
家を高く売るにはタイミングが重要です。
不動産業者は低金利で東京オリンピック前の今がチャンスだと言いますが、家の最適な売り時は経済情勢や地価の傾向だけではなく、近隣のライバル物件との関係性も重要です。
家を買う人は、必ず同じエリア内の中古物件を幅広くチェックして比較検討します。
ライバル物件が多いと、価格や装備、条件面で比較されるので、周辺に同等条件の物件が少ないときほど高く売れるチャンスがあります。
家の売り時を見極める方法
家の売り時は、不動産相場の動向と近隣の物件情報から見極めます。
不動産相場は、地価価格の公示や周辺の土地・建物取引履歴のデータから分析できますが、それほど重要ではありません。
全国やそのエリア全体の不動産相場は、長期的に見れば変動する要素がありますが、大震災やリーマンショックのような大きなニュースが無い限り、短期的に大きく相場変動することはありません。
数年以内に家を売りたいと思うのであれば、不動産相場や経済の動向にそれほど敏感になる必要はないでしょう。
家の最適な売り時を見極めるには、周囲の売り物件情報にアンテナをはることが大切です。
家を売るときは、必ず競合物件情報をチェックする
同じ地域で売りに出ている物件があるか調べるときは、「SUUMO(スーモ)」や「アットホーム」などの不動産物件情報検索サービスを利用しましょう。
また、ネット掲載していないけど、レインズにだけ登録して売りに出している物件もあります。レインズとは、不動産流通標準情報システムといい、不動産業者が物件情報を共有するために、国土交通大臣から指定を受けて運用されている業者向け不動産情報検索サイトです。
レインズは過去の取引価格の閲覧は個人でもできますが、売り物件情報は登録された不動産業者でないと閲覧できません。近隣のライバル物件のリサーチをするときは、不動産業者にも声をかけて、レインズに登録している近隣物件情報を教えてもらいましょう。
家の近くで売りに出ている物件自体が少ない場合はチャンスです。比較される物件がなければ、相場よりもちょっと高くてもすぐに買い手が付く可能性があります。
住宅街のエリアでは、時間が経過すると新しい売り物件が出てくる可能性があるので、3ヶ月以内を目安に早期売却を目指してください。
近隣で比較される物件が多いと、割安感やアピールポイントがないとなかなか売れません。
新築も強力なライバルになる
中古物件を売りに出す場合でも、近隣の新築は強力なライバルになります。新築の売り物件は、ほとんどが不動産業者やハウスメーカーによる建売です。
当然売主はプロの不動産業者のため、近隣の新築・中古の物件情報や過去の取引事例を徹底的に調査して、買い手が魅力を感じるような価格設定にしています。
また、業者の建売は個人が注文住宅で家を建てるよりも、安い建築費用で魅力的な設備を取り入れています。
家を買う人は近隣の中古物件よりも高価であっても、中古住宅に比べての付加価値を感じられれば多少無理してでも新築を買います。
たとえば、築30年で建物の価値がほぼゼロに近くて、外壁のメンテナンスも必要な中古住宅が2,500万円で売りにでていて、近くで3,500万円の新築物件が出てきたとします。
もちろん1,000万円の価格差があれば、予算の都合で中古を買おうとする方も現れますが、新築物件の方が人気が出て早く売れる可能性が高いです。
売ろうとしてる物件の脅威になる新築が売りに出ている場合は、新築物件が売れるまで待ってから売りに出した方が高く売れるケースもあります。
同じマンション内の売り物件は、100%競合される
総戸数が多いマンションは、同じタイミングで売りに出す物件が複数あるケースもあります。当然、購入検討する方は、同じマンションで売り物件が2つあれば、両方を比較検討するでしょう。マンションは間取りや設備の状態も同じ場合は、基本的に階数が高い方が価値も高いです。
たとえば、最上階の物件が2,500万円で売り出ている場合、1階や2階の部屋を同じ価格で売りに出しても、よほど最上階よりも優れているポイントがなければ、最上階物件が先に売れることはないでしょう。
展望や総戸数にもよりますが、平均的なマンションであれば、最上階で似たような条件の部屋が2,500万円で売りに出ているのであれば、1階や2階は2,300万円前後に設定することが望ましいです。
2,500万円以上で売りたいのであれば、最上階物件が売れてライバルがいない状態を持ってから売りに出した方がよいでしょう。
値引き競争には参加しない
近隣のライバル物件が3,000万円で売っているから、うちは2,980万円の価格設定にしようといった、ライバル物件よりも少し安い価格に設定することはオススメしません。
近隣の売り物件情報を調査することは大事ですが、あからさまに対抗心を出して価格競争をすると、泥沼の値引き合戦になってしまい、最終的に安い価格で売れてしまいます。
ライバル物件がある中で高く売りたい場合は、家に付加価値をつけて、ライバル物件よりも多少高くても買ってもらう取り組みをした方がいいです。付加価値を付ける方法はインスペクション、瑕疵保険、住宅履歴、リフォームなどがあります。
家を高く売るためのコツについてはコチラ。
ライバル物件がなくなるまで売り出し時期を見送ることも大切
ライバル物件があっても、売りに出しておけばいずれ、良い物件から売れていって、どこかでライバルがいなくなるタイミングが訪れると考えてしまいますが、不動産の売り物件情報は、新規登録(掲載)したタイミングが、一番問い合わせが多くなるチャンス時期です。
