ブルさんブルさん

住まなくなった家を売るときは、売却せずに賃貸に出して家賃収入を得る方法もあります。
35年ローンを組んだ月々の支払い額よりも、その地域の家賃相場の方が高いので、賃貸で運用すれば簡単に副収入を得れるのではないか?と私も考えたときがあります。

しかし、私が家を売るか賃貸に出すかで迷ったとき、賃貸に出す場合はデメリットも多く慎重に検討しないといけないことを知りました。
ここでは、家やマンションを売るか賃貸にするかの選び方や、賃貸のメリット・デメリットをまとめました。

賃貸に出す場合のメリットとデメリットを把握しておこう


居住用として購入した家やマンションであれば、住まなくなったときには貸すよりも売った方が無難な選択です。

居住用で購入したり、親から相続された物件の大半は、間取り2DK以上のファミリー層向けの住宅です。こうした物件でも、立地が良くて人気設備が揃っている投資物件の条件に当てはまれば、貸すことを検討する価値があります。

しかし、駅から遠くて建物も古いなど、そもそも不動産投資をしている方が興味を持たないような物件であれば、貸しても空室リスクや設備の修理、各種税金や維持費の支払いなどで、効率の良い運用をするのは困難です。

なかなかどちらとも言い難いですね。両方のメリットとデメリットをもう少し詳しく見ていきましょう。

賃貸のメリット・デメリット

貸すことを検討している人の多くは、賃貸のメリットばかりを見ているもので、デメリットを理解していない方が多いです。メリット・デメリットを理解すると、売るよりも貸した方がいい人の条件が見えてきます。

賃貸のメリット

賃貸のメリットは以下の3つがあります。

家賃収入を得られる

賃貸の1番のメリットは家賃収入です、毎月安定して収入が入ってくれば家計も楽になります。居住用に建てた家であれば、システムキッチンや広めのお風呂など、賃貸向けに作られた物件よりも設備が整っているので、家賃を高めに設定しても入居者が見つかりやすいメリットもあります。

ファミリー向けの間取りの物件であれば、入居サイクルが長い傾向があるので、一度借り手を見つければ当面は家賃収入も安定します。

節税対策になる

家を空家のまま放置すると、税金や管理費などの維持費がかかりますが、賃貸に出せば経費計上して節税効果を得られます。税制面では、一戸建てより、管理費や修繕積立金がかかるマンションの方が有利です。

また居住している不動産よりも賃貸で運用している方が、将来相続して子供や配偶者に引き継がせる場合に相続税が安くなります。

平均的には賃貸物件は居住中物件より2割ほど相続税が安くなり、相続開始してすぐに賃貸を目的にした事業を引き継げば「小規模住宅地等の特例」が利用可能になり、200㎡までの土地の相続税が50%減額になります。

将来、再び住むことができる

一時的な転勤で将来は転勤前の勤務地に戻ってくる見込がある場合や、親が老人ホームに入居していて空家になるけど、元気になれば戻ってくる可能性もある場合、親が死亡した後は子供が実家に住む気がある場合は、賃貸に出して将来住みたくなったら賃貸の契約満了期間を待って、再度住みなおすことができます。

住宅ローンを利用して購入した家の場合、諸費用はおおよそ物件価格の10%ほどかかります。売却時は仲介手数料と印紙代、その他雑費で4~8%ほどの費用がかかります。

たとえば、家を3,000万円で一度売って、数年後に同じ地域で3,000万円の家を新しく購入した場合、諸費用だけで合計400万円~500万円ほどかかります。それであれば、多少のリフォームや空室リスクなどのコストを負担しても、賃貸にして戻れる家を確保しておいた方がお得です。

賃貸のデメリット・リスク

賃貸経営は難しい面もあり、失敗して最初から売っておけばよかったと後悔される方も多いです。賃貸に出す場合は、デメリットやリスクを認識しておく必要があります。

空室リスク

1番懸念しておかないといけないのが空室リスクです。空室期間中は家賃収入が止まり、不動産所有に必要な経費をオーナーが負担しないといけません。住宅ローンの支払いもあれば、家計はかなり圧迫されます。

賃貸の空室リスクは築年数ごとに以下の目安があります。

・築10年以内:年間空室率10%
・築20年以内:年間空室率15%
・築20年超え:年間空室率20%

ファミリー向けの物件は平均入居期間は4年と言われていますが、一度退室すると数ヶ月空室が続くことが多いです。賃貸で借りた人は2年で退去することもあれば、10年以上住んでもらえるケースもあります。

立地が悪くて築年数が古いと半年~1年以上空室が続くこともあります。実際の空室率や期間がどのくらいになるかは、実際に賃貸物件として運用してみないとわかりません。

経験豊富でその地域の賃貸事情に詳しい不動産会社に相談して、貸そうとしている物件にどのくらいの需要があるのか把握しておくことが大切です。住宅ローンの支払いがある場合は、長期間空室が続くと資金がショートして、最終的に不動産会社に安い買取価格で売ってしまうケースもよくあります。

