家を購入する流れや必要なことは、全てのケースに共通していることと、状況によって必要性や順番に違いのあることもあります。
買主と売主、すぐに入居できる家と建物の資産価値はゼロの実家の売買を行い、全体の流れやルール、注意点で分かったことがたくさんあります。

家を買った方の体験談も交えて、家を購入する流れを紹介します。

家購入の流れと不動産売買のルール、注意点まとめ

家の購入の流れの主要部分をまとめると以下の手順になります。

  1. 物件選び
  2. 価格交渉、購入申込書の提出
  3. 詳細確認、住宅ローン審査、各種手続き(準備含む)など
  4. 売買契約、手付金の支払い
  5. 住宅ローン本審査、引渡し日の調整、各種書類の用意
  6. 引渡し、残代金支払い、移転登記
  7. 入居

まずは新築、中古、建て替えでの物件選び

家を買うときに重要なのは物件選びです。物件選びは新築、中古の選定から、立地や設備、間取りなど予算と希望条件に合う物件を探しましょう。
このページでは、購入したい物件を見つけてから行う手順を紹介しています。物件選びのポイントを詳しく知りたい方は以下のページを参考にしてください。

新築の一戸建てを購入は物件の探し方が難しい
経験者が教える中古の一戸建ての探し方と買い方
家建て替えの流れやかかる費用、建築会社の選び方

購入する権利を得るための購入申込書

購入したい家を決めた場合は、購入申込書を提出することで、家を買う優先権を得られるルールがあります。また、購入申込書は販売価格ではなく希望価格(買い主から提示する値引き後の価格)で申込書を出すこともできます。

家を購入する際の購入申込書の活用例は以下の3パターンがあります。

  • 販売価格で購入申込書を提出 → 先客なしを条件に購入する権利を得る
  • 販売価格より安い値段で購入申込書を提出 → 売主が応じれば購入する権利を得る
  • 購入申込書よりも先に値下げ交渉をする → 商談成約価格で購入申込書を提出して購入権利を得る

商談せずに、販売価格でいきなり購入申込書を提出するケースは少ないです。
私が家を買ったときは、購入申込書を出さずに3〜4日かけて値引き交渉を繰り返しました。予算オーバーの物件だったため、安くしてくれないなら買わないというのが私のスタンスでした。

また、家を探し始めてまもない頃に、不動産業者の担当に勧められて、この物件はすぐに売れるので今すぐ購入申込書を出すべきだと言われ、100万円値引き条件で先に提出したこともあります。
売主は100万円値引きに応じてくれましたが、内覧から即決での出来事で周囲の反対もあってキャンセルしました。

実家を売ったときは購入希望者の提示した価格で2件の購入申込書を先にいただきました。

希望価格で値下げした条件であっても購入申込書を提出することは購入意思をアピールする効果になります。
売主からしてみれば、値下げしても買うか分からない人を相手にした商談よりも、この価格にすれば絶対に買う意思を見せている人の方が真剣に値下げ検討をしてもらえます。

購入申込書提出後のキャンセルと法的効力

購入申込書に法的効力はなく、売主の応じる価格で購入申込書を出した後にキャンセルしてもペナルティはありません。
ただし正当な理由がなければ、不動産会社が簡単に食い下がってくれないですし、非常識と判断されるとその後の案内をしてもらえなくなるケースもあります。

また一度購入申込書を提出してキャンセルすると、やっぱりその物件を買いたいという結論になっても売主に拒否される場合もあります。
私は一度キャンセルした経験がありますが、不動産会社の押し売りの要素もあったので、すんなりキャンセルを認めてもらいました。

不動産業界のルールとして、購入申込書提出の先着順に買う権利を得られることになってます。
この順番に違反して、後から購入申込書を提出した人と契約してしまうと、売主や不動産仲介会社が法的に罰せられる可能性もあります。

購入申込書の提出から、ある程度の期間は購入する優先権を確保できますが、常識的に考えて長すぎる時間を経過しても売買契約手続きに進めないのであれば、売主からの一方的な主張で購入申込書を無効にすることもできます。

また、購入する権利の優先順位や価格についても、法的ルールはありません。
しかし不動産会社や仲介会社は購入優先権をめぐり非常識な対応をすると信用を失うため、公平なルールで取引することを心がけています。

