
家を売るには、まず不動産会社の査定を受けることから始まります。不動産査定は買取査定と、仲介で売り出す際の適正価格を算出する査定があります。
買取査定は不動産会社が転売をすれば確実に利益が出る価格を算出します。
仲介のための売り出し価格の査定は、プロの不動産業者に任せれば必ず適正価格を提示してくれるとは限らず、お客に好印象を与えようと相場より高い価格や、早期売却させるために安い価格を提示されることもあります。
家を売るときは、しっかり家の価値を計算して適正価格を提示してくれる業者を選ぶことと、売り主自身も査定ポイントを理解して不動産業者が提示した査定価格が正しいか判断する必要があります。
家/土地/マンションの査定ポイント
家の査定は以下の要素で決まります。
・中古住宅 → 土地 + 建物
・マンション → 平米数 + 建物(専有部分)の設備 ± マンションの建物や管理状況による加減点
土地だけを売却する場合は、中古住宅で紹介する土地の価格のみが判断材料になり、居住することが困難な古家がある場合は解体費用が差し引かれます。
土地の査定ポイント
土地の査定は以下の計算式で決まります。
土地の査定価格 = 坪数(平米数) × そのエリアの坪単価の相場 ± 土地の形状による加減点 ± 立地による加減点 ± 周辺環境の加減点
土地の場合は平米数よりも坪数で計算されることが多いです。
平米数しか分からない方は、おおよそ何坪になるのか試算してみましょう。
1坪 = 3.30579平米
土地の相場は路線価、固定資産税評価額など様々な基準価格がありますが、居住用の中古住宅や土地の相場は取引価格と地価公示価格を参考にされることが多いです。
自分で調べる場合は土地ドットコムのサイトがオススメです。
https://www.tochi-d.com/
また、不動産業者に問い合わせをすれば、売却物件のエリアの坪相場を回答してくれます。
坪単価で計算される部分は、四角い形状で平地の土地です。建物を建築しやすい平凡な四角形の土地は、単純に坪数と坪単価を掛ければおおよその価格が算出できます。
旗竿地や竹林付き、建物を建築するのに大幅な改良が必要な環境など問題点が多い場合は、減額されます。
どのくらいの広さの建物を建築できるのかや、庭や駐車場の用途でも使えない、もしくは有り余ってしまう使い勝手が悪い土地の部分がどれくらいあるのかを考慮して土地の適正相場を分析しましょう。
立地による加減点のポイント
立地による加減点ポイントは以下の通りです。
■立地の加点ポイント
・南向き
・角地(南東角地が理想)
・日当たりが良い
・風通しが良い
・騒音がない
・土地全体が平坦
・都市ガス利用可
・建築条件が良い(建物目いっぱいに建てても3階建て可能など)
・災害リスクが少ない(川の氾濫、津波、土砂崩れなど)
・展望が良い
・再建築時にかかる制限がない(セットバックがない)
・地盤調査を行い信頼性が高い土地であることが証明されている
■立地の減点ポイント
・北向き
・日当たりが悪い
・風通しが悪い
・幹線道路や高速道路沿いでトラックの騒音や振動が気になる
・線路沿いなど電車の騒音、振動が聞こえる
・災害リスクが高い((川の氾濫、津波、土砂崩れなど)
・将来再建築する場合に既存と同じ建物で建築できない(セットバックがある)
・地盤に不安要素がある
・都市ガスを利用できない
・目の前の道路が坂道の途中
・玄関まで階段を上がらないといけない/玄関が2階
・駐車場の出入りが困難(接道道路が狭い、交通量が多いなど)
各ポイントの加減点の幅は、状況によって大きく変わります。例えば、用途地域が変わってセットバックがある家でも、再建築した時に駐車場と適度な庭を確保して、延床面積も80平米以上の建物を建築できるのであれば、減点はほとんどされません。
