中古住宅として家を売るときは瑕疵担保責任を付けることが一般的です。そのため、トラブルが起こると売り主に大きな負担が発生するリスクがあり、瑕疵保険を付けることをオススメします。
瑕疵保険は5万円~20万円かかりますが、家が売れやすくなるメリットもあります。
ここでは、家を売るときの瑕疵担保責任と瑕疵保険についてまとめました。
瑕疵担保責任と瑕疵保険
瑕疵担保責任とは、売り主が買い主に告知していない瑕疵(家の不具合)が判明した場合に、買主が売主に対して、契約の解除や損害賠償の請求ができる権利です。家を買う人も人生で一番高い買い物になるので、買ってすぐに大きな欠陥を確認出来た場合は保証を求めてきます。
瑕疵担保責任を付けるかは売り主の任意ですが、瑕疵担保責任を付けないと買い手が付きにくく、不動産価値が下がるデメリットがあります。隠れた瑕疵に限られるので、売買契約時に瑕疵の告知を行い、買い主が現状購入に同意していれば売り主は責任を負う必要はありません。
一戸建ての場合は、木造住宅が主でシロアリや雨漏れや柱の腐食で瑕疵担保責任が発生する事例が多いです。一戸建ては外壁や屋根のメンテナンスは自己管理になり、浸水によって柱や壁材が腐食していても気付かずに住み続けて売りに出す方もいます。
瑕疵担保責任の期間
個人が売り主の場合、瑕疵担保責任の期間は自由に設定できます。(不動産会社が売り主の場合は最低2年)。一般的には、建物3ヶ月~6ヶ月、設備7日~14日ほどです。
建物の瑕疵担保は主に基礎や柱、雨漏れ、排水管などです。シロアリ被害が確認されたり、家が傾いていた、雨漏れの判明などが該当する要件です。設備は水回り関係が中心で、水漏れやガス給湯器の故障、トイレやキッチンの不具合などがあります。
瑕疵担保責任は民法によって詳細が決められていますが、不動産売買契約書でルールを明確にしておくこともできます。民法では、その家に住み続ける上で大きな問題が生じている場合は、契約の解除が認められますが、不動産売買契約書の瑕疵担保責任に関する事項に明記があれば、契約書の内容を優先されます。
つまり、瑕疵が発見された場合、不動産売買契約書に記載があるケースであれば契約書の内容通り。記載がなければ民法のルールが適用されます。
新築保証は引き継げる
一般的に、新築で建てた家は施工会社から10年の建物・設備保証が付いてきます。築10年以内の家を売る場合は、新築時の保証を新しい所有者に引き継げる場合もあります。必ず一度、家を買った不動産屋やハウスメーカーに問い合わせをしてみましょう。
しかし、新築保証の引き継ぎをするかは施工会社次第で、居住者が変われば築年数が新しくても保証の終了になるケースが多いです。確認することは大切ですが、過度な期待はいけません。
インスペクションと瑕疵保険に加入して高く売る
インスペクションとは、建物に欠陥(隠れた瑕疵)がないかや、建物の状態を明確にするための第三者機関による検査です。また、瑕疵保険は、検査を受けた建物に対して、欠陥がないと診断された部分の不具合を検査を受けた日から最長5年間まで補償する保険です。
インスペクションと瑕疵保険の費用は、原則、売り主負担になりますが、買い主に安心感を与えられて、引き渡し後の瑕疵担保責任を回避できるメリットがあります。一部では瑕疵担保責任が発生した場合に、売り主の免責金額を設定しているケースもありますが、全般的にインスペクションを受けた家は免責免除特約が付いています。
インスペクションの費用は30坪の建物で5万円~10万円が相場です。瑕疵保険は4万円~8万円が相場で、インスペクションと瑕疵保険をセットで行っている業者であれば、両方合わせて10万円以内に収まるケースがあります。
ただし、昭和56年以前の住宅については、「耐震基準適合証明書」を取得しないと瑕疵保険に入れません。瑕疵保険に入ることは可能ですが、修繕なしで耐震基準適合証明書を取得することは困難です。また、インスペクションの劣化診断を受け、必要な部分の修繕を行わないと瑕疵保険に加入できない場合もあります。
瑕疵保険に加入しなくてもインスペクションだけ受けて、家の状態や必要なリフォーム箇所を提示できれば買い手に安心感を与えられます。
買い手はインスペクションと瑕疵保険を費用以上に高く評価する
私は、インスペクションと瑕疵保険の費用が、2つ合わせて10万円~20万円と聞いてとても安く感じました。家を買おうとしている個人の多くは、インスペクションと瑕疵保険の費用相場を知らないでしょう。
たとえば同じ家でも、通常の引き渡し日から建物3ヶ月、設備7日の瑕疵担保責任だけが付いた条件で2,400万円で売り出した場合と、問題なしと診断されたインスペクションと3年の瑕疵保険が付いた条件で2,500万円で売りに出した場合は、100万円高くてもインスペクションと3年の瑕疵保険付きの方が売れやすいです。
買い手によっては、2,600万円でもインスペクションと瑕疵保険付きの安心感を求めるケースもあるでしょう。10万円~20万円の初期投資が必要になりますが、売る家に費用以上の付加価値を付けられます。
瑕疵保険に入ると築古物件でも住宅ローン減税を受けられることも
