
登記上問題のある家としては、再建築不可、用途地域の変更、借家権つきの家などがあります。
再建築不可になると適正相場に比べて土地の価値が50%以下になってしまうケースもあります。
私が売った実家もセットバックがあり土地自体が小さかったため、立地は良かったものの、適正相場よりも安くなってしまいました。
建築基準法、用途地域の変更、借地権付きなど登記上問題が発生するケースをまとめました。
登記上問題点が発生するケースと対処法
通常の所有権物件の相場で売れない物件は主に次のケースがあります。
- 建築基準法の改正による再建築不可物件
- 用途地域の変更によってセットバックがある家
- 借地権付きの家
いずれかの条件に該当しても、高額売却が可能なケースもあります。
家の問題点とデメリットを把握して、適切な対処法をとりましょう。
①再建築不可物件とは
再建築不可物件は、現在の建築基準法では建て替えができない物件です。既存の建物を使い続けることは可能ですが、一度取り壊すと新しい建物を建てられなくなります。再建築不可物件は、主に平成11年5月に施行された建築基準法第43条の規定の接道義務によるものです。
現在の制度では以下の条件が再建築不可物件になります。
- 敷地が建築基準法上の道路に面していない(路地や通路にしか接していない)
- 敷地が建築基準法上の道路に2m以上面していない(通路が狭い旗竿地など)
建築基準法上の道路とは、幅員4m以上(一部区域では幅員6m以上必要)です。
再建築不可になった理由は、消防車や救急車などの緊急車両の出入りができないからです。
再建築不可物件の査定価値
再建築不可物件の査定価値は、近隣の土地相場の半額以下になるケースが多いです。再建築不可物件の多くは、建物が密集する繁華街やその近隣の住宅街にあり、もっとも再建築不可物件が多い都道府県は東京都です。
再建築不可物件は、建築基準法第43条が施工された平成11年よりも大幅に古い建物が大半を占め、すでに建物に重大な欠陥が発生しているケースが多いです。郊外など、もともと需要が低い地域で再建築不可になると、ほとんど価値がなくなってしまう場合もあります。
建築基準法に適合していても、テラスハウスや長屋だと再建築不可になるケースも
土地が2筆以上に分かれていても、1つの建物に複数の住宅や店舗が入っている長屋の場合は、その建物の所有者全員の承諾がなければ再建築できません。長屋やテラスハウスなどが該当し、建物が古いと再建築不可物件と同等の査定評価になってしまいます。
制度上は、所有分の建物だけ取り壊して新しい建物を建築することができますが、建物の一部を基礎や壁から壊す場合も、その建物の所有者から承諾を取る必要があります。建物に欠陥がなく状態が良くても、木造の集合住宅の長屋、テラスハウスは、一戸建てや鉄筋コンクリート造のマンションに比べて査定価格は大幅に安くなります。
②セットバックがある物件
セットバックが必要なケースでは、現在の建物を取り壊して新しい建物を建てると現在よりも建物が小さくなってしまいます。セットバックは土地の用途区分の変更によって起こります。土地には用途区分に応じて建ぺい率と容積率が定められています。建物を建築した当時から現在までに土地の用途区分が変更になり、建ぺい率・容積率が少なくなってしまうと、セットバック物件に該当する可能性が高いです。
土地の用途区分は市区町村の役場に都市計画課等に問い合わせをするか、役所のホームページから都市計画情報(用途地域等)の閲覧情報を確認して調べられます。不動産査定では登記情報の所在地や地番から用途区分を確認し、セットバックがないか確認した上で査定価格を算出します。
もともと広い土地であれば多少のセットバックがあっても問題ありませんが、狭い土地に目一杯建物が建っていて、セットバックによって再建築すると既存の建物より大幅に狭くなってしまう場合は近隣の相場よりも安くなります。
私が売った実家はセットバックが大きい物件でした。既存の建物は延床面積75平米ほどの2階建てでしたが、再建築すると2階建てで延床面積50平米ほどになってしまうため、居住用物件としての価値が低いと判断され、近隣の土地相場に比べて70%〜80%ほどの売却価格になってしまいました。
再建築不可物件やセットバックの大きい物件を売る方法
登記上大きな問題がある物件を売るには以下の方法があります。
- 相場より安くなることを承知で現状のまま売り出す(買取含む)
- 隣接する家に買ってもらう
- 隣接する家と併せて大きな土地にして売却する
再建築不可物件やセットバック物件は、隣の家が買ってくれるケースが多いです。特に、隣の家から見て、現在のままだと再建築不可やセットバックで狭い建物しか再建築できない問題があっても、2筆合わせると問題を解決できる場合は購入するメリットが多いです。
売り出しする時期が隣の家と同じであれば、2つの土地を1つの土地や物件として売って、売却価格からそれぞれの土地面積に応じて分け合う方法もあります。ただし、隣の家も再建築不可やセットバックの問題を理解しているので安く買い叩かれるケースも多いです。
所有者が直接隣の家に交渉に行くより、不動産仲介会社から交渉してもらった方が商談がスムーズに進みやすいです。隣の家との近所付き合いや性格を考慮して、無理に直接交渉しないことも大切です。