商談成約した後に第三者が高い価格で購入申込書を提出する事例はほとんどありません。
購入申込書を提出して商談成約した場合、仲介会社や直売する不動産会社はすぐに、レインズ(不動産業者専用の物件登録サイト)の情報を削除する決まりになっています。

商談成約から数十分以内に新たな購入申込書の提出があった場合(商談中含む)では、法的には後から高い条件で購入申込書を出した人の権利を認められる可能性があります。

レインズの情報削除作業が遅れた場合は不動産会社がペナルティを受ける可能性があり、レインズ削除後で先に購入申込書を出した客のいる場合は無効として扱われます。

確実に購入優先権を得たい場合は、FAXを使って購入申込書を送信し、提出日時の証拠を残しておくとよいでしょう。

住宅ローンの審査はいつ受ける?

私が最初に購入申込書を提出したときは住宅ローンの審査を一切受けていない状態で、購入申込書の記入手続きと同じ席で住宅ローンの審査申込書を記入しました。

住宅ローンの審査は購入申込書を提出してからでもいいですが、事前におおよその借入可能額や、一般的な物件でローン審査に通った実績を持っていると売主に好感されます。

住宅ローンは、購入する物件が決まらないと正規の仮審査は通りません。物件に抵当権を設定し、不動産価値も審査対象になります。一度違う物件で住宅ローン審査に通っていれば、同等の金額なら違う物件でもローン審査に通る見込みは高いです。

購入申込書提出後のキャンセルは大半が住宅ローン審査に落ちることです。売主からしてみれば、ローン審査に通った実績のある方は信頼できるので、条件交渉にも前向きに応じてもらえます。

売買契約後は原則キャンセルできない

売買契約書を交わすときは、100万円もしくは売買代金の10%を目安に手付金を支払います。売買契約を結んで手付金を払った時点で、買い主の一方的な理由でキャンセルはできなくなります。

明確に言うとキャンセルはできますが、正当な理由がなければ支払った手付金は返ってきません。
ちなみに売買契約後に売主の都合でキャンセルした場合は、手付金を2倍にして返すルールになっています。

手付金返納条件で売買契約後にキャンセルできるケース

売買契約書の内容に特例を付けることで、支払った手付金を全額返納(買い主のペナルティなし)の条件でキャンセルが可能になります。
一般的には、住宅ローンの本審査で落ちた場合にキャンセルできる特約を付けることができます。

住宅ローンは仮審査と本審査があり、売買契約を結ばないと本審査を受けられません。仮審査前に売買契約を結ぶことは常識的に通用しないので注意しましょう。

仮審査を通過すれば、本審査に落ちるケースはほとんどありません。本審査の目的は仮審査の内容に相違のないことを確認します。

■住宅ローンの仮審査に通過して本審査に落ちる主な事例

  • 本審査を受けるときには、既に退職していた
  • 仮審査の内容に大きな相違点があった(勤務先の従業員数の偽り、雇用形態の偽りなど)
  • 本審査に求められる必要書類を提出できなかった
  • 仮審査通過後に、車のローン購入や消費者金融の利用など借入金が増えていた
  • 仮審査通過後に、既存の借入金を遅延するトラブルがあった
  • 連帯保証人、連帯債務者が契約を拒否した(本人の同意なしに審査を受けていた)

本審査に落ちた理由の内容が悪質な場合は、手付金の返納を受けられない場合もあるので注意しましょう。

このほか、売買契約書の特約に明確なルールはありません。買い主の要望に対して売主が了承して、必要な特約を記載した売買契約書に署名・捺印すればどんな特約でも認められて、手付金返納なしでキャンセルできます(民法に違反する内容を除く)。

当然、売主に不利な内容やキャンセルになるリスクが高ければ、売主は特約設定に応じてくれません。

また、引き渡し日までの間に大地震などで売主が瑕疵担保の保証をできない不具合が発生した場合はキャンセルにできるなど、売主都合でキャンセルできる特約もあります。

売買契約を結ぶ前に詳細を確認しておく

売買契約を結ぶ前に確認や交渉しておくチェックポイントは以下のとおりです。

・住宅ローン控除を利用できるか確認する
・瑕疵担保責任のルールを明確にする(引渡し後に判明した家の欠陥・不具合の保証)
・測量を行うか?
・現在ある家の荷物の撤去
・引き渡し予定日
・引き渡し前のリフォームやクリーニングなど
・売買契約後に渡される書類や資料の有無(測量図、購入時のパンフレット、建築仕様書など)
・隣人とのトラブルや問題点の有無(境界を飛び越えて建物や柵が建っているなど)
・セットバックの有無、再建築する際の条件など

