年4月1日での改定ではほとんど全ての損保会社が等級据え置き事故を廃止しました。改定前に契約した事により、現在でも等級据え置き事故の対象となっているケースはあります。
当初は翌年1年のみ割増料率などの適応という対応する保険もありましたが、現在は各社足並みを揃えて、従来等級据え置き事故対象だった+Aについては1等級ダウン対応で、足並みが揃っています。
これにより、飛び石など運転者(被保険者)が避けようのない事が原因での車の修理の際も翌年の保険料が上がるリスクを考慮しての対応が必要となりました。
等級据え置き事故の廃止により見直しが必要な車両保険の免責
車両保険を付帯する際に免責金額の設定が必要になります。通販型ダイレクト保険では車対車以外は免責を付けないといけない決まりになっている所も多いですが、人気の免責金額設定は、保険期間1年間の中で1回目の使用は免責0。2回目以降の使用は免責5万円や10万円などと使用回数に応じた免責設定が人気です。
この際に1回目の保険使用の際に免責を付けてしまうと、それまでは飛び石など等級据え置き事故で保険を使用する際に免責があるとガラス交換をしても保険を利用する意味がなくなるなどのリスクを考慮して免責0を選ぶ事が人気でした。しかし等級据え置き事故から1等級ダウン事故に変わった事で保険を利用するリスクができました。
これにより、飛び石であっても軽微な修理は実費で行うと割り切って免責金額の設定を行い保険料を安くする方法のメリットができました。
免責金額の設定だけではなく、車対車のみの+A保証がない車両保険の取り扱いがある保険会社のメリットも増えました。こうした改定の内容も理解して、車両保険の内容や免責金額を中心に見直しを行うとよいでしょう。