再建築不可物件やセットバック有りの物件は、住宅ローンが通らない
再建築不可やセットバックなど問題がある物件でも、立地がよければ、相場より少し安くするだけで興味を持つ方が多いです。しかし、再建築に問題がある家を建物付きの中古住宅として販売する場合、住宅ローンの審査に通りにくいという問題が発生します。
現在は超低金利時代と言われていて変動金利の住宅ローンは金利1.0%以下の水準で推移しています。問題がある家をローンで購入する場合は、住宅ローン審査が通常の物件より通りにくく、ほとんどのケースが年利2〜3%ほどの通常の住宅ローンより高い金利での貸付条件になります。
また、古い家を残して大規模リフォームをして長く住み続ける方法もありますが、リフォームローンも同様に金利は通常の住宅ローンより高いです。住宅ローンの問題があり、現金一括で買える人でないと前向きに検討してもらえないため、相場より大幅に安くしないとなかなか売れません。
なお、借地権付き物件の場合も再建築不可物件に比べれば融通はききますが、住宅ローンの審査が通りにくいデメリットがあります。
③借地権付き物件
不動産の権利区分は、大きく分類して所有権と借地権があります。
所有権は、土地と家もしくは専有部分(マンションの場合)が全て自己所有の物件で、一般的な不動産物件です。
借地権は、基本的に建物は自己所有で、土地は借地権という契約の中で第三者から借りている物件です。なお借地権をつけた物件の所有者(地主)が借地料をもらう権利を「底地権」と呼びます。
借地権には複数の種類があり、残存機関や借地権の種類で不動産価値が変わります。ただし、自己所有の土地ではないので、所有権の物件に比べて査定価値は大幅に安くなります。不動産査定では、基本的に建物のみが評価されます。借地権は毎月土地所有者に対して地代を支払う契約になっています。地代費用がその地域の土地相場や面積に対して割安と判断されれば、建物の価値以上の査定結果が出る場合もあります。
借地権の種類の詳細は描きページで解説しています。
借地権つき物件を売るには、地主に承諾料を支払う必要がある
借地権つき物件は、地主の承諾なしに売却や転貸できません。無断で売却や賃貸物件として運用すると、借地権の契約解除になってしまう契約内容が一般的です。借地権が付いている物件を売る場合は、買い手の承諾を得るようにしましょう。
一般的に、無償で物件の譲渡(売却)を認めてくれるケースは少なく、借地権価格の10%ほどの承諾料を支払うのが相場です。例外として将来相続する予定の子供に譲渡する場合は、承諾料が借地権価格の3%ほどにしてもらえるケースが多いです。
地上権であれば、地主の承諾不要なので承諾料不要で家を売却できます。
借地権付き物件を売却する方法
借地権付き物件を売却するには次の4つの方法があります。
■借地権を第三者に売却する
現在借地権で所有している物件を、現在の条件のまま第三者に売却するスタンダートな方法です。
■地主に売却する売却する
底地権を持つ地主が、借地権を買取してくれるケースがあります。なお、地主は借地権付き物件を優先して買い戻せる介入権を持っています。承諾料を払うのであれば、地主と価格交渉をして買い戻してもらった方が手元に残るお金が多くなるケースもあります。地主が買い戻す気がある場合で、価格の折り合いがつかないと、高額な承諾料を提示されて売りたくても売れない状況になってしまうケースもあります。
■地主と協力して借地権と底地権を同時に第三者へ売却する
底地権を持っている地主も、価格の折り合いが付けば売ってしまおうと考えているケースが多いです。借地権契約が残っている底地も売るのが難しい都合があり、地主に売却相談すると、底地権とセットにした売却を前向きに検討してくれる事例も多数あります。購入する第三者は通常の所有権物件を購入するのと同じ権利を得ます。
売却価格の分配は借地権料や建物価値によって決まります。等価交換(借地権の一部と地主の権利(底地)の一部を交換)という方法を取って、借地権者、底地権者で土地や建物を分けあって、それぞれが所有者として売却する方法もあります。ただし等価交換して売る場合は、分筆可能な広い土地でないとメリットがありません。
■借地非訟手続きを経て売却する
地主の承諾がどうしても得られない場合は、裁判所に借地非訟手続きをすることで地主に代わって裁判所が売却の承諾をできます。
しかし、借地非訟手続きを行った場合、地主との関係が悪いことが明確になるので承諾を取って良好な関係で売却するよりも安くなってしまいます。
おわりに
再建築不可、セットバック、借地権など、売却に問題がある家を売るのは難しいです。私もセットバックが大きい実家を売ったときは苦労しました。問題がある物件は住宅ローンが組みにくいので、結果的には隣の家や投資化、業者が買うケースが多いです。私の実家も大手仲介会社の仲介で地域密着型の小規模業者が購入しました。
問題がある物件でもまずは査定を取って、不動産会社の見解を伺い、既存顧客や提携業者に買ってくれる可能性がある人がいないか確認するとよいでしょう。個人に売るのが難しい家は、一括査定を利用して多くの不動産会社から話を聞くメリットが大きいです。