家賃の下落

賃貸物件として長年運用すると、築年数に比例して家賃相場も下落していきます。家賃下落の平均相場は1年で1%、10年で10%です

また、日本は人口の減少が進んでいて、今後は世帯数も減少することが予想されます。空室物件が増えれば、その地域の賃貸相場も安くなります。また賃貸で入居している方からも更新時に値下げ交渉をされるケースが増えています。

インターネットの普及で借り手も情報収集源が豊富になり、家賃は値下げしてもらって当たり前と捉えられるように時代が変化しています。つまり、今後は家賃の下落率が1年1%よりも高くなっていく可能性があります。駅チカなど好立地の物件であれば家賃の下落リスクは低いです。

不動産価値の下落

建物価値も経年数とともに下がっていきます。使用状況やメンテナンス状況によって価値の下がり方は変わりますが、木造住宅の場合、10年で新築時の50%、20年で建物価値はほぼゼロになるとも言われています

たとえば今すぐ売れば2,000万円で売れる物件でも、賃貸に出して3年後には1,700万円まで価値が下がってしまうケースもあります。5年で経費を差し引いた家賃収入の利益が200万円だった場合、最初から売っていた方がお得になる計算です。

特に戸建て住宅は外壁塗装の塗り替え時期が来ると売れにくくなります。リフォームサイクルも含めて、売るのと貸すのでどっちがお得か見極めましょう。

賃貸運営する出費

賃貸運営する場合、家賃がそのまま利益になるわけではなく、以下の経費がかかります。

  • 固定資産税:固定資産税評価額の1.4%(標準) + 都市計画税最大0.3%
  • 管理費:マンションや新興住宅地(ニュータウンなど)で管理組合に払う費用、8千円~2万円が相場
  • 修繕積立金:マンションの所有にかかる費用。相場は1万円~3万円。建物が古くなると高くなる
  • 修繕費:キッチン、お風呂のガス給湯器、水漏れなど家の設備の故障は大家が負担して修理します。そのほか戸建住宅は外壁塗装などのメンテナンス費用も必要です。
  • 管理委託費:専門の賃貸管理会社を利用した場合、賃料の3~5%/月が必要
  • 仲介手数料:入居者を見つけてもらったときに不動産会社へ支払う手数料。基本は家賃の1ヶ月分(借り手だけではなく貸し手も手数料が発生します)
入居者の事故やトラブル

不動産会社に仲介を依頼して賃貸に出す場合、借り手は他人になり、どのような方が住むか分かりません

少ない事例にはなりますが、賃貸に出したところ、入居者が部屋の中で首を吊って自殺してしまい、いわくつき物件(業界用語で事故物件といいます)になってしまうケースもあります。事故物件は賃貸や販売する際に告知事項で伝える義務もあり、不動産価値が大幅に下がります。

賃貸に出したせいで、家を売ろうとしても相場の半分以下になってしまうケースもあります。ほかにも、家賃の長期滞納による入居者とのトラブルリスクもあります。

保証会社の利用を義務付ける契約にすれば、ある程度の滞納分は保証されますが、保証会社が負担する滞納家賃にも上限があり、保証会社が絡むことで問題が長期化する事例もあります。

賃貸は悪い入居者にあたると、数百万円~数千万円単位の損失が出るケースもあることを覚えておきましょう。

賃貸中に売ると安くなる

賃貸契約途中で、入居者がいる物件でも売ることができます。しかし賃貸中に売る場合は投資物件として扱われ、ほとんどの物件が居住用として売りに出すよりも安くなります

賃貸の場合、不動産査定の計算方法が収益還元法という賃料ベースの計算式になります。居住用物件は近隣の類似物件の取引価格を参考に決める取引事例比較法が主流です。

もともと投資用として購入した物件であれば売るときも相応の価格を期待できますが、当初は居住用物件で取得して、その後賃貸に出して売ると、賃貸せずに最初から売るよりも大幅に安くなる可能性が高いです。

一度賃貸に出したら、契約満了を持って退去してもらい現状回帰してから売るなど、一度空家になるまで待ってから売るのがセオリーです。

まとめ

売るか貸すかを迷ったら、売却に強い不動産会社と賃貸に強い不動産会社の双方に相談することが大切です。賃貸も仲介も強い不動産会社でも、大手であれば賃貸と仲介で部署が分かれています。どちらか一方から賃貸と売る場合でどちらがいいか聞くのではなく、それぞれの専門家の見解を確認しましょう。

貸す場合は、将来的なことも見据えておきましょう。そのまま将来子供に相続させるまで賃貸物件として運用したいのか、とりあえず賃貸に出して数年後に売却を考えているのか?もしくは将来は再度自分自身で居住を予定している場合など、将来のビジョンによって最善の選択は変わります。

まずは賃貸はお手軽に家賃収入で大きな利益を出せるものではく、デメリットやリスクもたくさんあることと、経費を考えるとあまり儲からないことを覚えておきましょう。