売買契約後でも、売主次第では要望や交渉に応じてもらえるケースもあります。
しかし、契約書を交わしている以上は、新たな要望や条件交渉は法的にも不利で売主が拒否すれば当初の条件通りに話を進めるか、手付金の戻ってこない条件でキャンセルすることになります。

私が家を売ったときは、当初はすぐに解体するので若干の手数料で不用品もそのまま置いて処分できると提示されていましたが、契約前にやっぱり一時利用するので、引き渡し日までに全部処分する話に変わりました。

また、商談成立して購入申込書をもらった後に、本測量を行うように指示されました。
測量と不用品処分で合計30万円以上の費用を売主負担で払うことになり、売買契約前のためキャンセル提示することもできましたが、30万円を差し引いても悪い条件ではなかったので応じました。

もし売買契約後に測量や不用品処分の追加要望を受けていたら拒否していたと思います。

売主との条件交渉のほか、住宅ローン控除の利用可否なども再度確認しておきましょう。
不動産会社の担当スタッフによっては、築20年を超える木造住宅でも、しっかり調査せずに住宅ローン控除利用できると説明してくる場合もあります。

売買契約後に住宅ローン控除は受けられるけど、必要な耐震基準適合証明書や瑕疵保険に加入するためには100万円のリフォーム費用が必要になると提示されるトラブル事例もあります。
悪質な場合、不動産仲介会社に損害賠償請求することもできますが、内容によっては金額が大きいので訴訟に発展して結果的に弁護士費用を含めて損失が出てしまうこともあります。

住宅ローン控除に必要な書類を発行するにはいくら必要なのか、引き渡し日は希望時期に可能なのかなど、家の購入に必要なことは全て詳細を明確にしておきましょう。

売買契約から引き渡し日まではやることがたくさん

売買契約をしてから引き渡し日までは、住宅ローンの本審査や今住んでいる家の撤去準備など、やることはたくさんあります。
状況に応じて各種適合証明書などの発行手続きを行うなど、用意する書類もたくさんあり、人それぞれに必要な書類ややるべきことは異なります。

売買契約後は不動産会社の営業マンがサポートしてくれるので難しく考えず、指示に応じた行動をとって不安なことがあれば、随時相談しながら対応してください。

売買契約時に引き渡し日を明確にしたのであれば、不動産会社の指示通りに動けば問題なく対処できることを意味しています。予定よりも遅れることがあれば早めに相談をして、不動産会社と協力しながら進めていきましょう。

ただし、不動産会社のスタッフは、家をトラブルなく購入する(引き渡しを受ける)ことまではスペシャリストですが、必要な税制優遇のための申請などは把握していないこともあります。

契約や引き渡しに関連することは不動産会社に全て任してもいいですが、全てを丸投げにするのではなく、自分自信でも住宅ローン控除やその他の優遇措置など活用できるものを取りこぼしていないか再度確認しておくとよいでしょう。

また、家を買うときには火災保険や引越し、家具の購入など付随して必要なこともたくさんあります。
不動産会社によっては、一連のサービスで提供業者を持っていて、特別価格で必要なことの専門業者や専門サービスを手配してもらえる場合もあります。

引き渡しや引越し、保険など家のことなら、なんでも不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
特別割引があったとしてもネットで探した業者やサービスの方が安いこともあるので、時間に余裕があれば自分自信も色々と調べながら手続きや準備を進めていきましょう。

おわりに

家を買う流れや手順は多岐にわたり、購入物件や購入者のローンや入居希望日などで状況は変わってきます。
しかし、難しく考える必要はなく、以下のポイントさえ抑えておけば問題ありません。

・購入申込書のルールや活用法を知っておく
・売買契約までは、キャンセル可能
・売買契約前に詳細をすべて明確にしておく
・売主、買い主の同意を持って契約書に特約を組み込むことで、色々なルールを設定できる
・最低限のルールのほかに、価格や条件の交渉を有利に進めるためのコツがある
・内容を吟味した上で売買家約を結べば、あとは不動産会社が手厚くサポートしてくれる
・優遇税制の活用や諸費用を安くする取り組みなど、買い主自身が調べて行動するべきこともある

家を買うための手間で大変に感じたのは売買契約を結んでからですが、家を買って失敗しないためには売買契約を結ぶ前の交渉や内容確認が重要です。