
私は2015年9月に中古の一軒家を購入しました。
当時は何件か新築も内覧しに行きましたが、予算の都合もあり中古住宅の購入を中心に考えていました。
家の価格は土地代+建物代で、建物は築年数とともに価値が減少するので、中古物件の方が将来的に資産形成できるのが早くてお得だと考えていました。
しかし、家を買って2年ちょっと住んでみて、やっぱり多少の無理をしてでも新築を買っておくべきだったと後悔している面もあります。
私の体験談も踏まえて、新築と中古でどっちがお得なのか解説します。
新築のメリット・デメリット
新築の場合は以下のメリットがあります。
- 建物の性能も進化しているので新築の方が快適性と耐久性が高い
- 新築購入後、当面の間は家のメンテナンス費用の負担が少なく、保証期間も長い(10年保証が付く)
- 注文住宅であれば間取りや設備を自分好みに設定できて、建売でも流行を取り入れて住みやすい家に工夫されている
- フラット35Sの優遇金利期間が10年(中古は5年)など、購入時の優遇措置が大きい
中古購入のメリットは、購入価格と固定資産税が安いことです。私が今の家を購入した決め手のひとつは、新築であれば予算を大幅にオーバーする地域に、安くて建物もしっかりしている中古物件があったからです。
予算の問題や、建物と立地のどちらを優先するかなどは、人それぞれ価値が違いますので新築と中古のどちらの方が良いか明確な答えはありません。
お得感だけで見れば中古の方がオススメできる
一軒家は新築・中古を問わず、いずれは老朽化が進んで建物の査定価値は限りなくゼロに近づきます。ただし、土地としての価値は残るため、30年後や40年後の遠い未来を見据えれば、新築でも中古でも最終的な不動産価値は同じになります。
また、新築の場合は誰も住んでいない付加価値があり、一日でも住んだ時点で中古住宅になるため、購入→即売却すれば一般的な相場で見て数百万円の損失を出すことになります。
中古住宅の場合、適正価格で購入できれば即売却しても同等の価格で売れます(諸費用の損失は出ます)。つまり、購入価格から将来の売却価格を差し引いた計算では中古の方がお得です。
中古住宅はメンテナンスにお金がかかるデメリットもありますが、良い物件を見極めて購入できれば維持費を考慮しても新築よりもお得です。ただし、お得感の観点でも無条件で中古をオススメできる分けではありません。中古住宅は購入してから後悔することも多いので注意しましょう。
中古は適正価格で売りに出ていない物件が多数ある
新築の場合は、売主が個人・法人を問わず販売会社が市場をしっかりリサーチして販売価格を決めます。完成時は少し高めの価格設定にして、売れ残るに連れて値下げしていく販売方針が一般的ですが、相場より大幅に割高な新築物件はほとんどありません。
それに対して中古住宅は個人が売主の仲介物件が大半を占めます。仲介物件は個人の売主が自由に価格を決めているため、相場より大幅に高い物件も多数あります。
立地や設備、間取りなど、希望にマッチする条件であれば多少割高でも購入する価値はありますが、お得感や将来のリセールバリューで見て、お得感の少ない中古物件も多数あるので注意しましょう。
建物の耐久性を考える
中古住宅の場合でも、35年の長期ローンを組んで購入される方が多いです。私もフラット35Sの35年ローンを利用しました。中古住宅を購入する時に重要なのが、この先何年住めるか考えることです。
たとえば35年ローンを組んだのに、20年後には建て替えが必要になってしまえば、最初から新築や築浅物件を買っていた方がお得という計算になります。
最近の木造住宅は100年住宅と銘打つなど耐久性の高さに定評がありますが、中古物件は建てた時代や建築工法によって耐久性の低いケースもあるので注意しましょう。
主要なチェックポイントは次のものがあります。
- 建築会社
- 1981年の建築基準法の改正後に建てられた建物なのか?
- 新築では定番の装備になっているベタ基礎を採用しているか?
- 外壁塗装などのメンテナンスを適切に行っているか?
