
売ることが決まっている家やマンションを売る時は、居住中の状態よりも空家にした方が売れやすいです。
住み替えの場合は、住宅ローンの支払いや仮住まいの環境の問題もありますが、クリアできるのであればコストをかけてでも空家にする選択肢を入れて検討しましょう。
空家にした時点で荷物も全て撤去するのが理想です。
私が家を買ったときは居住中物件にも興味を持って内覧しに行ったこともありますが、居住中の物件は悪い印象を持つことが多く、空家に比べて検討しづらかったです。
居住中で売るか空家に売るか検討する際のポイントをまとめました。
空家にしてから売るメリット・デメリット
居住中と空家の条件を比べると、空家の方が買いやすいです。気になるのは居住中で売る場合との差額ですが、明確な相場の違いや基準はなく、物件や家の荷物の量や居住者の販売活動に対する協力姿勢によって変わります。
仮住まいやローン支払いなど全ての問題をクリアできるのであれば、空家にしてから売却することをオススメします。
居住中で売るデメリット
空家に比べて居住中物件は以下のデメリットがあります。
- 居住中というだけで候補から外す人が一定数いる
- 入居時期が売り主の都合も考慮しないとならない
- 気軽に内覧に行きにくい
- 荷物があると、家の中が狭く見える
- 収納の容量を完全に確認できない
- 内覧しても家具の裏など建物の状態を完璧に把握できない
- お風呂やトイレの状態が悪く見える
- 家具、家電を撤去した際にシミや日焼け跡が残っているケースもある
家を買う人の中には、賃貸の更新をきっかけに家を買おうとしている方や、仕事の兼ね合いなど、何かしらの事情で引っ越し期間に制限がある場合もあります。即時入居できない条件だと、興味を持ってもらう人が減ってしまいます。さらに、入居中だと内覧に行きにくく、行っても居住者に気を遣ってしまうものです。
家を買う人は、豊富な物件情報の中から消去法でどんどん候補を絞り込んできます。居住中の条件だと、相場より安い、近隣の一戸建ての売り物件がほかにないなど、よほど条件がよくないと簡単に売れません。また、売れた場合でも家具、家電を撤去するとフローリングや壁紙の状態が悪くなっていて、リフォームが必要が判明するなど、購入者からクレームが入る場合もあります。
空家にするために無理に費用をかけすぎるのもNG
空家にしてから売り出すのが理想ですが、住み替えの場合は、仮住まいを用意するなど費用の負担が大きくなります。例えば家を売ったお金でローンを返して、再度新しくローンを組んで家を買う場合は、既存の家が売れないと新しく住宅ローンを組めません。つなぎ融資などもありますが、売買契約が成立していない場合は利用できません。
その結果、空家にして売るためには、仮住まいに引っ越しをして、家が売れてから新しい家を探して、再度引っ越しをする手間があります。実家など無料で住める仮住まいがあればいいですが、賃貸住宅に住む場合は賃料や引越し費用、その他初期費用もかかります。空家にした方が家は高く売れますが、空家にするために50万円〜100万円以上かけるのは勿体無いです。
私が家を売ったときは、もともと賃貸で住んでいた私(息子)が先に二世帯住宅を購入して、その後実家に住む親を呼んで実家を売却しました。ただ、当初は家を売ったお金を頭金にして家を買いたい気持ちもあり、居住中の未公開物件として売りに出しました。数件の内覧はありましたが、4ヶ月ほど時間をかけても、居住中で未公開の条件では希望価格で買い手は付きませんでした。
少し待てば空家にできる環境にある場合は、無理に居住中で売り出すのではなく、空家になるのを待ってから売り出した方が高値で売れやすいです。
空家で売るデメリットもある
居住中に比べて空家の方が売りやすく、売り出し中の中古住宅の多くは空家です。
しかし、空家には以下のデメリットがあることを認識しておきましょう。
- 定期的に換気や掃除などの手入れをしないと建物が痛む
- 売れ残っても固定資産税や火災保険などの費用がかかる
- フローリングや壁紙の状態など、家の悪い状態を隠せない
- 空家だけど家具や荷物が残っていると印象が悪い
特に換気と掃除を怠ると、家の中にホコリが溜まったり匂いがこもります。内覧客が来た時に、手入れしていない状況を見られると、家の状態が悪く見えますし、ほかの内覧客が少ない不人気物件の印象を与えます。不動産仲介会社にも協力してもらい、定期的に換気と掃除をするようにしましょう。所有者も手入れに協力することが望ましいです。
また、相続で引き継いだ家を売る場合も、なるべく荷物は全て撤去をして、遅くても空家になってから3年以内に売るようにしましょう。
居住中で売るためのコツ
空家にするのが難しい状況であれば、デメリットを理解した上で居住中にして売り出しましょう。
居住中で売るためのコツは、以下のものがあります。
- いつでも内覧に応じられるように配慮をする
- 内覧客に対して好印象を持ってもらえるような対応を心がける
- 整理整頓と掃除をしっかり行う
- 居住者でないと分からないメリットを伝える
居住中の物件を売るために一番大切なのは内覧対応です。セオリーは1回目の内覧は居住者は不在にして、2回目の内覧では立ち会うようにします。いつでも内覧できるように、不動産会社に合鍵を渡すなど、外出する予定があっても内覧の受け入れ体制を整えておくとよいでしょう。
インスペクションと瑕疵保険を利用する
居住中の物件でもっとも懸念されるのは、家に大きな欠陥がないか?という点です。特にキッチンやお風呂などの水回りは、使用感があると劣化が著しく見られてしまいます。居住中の物件を高く売るためにオススメしたいのがインスペクションと瑕疵保険です。
インスペクションは、第三者機関による建物や設備の検査です。瑕疵保険は引き渡し後に発生した欠陥に対しての保険です。それぞれ、5万円〜10万円の初期費用はかかりますが、家の状態を明確にして買い手に安心感を与えられるメリットがあります。
購入希望者は、壁紙やフローリングの汚れや日焼け跡、シミは妥協してくれる方はいますが、基礎や柱、屋根など建物そのものの欠陥をもっとも懸念するものです。第三者機関の検査を受けて建物の状態を明確にしておけば、居住中のデメリットを補えます。さらに瑕疵保険も付いてくれば安心感を与えられます。インスペクションと瑕疵保険は居住中でも利用できます。
居住中だと、動かせない家具の裏の状態など、完璧な検査ができない部分も出てきますが、何も検査せずに現状販売するよりも購入希望者に好印象を与えられます。インスペクションと瑕疵保険を活用すれば、空家に比べても同等以上の価格で売れる可能性が高まります。
おわりに
居住中で売るか空家にしてから売るかは、人それぞれの事情があります。居住中と空家を比べれば、空家の方が売りやすいのは明確です。家を買う人の気持ちになれば、空家の方が検討しやすい理屈が分かると思います。人によっては、居住中というだけで候補から外されてしまいます。
空家にしてから売り出せる選択肢があるのなら、積極的に検討してください。しかし費用がかかりすぎるなら慎重に検討した方がいいです。特に仮住まいを用意する場合は、売却期間が長引くデメリットがありますし、仮住まい期間が長くなることを嫌って、安売りで早期売却してしまうケースも多くあります。
居住中で売る場合は、空家よりも売りにくい状況を理解しつつ、内覧の対応や瑕疵保険の検討などできることを精一杯行いましょう。