ブルさんブルさん

家を売るときの値下げは、商談時や購入希望者が現れたときの感情に任せるのではなく、売りに出す前から入念なリサーチのもとで、値下げの交渉余地を明確にしておきましょう。

私は2年前に中古住宅を買いましたが、売り出し価格よりも値引きしてもらうのは当たり前だと思っていました。
基本的には最初の売り出し価格は、若干の値引き余地を踏まえた金額にするものですが、実際に値引きするのは、売り出してからの期間や内覧や問い合わせ件数の反響を見て検討しましょう。

また、値下げする前に仲介業者が適切な販売活動をしていたのか確認することも重要です。

信頼できる不動産業者としっかり話し合うのが重要


家を売る時の価格設定は、以下の3段階に設定します。

  1. 売れたらいいなという価格(当初の売り出し価格で相場よりも若干高め)
  2. おそらく売れるであろう価格(適正相場水準)
  3. これ以上は下げられない価格

それぞれの価格は相場をリサーチして、しっかりした根拠を持って決める必要があります。
信頼できる不動産業者を見つけて、入念に相談して根拠を持った説明をしてもらいましょう
また売りに出す時点で、売り出しから成約までの想定期間と、値下げするタイミングの目安について説明してもらいます。
売りに出してから成り行きで値引きするのではなく、仲介する不動産会社と一緒に目標やプランを設定し、値下げ対応の価値観を共有することが大切です。

売り出し価格の設定金額が重要

値引きなしで売れたとしても、当初の売り出し価格が相場より安ければ損をしたことになります。
200万円の値引きをしても、おそらく売れるであろう価格(適正相場水準)より300万円高い価格設定からの値引きなら売却成功です。

家を売るときは、まず不動産会社の査定を受けて、買取なら○○百万円、仲介で売りに出すなら△△百万円が目標値などと提示してくれます。
家を高く売るには、適正価格で査定してくれる不動産業者を選ぶ必要があります。

高額査定を提示する業者は要注意

家の査定価格は「買取査定」と、仲介で売りに出す時の「適正価格の査定」の2種類があります。
買取査定であれば高い業者を選ぶべきですが、仲介で相談したときに不動産業者から高い査定額を提示されたときは、適正査定をしていない可能性があります。

仲介のための査定は、不動産業者がお金を出すわけではありません。高い査定額を提示する不動産業者は、媒介契約(仲介の依頼)を得るために、高額査定を提示して客へアピールしています。
そのため、他社よりも高い査定額を提示して「うちはこの値段でも売る自信がある」、「まずは3ヶ月だけでいいので専任で任せてくれ」などのセールストークをしてきます。

高額査定や強気なセールストークは不動産業者の定番手法ですが、適正査定をしない業者に売却を依頼すると、適切な販売活動をしてもらえないケースもあるので注意しましょう。

仲介のための不動産査定は、高い値段を提示する業者ではなく、査定額を算出した理由を詳しく説明してくれて、金額や売却までのプランに納得できる業者の方が信頼できます。

値引げする前に不動産業者の販売活動が適切か確認する

売り出しをして1〜2ヶ月以上が経過しても、仲介を依頼した不動産業者が適切な販売活動をしていない場合があります。高く売るために最善の努力をしてくれなければ、家は簡単に売れません。

家を高く売ろうと努力しない業者は、時間が経過すると適当な言い訳を用意して値下げ提案をしてきます。売り出してから一定期間経過して反響が少なければ値下げするのではなく、値下げをするときは仲介業者が適切な販売活動をしているか再度チェックする必要があります。

販売活動のチェック内容

以下の販売活動ができているのか、仲介業者に確認をしてみましょう。不動産屋がやるべきことをやって、それでも売れなかったのであれば、値下げを検討するべきですし、不動産屋が全力を出していない場合は値下げをせずに仲介業者を変えた方がいいでしょう。

これから家を売る方は、仲介業者を選ぶときに、チェック内容で紹介している販売活動をしてくれるのか確認しておくとよいでしょう。

広告活動について

・レインズへの登録をしているか?(レインズは不動産業者が共有する物件情報サイト)
・大手物件情報サイト(アットホームやHOME’S、SUUMOなど)に2件以上掲載しているか?
・大手不動産会社のホームページでも2社以上、売り物件として掲載しているか?(媒介契約していない不動産業者でも、売り手の仲介業者と提携して、買い手のみの仲介で物件情報を紹介することが可能)
・ポスティングチラシや折込チラシの活動をしているか?
・物件情報は多くの写真を掲載して魅力的な内容になっているか?
・近隣の不動産業者にファックスDMなどで物件情報の告知をしているか?