このほかにも、建物の欠陥や老朽化している部分などをチェックして、外壁や水回りのリフォームなど一般的な手入れだけで長く住み続けられるのか考えるようにしましょう。
販売価格の中で建物価格のウェイトが少なければ耐久性に問題があっても、将来土地として売って住み替えたり、建て替え費用を工面する計画を立てることを前提に、耐久性に不安のある家を買っても問題ありません。
つまり、中古の場合は、新築以上に将来の査定価格の予測や建て替え・大規模修繕時期など、計画性をしっかり持つことが大切です。
住宅ローン控除を考慮する
住宅ローンを組む場合は住宅ローン控除を受けられるメリットがあります。住宅ローン控除を受けるには、建物がいくつかの要件を満たしていることが条件になりますが、新築の一戸建ての場合はほぼ確実に住宅ローン控除の対象になります。
中古住宅の場合、木造住宅なら築20年以下が控除対象の基準になり、築20年以上でも特定の条件を満たすことで住宅ローン控除を受けられます。
■中古住宅で住宅ローン控除を受ける主要要件
・床面積が50㎡以上
・築20年以内の非耐火建築物(木造、軽量鉄骨造などの住宅
・築25年以内の耐火建築物(鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの住宅
■築年数が古い物件で住宅ローン控除を受ける条件
・瑕疵保険に加入している(昭和56年以前の物件は瑕疵保険には入れない)
・「住宅性能評価書」付きで耐震に対する評価で等級1~3を獲得
・耐震基準適合証明書の交付を受けている
私が購入した家は築20年を少し過ぎていましたが、耐震基準適合証明書の交付を受けられたため、住宅ローン控除を利用できました。瑕疵保険に加入する場合は、家を検査して不具合を修繕しないと住宅ローン控除を受けられません。
住宅性能評価書で基準になる耐震等級1~3を獲得する場合も、既存の耐震性能でクリアできなければ大規模修繕が必要になります。築20年超え(鉄骨・鉄筋コンクリートは25年)の中古住宅をローン購入する場合は、事前に住宅ローン控除の可否を確認しておきましょう。
住宅ローン控除はいくら戻ってくる?
住宅ローン控除は住宅を取得してから10年の間、年末(12月31日時点)のローン残高の1%が控除対象になります。ただし、上限は年間40万円で認定長期優良住宅もしくは認定低炭素住宅に限り、年間控除額の上限が50万円に増額されます。
また、住宅ローン控除は所得税と住民税が戻ってくる仕組みですので、低所得によって控除可能額よりも納税額が少ない場合は、納税額を上限に控除されることになります。
以下の例をご覧ください。
■10年後のローン残高も4,000万円以上残る通常の家の場合
年間40万円 × 10年 = 400万円
■3,000万円で住宅ローンを組んで、毎年元金が10万円減る計算でローンを組んだ場合
1年目30万円、2年目29万円、3年目28万円・・・中略・・・9年目21万円、10年目20万円 = 合計255万円
住宅ローンを組んで家を購入する場合、ローン元金3,000万円を組んで住宅ローン控除を受けられないと、新築や住宅ローン控除適合の中古住宅を買うより250万円前後損することになります。
お得感という意味でも、住宅ローンを利用する場合は住宅ローン控除を利用できる物件を強くオススメします。
私が中古より新築の方がお得だったと思った理由
私は家を買う前に2年弱賃貸に住んでいました。当時の家賃は駐車場込で6万3千円でした。当時は結婚して間もないころで、将来的に子供ができたときのことも踏まえて、賃貸の家賃より月々のローン返済負担をあげたくない気持ちがありました。
買った家は築20年で2,650万円のセミ二世帯木造住宅でした。結果的に実家を潰して親と同居の二世帯になり、私と妻、親から諸費用含めて800万円ほどの頭金を出して、ローン元金2,150万円でフラット35Sによる35年ローンを組みました。
月々の返済額は当初5年が約6万円、6年目以降は約6万3千円です。
私が買った家は坪単価100万円が相場の立地で土地面積26坪の家を値引き交渉の結果2,650万円で買いました。大手ハウスメーカーが建てた築20年ほどの建物なので破格の条件だと自負しています。
安い理由は、駐車場がないこと、セミ二世帯住宅の需要が少ないこと、外壁塗装がすぐに必要な状態(購入後100万円かけて外壁・屋根塗装しました)だったことです。月極駐車場を月9千円で借りたので、およそ7万2千円を家賃分としての月々の支払いだと考えています。