もともと狭い土地に目いっぱい建物が建っていて、セットバックによって一般的な居住用住宅の平均(延床面積75平米程度)より小さい家しか建てられない場合は大幅に減額されます。さらに、接道義務を果たしていないなど、再建築不可の条件であれば、不動産の価値は相場の半額以下になってしまいます。
周辺環境の加減点
周辺環境の加減点はすべて紹介しきれないほど多様なシチュエーションがあります。プラスポイントとマイナスポイントを併せ持つ状況も多く、どちらのインパクトが強いかによって加点、減点になるかが決まります。
たとえば、小学校、中学校が近くてコンビニもすぐ近くにあるなど人気条件が揃っていても、墓地や葬儀場と隣接していたり、暴力団の事務所が近くにあると大幅な減点になります。
ここで紹介する加減点のポイントを参考にしつつ、これから家や土地を買う方にとって魅力的な物件であればプラス査定、マイナス要因が強く印象に残る場合は減額査定になります。
■周辺環境の加点ポイント
・駅まで近い(戸建住宅の場合は徒歩15分を目安に価値が変わる)
・駅まで平坦(坂や階段がある場合は傾斜もポイント)
・バス停の近くで、バスの運行本数も多いなど交通の便が良い
・公園の近く
・小学校、中学校の近く(通いやすい、通学路が安全など)
・利便性が高い(商業施設、コンビニ、役所の近くなど)
■周辺環境の減点ポイント
・葬儀場、墓地の近く
・暴力団事務所の近く
・駅まで遠い
・駅までの徒歩ルートに坂道が多い
・利便性が悪い
・騒音や環境汚染の懸念がある工場の近く
・風俗街やラブホテルの近く
・見るからに近所付き合いに問題がありそうな環境(ゴミ屋敷が近くにある、隣の家に暴走族仕様のバイクが停まっているなど)
建物の査定ポイント
以前は建物の価値は木造住宅の場合、20年で価値がゼロになると言われていましたが、建物の耐久性は年々向上しています。建物は外壁や屋根などメンテナンス状況によっても耐久性が変わります。
建物の査定は、建築価格に対して、この先何年くらいは住める見込があるかによって決まります。また入居時にリフォームが必要な不具合があり、現状販売する場合はリフォームにかかる費用が減額されます。
建物の査定ポイントをまとめました。
建物の構造
鉄筋コンクリート > 軽量鉄筋 > 木造住宅
上記の順番に建物の価値は高く評価されます。また、施工メーカーが大手ハウスメーカーなど新築当時の建築費が査定価格に大きく影響され、耐久性が高い家ほど築年数が経過しても高額査定が付きやすいです。
ベタ基礎、新耐震基準を満たしているか?
新耐震基準と旧耐震基準の境目は1981年6月1日です。旧耐震基準当時に建てられた家は査定が低くなり、建物価格0円になる事例も増えます。
築年数が古い家でもベタ基礎(底板一面を鉄筋コンクリートで支える基礎)や軽量鉄筋、鉄筋コンクリート造など、基礎や骨格がしっかりしていれば査定価格が付きやすいです。
リフォームの必要性、履歴
売り主が不満なく住んでいた家でも、新しく中古住宅を買う人は、ある程度良い設備と綺麗な環境での入居を求めています。
リフォームせずに、内装や設備が綺麗で新しく、そのまま住みたいと思える人が多ければ査定価格は高くなり、まだまだ使えるものでも、昔ながらのお風呂や和式トイレなどリフォームを求める需要が高ければ査定価格は安くなります。
デザイナーズ住宅、注文住宅
デザイナーズ住宅や、こだわりを持って作った注文住宅は相場よりも高く売れる傾向があります。
しかし、家の間取りや設備、デザイン性に好き嫌いが分かれる建物は売却期間が長期化しやすく、買取査定の評価が低くなります。
万人受けする家など家の需要
近年は核家族の増加や子供部屋を重視する若い世帯が増えているため、3LDKか4LDKの間取りで駐車場付き、庭は広すぎない家が人気です。
二世帯住宅用や、リビングが広くて部屋数が少ない家、ガレージ付きの家など、中古住宅を探している人が少ない条件だと査定価格は下がり、売却まで長期化しやすくなります。
不安要素がないか?