また家を買おうと探している方は、数ヶ月〜数年に渡って物件情報をチェックしている方が多いです。長い期間売れ残っている物件は、買い手も把握しているものです。売り物件は長い期間売れ残るほど当初の売り出し価格では売れにくくなり、強気な値引き要求をされます。
売ろうとしている家より、ライバル物件の方が割安管のある価格設定で売り出している場合は、ライバル物件が先に売れて競合が無い状況を待ってから、新規に売りに出した方がスムーズに売れやすいです。
将来の土地相場や経済動向は誰にも分からない
土地の価格相場や景気は、その地域のインフラ整備、国策、金利などの影響を受けます。一般的には、景気が良くて金利が安いときほど、土地価格は高くなると言われています。
また、近隣で大型商業施設ができたり、再開発でそれまで更地や工場跡地、畑があった場所に民家が新しく建築されて世帯数が増えると土地価格が上昇します。
ほかにも、首都圏の場合は2020年の東京オリンピックに向けて不動産相場は上昇し、オリンピック後は下落傾向になると予想されています。
将来の不動産相場の予想をすることはできますが、必ずしも予想通りの動きをするとは限りません。不動産相場は経済と連動している要素もありますが、経済動向も将来はどうなるか分からないですし、簡単に予測ができれば誰でも投資で大儲けできてしまいます。
私は2015年9月に家を買いましたが、その時は不動産屋の営業マンから、「今は歴史的な低金利でアメリカが利上げすることも濃厚だから、早めに買っておいた方がいい」と言われました。
確かに間違った予想ではなかったのですが、結果的にはその後に日銀からマイナス金利政策が発表されて、金利はさらに下落しました。アメリカは予想通り利上げを実行しましたが、国内では2017年9月現在利上げもなく低金利を維持しています。
また、ショッピングモールが新規オープンした影響で、人気上昇中の駅から徒歩20分の中古戸建を見に行ったときに、営業マンから「今は周りに畑が多いけど、これから家が建っていくと思うから、ここの土地も上がっていくと思う」と説明がありました。
確かに長期的に見れば土地が値上がりする要素がありますが、当時の説明から2年経過した今も、周辺の畑はそのままで家が建っていく様子はありません。つまり、将来の土地単価の傾向を予測することは簡単ですが、数年後など短期的に見ると、思惑通りの展開で推移しないことも多々あります。
ひとつ断言できるのは、当記事を作成した2018年現在、家を売る時期としては良い条件が揃った良いタイミングです。マイナス金利政策の影響で、歴史的な低金利を維持していて、不動産業界は盛り上がっています。また、東京オリンピックも近づいてきて、不動産相場はここ数年上昇傾向が続いています。
2017年7月に国税庁から発表された路線価も、全国平均0.4%上昇していて、日本一不動産相場が高い銀座では、バブル期の水準を超えています。ただし、都道府県別で見ると、32県は下落していて大都市圏と地方での2極化が著しくなっています。
季節が与える影響
不動産業界は3〜5月の年度末から年度始めが一番活発になります。年度変わりは、進学、就職、転勤など生活環境の変化が起こりやすく、引っ越しする人が多いです。しかし、生活環境の変化で引っ越しをする人は、いきなり家を買おうとする方は少なく、売買価格への影響は少ないです。
不動産屋の営業マンはセールストークで「4月になっても売れなかったら需要が減るので値下げした方がいい」と提案してくることがありますが、安売りで早く成約させて実績を付けたいという営業マンの都合による嘘です。
不動産業界の傾向を紹介すると、毎年9月に分譲住宅やマンション、アパートの新築物件情報が増えます。9月に新築物件が増える理由は次のようなものです。
不動産業者は3月決算のところが多く、仕入れ担当部署は、年度末になるとノルマが強くなり、営業を強化して仕入れ件数を増やします。年度末の3月に仕入れた土地(古家付き含む)に新築を建設して、完成するのが9月前後にかかることが多いのです。
9月を強く意識する必要はないですが、季節について言及するなら、秋からは新築物件が増えるため競合が多く、中古物件が売れづらくなる可能性はあります。
ちなみに私が家を売るときに、お世話になった不動産屋からは「年末年始は家を見に行こうと行動を取る人が少なくなるが、それ以外の時期は特に暇になる時期はない」と話していました。
不動産を売る時期は、○月が狙い目といった要素は少ないので、季節よりも競合物件情報を重視して、最適な売り時を見極めましょう。
おわりに
家の売り時、時期については、近隣で売りに出ている物件情報を重視して見極めるようにしましょう。私が家を売ったときは、再建築すると極端に小さい建物になってしまう難しい問題があったため、特に売却時期について不動産業者から提案されることはありませんでした。
不動産屋は媒介契約(仲介で売りに出す契約)や成約など営業成績を重視して、お客にとってメリットがある時期を考慮せずに、とにかくすぐに売りに出させようとするケースが多いです。
近隣のライバル物件などの事情も踏まえて、もう少し待った方がいいと行ってくる不動産屋は、プロならではの中立な立場で適切なアドバイスをしているので信頼できる業者だと判断できます。
近隣の売り物件情報は売り時や時期だけではなく、価格設定を決める上でも重要な指標になるので、見落としがないように徹底的にリサーチしましょう。