住宅ローン減税とは、購入者が10年間に渡り、年度末の住宅ローン残高の1%が所得から控除される制度です。控除される税額は年収や扶養家族など、住宅ローン利用者それぞれの所得税・住民税の税率によって変わってきます。一例として年収600万円、扶養家族が配偶者と子供1人の合計2人、35年ローンで3,500万円の借入をした場合、10年でおよそ250万円の控除(還付)を受けられます。
住宅ローン減税を受けられる家の要件は、床面積が50㎡以上で、築25年以内の耐火建築物(鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの住宅)と、築20年以内の非耐火建築物(木造、軽量鉄骨造などの住宅)です。木造20年、耐火建物25年を超えても、以下の要件を満たすと住宅ローン減税が適用になります。
- 「瑕疵担保保険」に入っている
- 「住宅性能評価書」付きで、一定の耐震評価を満たしている
- 「耐震基準適合証明書」の交付を受けている
昭和56年以降で築20年以上(マンションなどは築25年)の物件は、瑕疵保険を付けるだけで、住宅ローン控除を受けられる可能性が高いです。住宅ローン控除対象をアピールポイントにできれば、ローン購入希望者にとって魅力的な物件になります。
ちなみに私は築22年の木造住宅を購入したときは、不動産仲介会社独自の検査と保証が付いていましたが、瑕疵保険ではないので、そのままでは住宅ローン控除を受けられませんでした。そのため、私(買い主)が5万円ほどの費用を払って耐震基準適合証明書を取得して、住宅ローン控除を受けました。
瑕疵保険に入らない場合でも、そのほかの要件で住宅ローン控除を利用できるかを明確にしておくとよいでしょう。
大手不動産会社の仲介保証を利用する
大手不動産会社の一部では、専任媒介もしくは専属専任媒介での契約を条件に、不動産会社独自の保証で建物の検査と、1~2年の建物・設備保証を付けるサービスを行っています。瑕疵保険とは違い、住宅ローン控除に影響を与えるものではないですが、買い手に安心感を与えて、売り手のリスクを軽減できます。
仲介保証による検査・保証は、専任媒介契約の特典で利用できるので、売り主も費用負担がないメリットがあります。ただし、専任媒介で家を売る場合、不動産会社によっては広告費をかけないで、自社のホームページでの反響に依存するなど、両手取引にこだわった囲い込みの販売活動をされるケースもあります。
また、仲介保証は、仲介会社の両手取引(買い主・売り主双方の仲介を行う)のみ適用される条件です。木造で築20年以内の住宅ローン控除対象物件であれば利用価値が高いですが、築20年を超えて20万円以下の費用で瑕疵保険に加入できるのであれば、仲介保証を利用するより、独自に瑕疵保険に加入した方が売れやすくなります。
インスペクション、瑕疵保険を利用する方法
不動産仲介会社に相談をして、インスペクションと瑕疵保険の手配をしてもらうとよいでしょう。不動産会社によって、紹介される機関が変わり必要な費用が異なります。また、高く売ることに協力的な不動産会社でないと、インスペクションや瑕疵保険の手続きが面倒という理由で、積極的な案内をしてくれない場合もあります。
複数の不動産会社に声をかけて、インスペクション、瑕疵保険についての相談をしてみてください。家を高く売るために重要なツールなので、インスペクションと瑕疵保険の紹介先や知識が豊富な不動産会社は、家を高く売ることに強い可能性があります。
ご自身でインスペクション、瑕疵保険についての情報収集をしたい場合は、以下のサイトをご覧ください。
■インスペクションの検索サービス(インスペクターの検索)
・NPO法人日本ホームインスペクターズ協会
https://www.jshi.org/
・一般社団法人住宅管理ストック推進協会
http://www.jyukan.org/
■国土交通省指定の住宅瑕疵担保責任保険法人一覧
・住宅保証機構
https://www.mamoris.jp/
・住宅あんしん保証
https://www.j-anshin.co.jp/
・日本住宅保証検査機構
http://www.jio-kensa.co.jp/
・ハウスジーメン
https://www.house-gmen.com/
・ハウスプラス住宅保証
http://www.houseplus.co.jp/
おわりに
中古住宅は最低限の保証を付けるのが一般的で、保険に入れば売り主・買い主の双方が安心できます。ただし瑕疵保険やインスペクションは、不動産会社や家を買おうとしている人、売ろうとしている方から認知度が低いもので、家を売る際に不動産会社から一切保険や検査の説明がないケースも珍しくありません。
家を高く売るには購入希望者にとってどれだけ魅力的に条件にできるかがポイントです。瑕疵保険やインスペクションは、家の価値をあげるチャンスだと思います。少なくとも、瑕疵保険とインスペクション付きの中古物件を見て「検査も保証もいらないから20万円安くしてもらった方が嬉しいのに・・・」と思う方は極めて少数です。
是非、瑕疵保険、インスペクションの利用を積極的に検討してみてください。瑕疵保険に入れば売り主側の瑕疵担保責任リスクはなくなります。ただし、瑕疵保険は検査を受けた日が起点になるので、数年単位で長期間家が売れ残ると、保険の付加価値が下がっていくデメリットがあります。