※特に大手不動産会社や近隣の不動産業者へ物件情報の告知や売り込みをしているところは、両手取引にこだわらない優良業者だと評価できる。

空家の場合は物件の様子を確認しに行く

・掃除をしてホコリをためないなど綺麗な状態を維持しているか?
・換気や消臭スプレーなどで不快な臭いがたまらないような配慮をしているか?
・オープンハウスをしている形跡があるか?
・説明パネルや物件のアピールシートを用意しているか?

※抜き打ちで突然今から確認したいと言って様子を見に行くことが望ましい

営業マンからの説明

・現在の価格で売れない原因の説明が根拠のある内容か?
・近隣の売り物件や取引事例情報を再調査して報告をしてくれたか?
・近隣の競合物件と比較しての評価や見解
・売り出し当初と現在で、環境に何か変化はあったか?
・ほかの不動産会社からの問い合わせ状況の報告もあるか?

※媒介契約すると、契約内容に応じて定期的に営業活動報告書を売主に提出する義務があるが、一部で片手取引など成約になると不動産業者の都合が悪い問い合わせを報告していない業者もいます。

努力してくれない不動産屋の思惑

不動産売買の仲介業者は、お客の利益よりも業者の立場を優先して、安くてもいいから成約させようと考えていることがあります。

たとえば、適正相場が2,500万円の家を売るときに、2,700万円で成約させた場合と、大幅値引きして2,300万円で叩き売りした場合を比べると、売却価格は400万円の差がります。不動産業者の仲介手数料は法律で原則3%+6万円に定められています。不動産業者からしてみれば、目標価格よりも400万円安く売っても仲介手数料の差額は12万円です。

2,300万円でも、成約すれば売主からの仲介手数料が75万円。買い手の仲介も行い両手取引ができれば、合計150万円の仲介手数料を得られます。もし、自社で成約できないまま、ほかの不動産業者が売ってしまえば、売上は0円になってしまうため、巧みな営業トークでお客を納得させて安くてもいいから、成約を急がせようとしてきます。

不動産を売るときの値下げ対応で、特に気を付けないといけないのが、専任媒介や専属専任媒介で依頼した場合です。何も販売活動しなくても、ほかの不動産業者に先に売られる心配がないので、自社のホームページに物件情報を掲載する程度で、適切な広告活動をしていないこともあります。

ほかの不動産屋が買い手の仲介業者になって購入希望者を見つけてきても、専任媒介を依頼した不動産業者はほかの業者が見つけた買い手だと仲介手数料を売り手側のみの片手取引になってしまいます。

専任媒介を依頼された不動産屋からしてみれば、相場より高い値段に設定して両手取引(自社で売り手と買い手の両方を仲介)の案件でなければ、価格交渉の相談があっても、売主に相談せずに値引き不可と回答してしまいます。当然、相場よりも高ければ値引きなしではなかなか売れません。

片手取引で売ろうとしない仲介業者は、値引きを断られた購入希望者が、物件情報の仲介業者を見て直接連絡して両手取引することを狙っています。
そして、不動産業者が儲かる両手取引の案件になったら「2ヶ月売りに出してみたけど、あまり反響がなかったです。やっと現れた購入希望者でこのチャンスを逃すと、もう数ヶ月時間がかかるかもしれません。値下げしてでも売ってしまいませんか?」などと提案します。

つまり、専任媒介、専属専任媒介で不動産業者から提案された金額(相談して決めた金額)で売りに出してみて、反響がなく不動産屋から値下げ相談された場合は、当初の売り出し価格では売る気がなく、広告活動もロクにしていない疑いがあります。

おわりに

家を売るときの値下げを実行する条件は以下の通りです。

・適正価格を分析して、値下げをすれば適正価格も現実味がある売り出し価格に設定している
・売り出す前から不動産業者と、値下げの金額や時期の目安を相談して決めている
・不動産業者が今の売り出し価格で売るために、最善の努力をしていることが確認できた

値下げの最終決定者は売り主ですが、仲介業者の力量次第で値下げなしで売れる可能性が大きく変わることを覚えておきましょう。
たとえ相場よりも高い価格設定でも、問い合わせや内見者が多ければ、値下げには応じる強気な販売姿勢を取って問題ありません。

家を売るときに値下げをするかは、売りに出してからの反響で決まる要素よりも、仲介を依頼する不動産会社を選んだ時点で決まる要素の方が大きいです。