もし、同じ地域で新築を買っていた場合、4,000万円くらいを相場と考えて、頭金を含めて3,500万円のローン元金を想定します。3,500万円を同じ条件でローンを組んだ場合、6年目以降の月々の支払いは約10万8千円です。
新築なら駐車場付きの家にしていたと仮定すると、月々の支払い負担額の差は約3万6千円で大きな違いがあります。ただし、新築にしていれば月々の光熱費が今より安かったと思います。
築20年の木造住宅に住んでみると、冬は寒くて夏は熱いので、エアコンやストーブなどの光熱費がかさんでいます。
また、賃貸の時はお風呂の脱衣所に洗濯機置き場があって、風呂の残り湯を使って洗濯していましたが、今の家は洗濯機置き場が独立した場所にあるので「洗い」の段階で新しい水を使っていて水道代が高くなりました。特に子供ができてからは洗濯の回数が増えています。
光熱費も考えれば、新築と中古の生活費での差額は3万円ほどになっていたと考えられます。月々3万円ほどの差だったと考えれば、家の耐久性や快適性を考慮して新築にしておいた方が良かったかなと思う場面があります。
もちろん、ローン元金が変わるとローン審査に通っていたか、という問題もあるので、私の場合は中古が身の丈にあっていたとも思っています。
家を買った後に子供もできたけど、思いのほか貯金できる環境だった
私は家を買った翌年に第一子ができました。夫婦共働きなのですが、出産を機に妻は仕事を休む期間がありました。現在は仕事に復帰していますが、出産前よりも給料は下がって保育園代もかかっています。また家が大きくなった分、光熱費も高く毎年固定資産税の支払いもあります。
出て行くお金が増えてて、世帯収入も減っているのですが、賃貸のころよりもしっかり貯金できています。貯金できる理由は、家を買って子供ができてからは休日にお金を使わないで過ごす機会が増えたことだと思います。
また私自身の意識も変わって節約生活することにストレスを感じなくなりました。賃貸の時に浪費していたワケではないのですが、環境が変われば意外と少ないお金でもやりくりできると感じています。
将来の不安も考えて月々の負担を少なくしたいと考えていましたが、プラス3万円くらいなら、なんとかなったのではないかと感がてます。もし、家を買う前の自分にアドバイスできるとすれば、新築を買った方がいいとアドバイスしたいです。
ただし、中古住宅を買って大きな後悔をしているわけではありません。家の間取りや建物の断熱性に不満もありますが、安く買ったので将来資産形成して様々な選択肢を持てると思っています。
現在は親との二世帯住宅ですが、私の世帯だけになったら売って住み替えたり、家を建て直そうと考えています。
賃貸よりも買った方が長期的に見てお得なので、早い段階で家を買っておいて良かったと思っています。
おわりに
新築と中古でどっちがいいかは人それぞれの価値観や、新築と比較する中古住宅の条件によって変わってきます。購入者が納得する家を選べれば、新築でも中古でも良いと思います。
私が家を買う時に多数の内覧を案内してくれた不動産会社の営業マンは、中古中心で購入検討していた私の考えを尊重して、中古物件をたくさん紹介してくれましたが「本当は新築を売りたい」と声を漏らしていたのを強く覚えています。
当時は不動産会社の営業マンは、新築物件を多数扱う会社に勤務していたことや、購入後のトラブルが新築は少ないなど、不動産会社勤務の立場的なことで新築を勧めていたのだと思って軽く聞き流していました。
しかし、今思い返すと、不動産会社で勤務する経験の中で、心の底から新築を勧めたいと思っていたのだと理解できました。
お得かどうかで見れば、良い物件を選ぶことを条件に中古の方がオススメですが、多少の価格差(月々の返済額の違い)であれば、少しは背伸びしてみてもいいというのが私の経験による結論です。ただし、無理してローンを組めるかギリギリの家を買うことはオススメしません。
将来的にも確実に稼げるであろう収入から予算を出して、新築の快適性も考慮して新築か中古か検討してみてください。
また、あくまでも私の価値観ですが、新築など建物の条件を良くするために立地を妥協することはオススメしません。私は地域のターミナル駅から徒歩12分ほどの立地に家を買いましたが、住んでみて好立地に家を買って良かったと感じています。
毎日の通勤で片道5分や10分変わるだけでも、数十年間で見れば大きな時間に膨れ上がります。
不便な場所に新築を買うなら、便利な立地で中古を買った方がメリットが大きいと私は思っています。理想は立地は妥協せずに予算を上げて新築を買うことです。