住宅ローンは最長35年組むことができますが、ローン期間が長いと、途中で転職や勤務先の業績悪化で収入が減ったり、病気、離婚、子供の養育費など生活環境や家計の状況が大きく変わることもよくあります。
しかし、ローンの返済ができないまま放置すると、最終的には家を差し押さえされて競売にかけられてしまいます。
ローンが払えなくなった場合は、早めに金融機関に相談をして、リスケジュールや任意売却の相談をするなど、先手を取った行動を取りましょう。
家のローンが払えなくて困ったら
住宅ローンを組んでいる家は金融機関が抵当権を設定していて、長期間返済できなくなった場合は差し押さえをされ、ローンを残して勝手に売れない仕組みになっています。
家を売れば売却価格でローンを完済できる状況であれば、単純に家を売るだけで全て解決できます。しかし、ローンが払えなくて困っている方の多くは、家を売って全額返済に回しても残高が残ってしまう状況である事が多いです。
通常は、売却価格がローン残債を下回っていて不足分を補填できないのであれば、住み替えローンや不足分のみ通常の借入(無担保ローンなど)に切り替えて対処しますが、ローンが払えない状況では新規借入審査が通らないという方も多いでしょう。
ローンが払えない状況で自力ではどうすることもできない場合は、以下の3つの対処法があります。
- 任意売却を利用する
- 借入している金融機関に相談して、月々の支払い金額を少なくしてもらう(リスケジュール)
- 親や兄弟などに相談して資金援助してもらう
親など身内に相談して資金援助してもらえるのであれば、財政を立て直すまでのローン返済に充てたり、家を売却して不足分を補うことで解決できます。身内であれば利息も取られないことが多いでしょう。
親など身内に頼れないのであれば、任意売却で売るか、リスケジュール交渉でローンの支払いを少なくしてもらい住み続けながらローン残債が減るのを待つしか方法はありません。
なお、ローン返済の滞納を続けると、金融機関に差し押さえられて債権が保証会社に移ります。最終的には競売にかけられて、落札した競売業者から立ち退き交渉を受けることになります。
競売のデメリットと競売になる流れを知っておく
家のローンを払えなくなると、自暴自棄や投げやりな気持ちになってしまう方もいますが、競売で売ることになるとデメリットが多いです。
ローンを払えない状況になったら、まずはローンを払わずに放置するとどうなるのか理解しておきましょう。
まず、月々のローンの返済が滞ると、信用情報機関に返済遅延の履歴が残ります。信用情報機関とは、金融機関が貸付審査をする際に、申込者の信用力を調べるために、ローンなどの借金の残高や返済遅延状況などを共有する目的で運営されています。
信用情報機関に返済遅延や貸し倒れの履歴が掲載されることを「事故情報」と呼び、俗称で「ブラックリストに載る」とも言われています。返済遅延の履歴ができると、新規借入や賃貸する際の保証会社の審査が不利になり、家を売ってその後新しい家を探す時も不利になります。極力、返済遅延する前に対処するようにしましょう。
返済遅延すると、まずは書面にて遅延金を払うように案内や払込票が金融機関から届きます。さらに返済遅延が続くと、電話による催促が来て連絡が取れないと職場に電話がかかってくることもあります。
1ヶ月未満の返済遅延であれば催促はそれほど厳しくないですが、返済遅延が続いたり債務者と連絡が取れないと、一括返済の催告書や督促状が届き、どんどんシビアな対応になっていきます。それでも連絡が取れない場合や、返済できる目処がないと判断されると、ローンを組んだ時の連帯保証人や連帯債務者に取り立てがいくようになります。
しかし住宅ローンを組むときの連帯保証人、連帯債務者は配偶者や同居する親など、家計をともにしている身内に設定していることが多く、弁済できないケースがほとんどです。最終的には債権が保証会社に譲渡されて、競売にかけられることになります。
返済遅延から競売にかけられるまでの期間は、金融機関とのやり取りや返済が完全に滞っているかなど状況によって変わりますが、おおよその期間の目安と流れは以下の通りです。
・返済遅延1ヶ月:書面での催促
・返済遅延2ヶ月〜3ヶ月:電話による催促、催告状、督促状が届く、連帯保証人、連帯債務者への取り立て
・返済遅延3ヶ月〜6ヶ月:期限の利益の喪失通知が届き、一部返済が認められなくなり、一括返済するしか解決策がなくなる。さらに取り立てを得意にする保証会社へ債権が譲渡される
・返済遅延6ヶ月〜8ヶ月:競売開始決定通知書が届く
・返済遅延8ヶ月〜10ヶ月:現況調査報告書が届き、裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を調査しにくる
・返済遅延10ヶ月〜12ヶ月:競売入札が開始され、最高値で落札した業者が家の所有権を得る。競売落札業者から立ち退き交渉が始まり、裁判所からの立ち退き命令も出るため居住者は立ち退きを断る権利を失う
競売の落札価格は安い
競売では居住者がスムーズに出て行ってくれないリスクがあるため、通常の買取相場よりも安い価格が競売落札相場になります。
また、競売で落札する業者のほとんどは、競売を専門に扱っている不動産会社で、仲介などを行う綺麗な商談スペースを持って看板を出して営業している不動産業者とは違います。一昔前はヤクザの運営する競売業者が強引な立ち退き交渉をする事例もありましたが、最近はある程度は常識がある対応をしてもらえるように変わってきました。