中古住宅を買う人は、古い家であっても何かあればすぐに建て替える予算はなく、長期ローンを組んで購入するケースが多いです。
この先長く住むにあたって、シロアリ被害や、基礎のヒビ、雨漏りや外壁メンテナンスを長期間していないなど、家そのものに欠陥があったり、すでに傷んでいることが懸念される家は大幅な減額になります。
同じ家の条件でも、第三者期間の検査を受けて、瑕疵保険を付けると高く売れやすくなります。
家の状態をオープンにできるほど、適正価格での査定が期待でき、不安要素があれば実際には家の状態が悪くなくても査定価格は減額されます。家を買ったときの資料など、分かるものは査定時に提示できるように準備しておきましょう。
流行の設備が揃っている
流行の設備は、建売の新築住宅の設備を参考にすると分かりやすいです。築年数が古い家でも、以下の設備が揃っている家は査定価格が高くなります。
・ロフト付き
・カウンターキッチン
・システムキッチン
・ウォークインクローゼット
・全室フローリング
・太陽光発電
・玄関が広めで靴箱が大きい
・無垢など天然素材使用
・外壁はサイディング
・雨戸は縦開閉
・断熱材が多く、冬でも室内が暖かい
・収納が多い
税制面や住宅ローン、火災保険・地震保険の優遇がある
木造住宅の場合、築20年以内であれば住宅ローン控除の対象になります。築20年超え、25年以内の物件であれば長期優良住宅に適合することで、住宅ローン控除やフラット35Sなどの優遇金利が適用になります。
家の査定では、新しく買う人が優遇される条件や、いつまでに売却すれば特典が付くのかなどを明確に把握して、購入希望者へのアピール材料にすることが大切です。
マンションの査定ポイント
マンションの査定ポイントは、一戸建てと共通することと、マンションならではのポイントがあります。たとえばマンションの場合は老朽化が進んでも、入居者4/5以上の賛成がないと建て替えができません。
一戸建ては所有者だけの判断で建て替えができますが、マンションの場合、建物の寿命(大きな欠陥)で建て替え時期が来ても、経済力が無いことや高齢で子供が住む予定もないなどを理由に建て替えに反対する方が多いです。
老朽化や重大な欠陥など住むのが危険な状況でも、ほかの住民が反対すればそのまま住み続けるか、価値が低い状況で売るしか方法がありません。そのため、この先長期間住み続けることに不安があれば専有面積(部屋の平米数)が広くても、ほとんど価値がつかなくなってしまいます。
建物の耐久性が高い場合は、戸建よりも築年数の経過に対する減点幅が少なくなります。
また、マンションの共有部分の設備や管理状況なども重要ですが、管理費や修繕積立金とのバランスも考慮されます。
マンションの査定ポイントを簡単にまとめると、近隣エリアのマンション平米数に応じた取引相場を算出、以下の要素で加減点を行います。
・マンションの建物自体の造りや設備、外観の綺麗さなど
・マンションの中での階数や部屋の方角、角部屋など加点要素の有無
・管理体制
・管理体制や修繕状況を考慮した中で、築年数相応の管理費、修繕積立金か?
中古マンションを買う人の多くは、この先35年以上は住めそうなマンションの場合、35年ローンを組んだ時の月々のローン返済額、管理費、修繕積立金、駐車場料金の合計から月々どのくらいのコストを計算します。
そこから、管理費は費用に見合う価値があるのか?修繕積立金は築年数相応で現時点のメンテナンス状況も適切かを判断し、管理費、修繕積立金が割高と判断されるとマンションの価値が低くなります。
マンションの高く売れる条件、売れにくい条件については、コチラのページでも詳しく紹介しています。
「売りやすいマンション、売りにくいマンション。その条件は?」はこちら
おわりに
不動産会社は一昔前の考えで築20年経過したら建物の価値の0円と提示したり、実際に売りに出して反響を見ないと分からないと回答して明確な数字を出さずに、お客の希望価格で売り出しをするケースもあります。
私が実家を売ったときも土地が狭くセットバックが大きい問題がある条件でした。一括査定を利用して提示された買取査定は600万円〜800万円で、仲介のための査定価格の提示はどこの不動産会社もしてくれませんでした。不動産会社も安い物件で長期化を懸念してか、なるべく安く売らせようとしてきました。
結果的に1,400万円で売れましたが、売るのを決めたときは、土地の相場からセットバックがある旨を考慮すれば妥当な金額という根拠もありました。腕の良い不動産会社であれば、最初から、このくらいの価格が目安と提示できたのではないかと思っています。
私の場合は難しい条件の家でしたが、実際に売ってみて、不動産会社の査定がアテにならないかを実感しました。ある程度は自分自身でも売り出し価格を計算できるように勉強して、不動産会社からの説明も含めて売り主自身も納得のできる価格設定にしましょう。