それでも通常の不動産会社よりも見た目が怖い人が来ることが多く、お客様として扱われないので対応もシビアです。競売業者は自社で落札物件を売ることは少なく、立ち退き交渉をして空家の状態にしたら、提携する不動産会社に転売するケースが多いです。
良心的な競売業者であれば、リースバックで賃貸契約を結んでそのまま住み続けられるように提案してくれることもありますが、競売はオークション形式で落札業者を選ぶことはできないため、対応方法は落札業者次第となります。
返済できる目処が立たなくなったら、返済遅延をする前にリスケジュール相談をする
リスケジュールとは、債務の返済計画を立て直して繰り延べることです。略して「リスケ」とも呼びます。ローンを払えなくなりそうであれば、借入している金融機関に連絡して、リスケジュールができないか相談しましょう。リスケジュールでは、主に返済期間を長くして月々の返済負担を少なくします。
ほかにも、短期的に返済額を工面できないけど、近い将来収入を得て今まで通り返済できる目処があれば、数ヶ月だけ返済額を利息分だけにしてもらえることもあります。ローンを払えないと申し入れをした場合、貸付を行っている金融機関はリスケジュールを拒否しても、返済遅延が起こり状況が悪化することが目に見えているため、柔軟な対応を期待できます。
しかし、すでに返済遅延が起こっていると対応してもらえないケースも増えます。有利に交渉をすすめるためにも、返済遅延を起こす前の段階で金融機関に相談をしましょう。リスケジュールを行った場合も信用情報機関に履歴は残りますが、取り決め通りに支払いをしていれば、返済遅延に比べてローンや保証会社利用時の審査が有利になります。
ローンが払えなくなった家を売ろうとしている場合も、まずは返済遅延を起こさないようにリスケジュール交渉を先に進めておくとよいでしょう。
ローンが払えなくなったら、任意売却を利用する
任意売却とは、ローンを組んでいる金融機関が、家を売っても全額返済できない状況でも、抵当権を解除してくれる売却方法です。
ローン残債から売却して返済した費用の差額分は、再度ローンを組み直して返済を続けることになります。ローンを払えない状況だと、通常はローンの新規借入審査は通りにくですが、任意売却が認められれば必ず、不足分のローンの組み換えにも対応してもらえます。
任意売却ができる状況は、基本的にすでに返済遅延が起こっている場合です。金融機関は返済遅延前に相談を受けると、まずはリスケジュールを提案してきます。リスケジュールをして、負担を減らしても返済遅延が起こる状況になると、このままだと返済が滞り回収不能になると判断し、任意売却に応じてくれるようになります。
金融機関から見れば、保証会社に債権譲渡するよりも、通常の仲介や不動産会社への買取で売った方が高く売れるため、任意売却した方が回収率が高くなり、さらに不足分も債務者から弁済してもらえる可能性が高いメリットがあります。
差し押さえから競売になると、競売の落札価格は全て債権者(金融機関から債権譲渡を受けた保証会社)に回収されてしまいますが、任意売却なら状況に応じて引っ越し費用など売却価格の一部を受け取れるメリットがあります。
任意売却をする方法
任意売却の相談先は、銀行(ローンを組んでいる金融機関)、不動産会社、法律事務所(司法書士や弁護士)があります。一般的には、銀行に相談してリスケジュールをして、それでもダメなら銀行から任意売却の提案を受ける流れになります。
個人が直接、銀行と任意売却の交渉や売却手続きをすすめることはできず、基本的には法律事務所などの専門家を介して手続きすることになります。銀行から任意売却を提案されるときも、必ず専門の相談先を紹介されます。
銀行から紹介された任意売却の専門機関を利用して話を進めることもできますが、銀行から紹介されるところは銀行側の味方で、家を高く売って債務者の負担軽減することよりも、早期売却を優先されるケースが多いです。
任意売却することが決まったら、独自に任意売却を依頼する専門業者を選びましょう。任意売却は、不動産、債権、法律の全てにおいて専門知識を持っていることが理想です。
相談先は任意売却を専門に扱っていて、自社で不動産の専門家と弁護士など法律の専門家の双方が在籍していて、それぞれの専門家が連携して対応してくれる任意売却専門業者がオススメです。任意売却は30万円〜50万円ほどの費用がかかりますが、初期費用や相談料は無料で家の売却代金の中から精算する流れになります。
任意売却は相談する時期が早いほど有利なことが増えます。まだ返済遅延をしていなくて、任意売却に応じてくれない状況でも、ローン返済が厳しい状況で家を売って解決したいのであれば早めに任意売却の専門業者に相談しておくとよいでしょう。
おわりに
ローンが払えなくなった家を売るときは、まずはリスケジュール交渉をしたり、身内に資金援助を要請するなど、返済遅延を起こさないようにしましょう。住宅ローンが払えなくなると最終的には競売にかけられますが、通常の不動産会社を介して売るよりもデメリットが多いので、任意売却等で回避するべきです。
ローンが払えないなどお金に困った相談は、友人・知人、購入した時の不動産会社に相談しにくいものですが、外部で無料相談を行っている専門機関も多数あります。ローンが払えない家の売却は先手を取って早めの行動が取れるかどうかで局面が大きく変わります。まずはローンが払えなくなりそうと不安を感じた時点で早めの相談をしておくとよいでしょう。