家を売って利益が出ても、マイホームの売却は3,000万円の特別控除があるので、基本的には税金はかからず、確定申告の必要もありません。
損失が出た場合は、住宅ローンが10年以上残っていて、売却価格よりも住宅ローン残高の方が高ければ、ほかの所得と損益通算できる場合があります。
つまり、大半のケースでは、家を売っても納税義務が発生したり、特典を受けることはありません。
ここでは、家を売って益が出た場合、損が出た場合の対応についてまとめました。
家を売って益が出た時、損が出たときの対応
家を売って利益が出たときは、譲渡所得と不動産の所有期間に応じて税金がかかります。居住用の不動産は3,000万円の特別控除があるので、大半のケースでは税金は発生しません。
不動産譲渡所得は、単純に買値から売値を差し引いて計算するのではなく、減価償却を考慮するなど難しい計算式があります。売却価格が3,000万円以上で、利益が出る可能性がある場合は、家を売るときの税金について勉強するとともに、税理士などの専門家に相談してください。
家を売る時の税金とその計算方法
家を売って利益が出たときは、確定申告をして、譲渡所得と税率に応じて課税される住民税と所得税を納税します。また、加入中の健康保険の種類によっては、不動産売却で得た利益も考慮されて、翌年の健康保険料が大幅に高くなるケースもあります。
家を売って損したときは、特定の条件を満たせば「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」もしくは「居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用され、ほかの所得と損益通算ができて、最大で3年間損失を繰り越せます。
ただし、損益通算できるのは、住宅ローンが10年以上残っていて、住宅ローン残高よりも売却価格が安い方と住宅ローンを組んで買換えを行い、3,000万円の特別控除なしで損失が出た方、に限定されます。
家を売って利益が出たとき
利益が出てから納税までの流れ
不動産譲渡所得の税金は、住民税と所得税の2つに分かれます。まずは、家を売った翌年の2月16日〜3月15日までの間に確定申告を行います。
確定申告した時点で所得税が確定して3月15日までに支払いを行います。支払い方法は、口座振替、現金、電子納税、クレジットーカードの4種類です。
(参考:https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/qa/10.htm)
所得税の納税に不安がある方は、納付期限ギリギリではなく、なるべく早めに確定申告をして納税方法について税務署に確認を取っておきましょう。
住民税はその年の6月からの支払いに不動産譲渡所得分が反映されます。住民税を自分で払う場合は、5月頃に税務署から送付された納付書を使って、6月、9月、10月、2月の末日の納付期限までに銀行窓口などで支払います。勤務先が住民税を払ってくれる場合は、6月から12ヶ月に分割して毎月、給料から天引きされます。
家を売って利益が出ると健康保険料が高額になる?
健康保険料は加入団体や種類によって計算方法が異なります。
医療保険は大きく分類して以下の4種類があり保険料の計算方法も異なります。
- 健康保険 → 標準報酬額(月額) × 保険料率
- 共済組合保険 → 標準報酬額(月額) × 保険料率
- 国民健康保険 → 所得割額+均等割額+平均割額+試算割額
- 後期高齢者医療制度 → 所得割額+均等割額
健康保険と共済組合保険は、基本的に勤務先が加入する社会保険です。社会保険に該当する2種類は、標準報酬額をベースに保険料を試算します。つまり、給料(基本給)がベースになるため、家を売って譲渡所得が発生しても考慮されません。
国民健康保険と後期高齢者医療制度の場合は、譲渡所得も反映されるため、家を売って利益が出ると翌年の保険料が高額になります。その他の収入の影響も受け、市区町村ごとで保険料の税率は異なります。健康保険には上限額があるので、所得税や住民税とは違い、一定の基準以上は保険料は上がりません。ちなみに東京23区の場合の国民健康保険上限保険料は89万円です。(平成29年度現在)
国保と後期高齢者医療制度に加入中で利益が出た場合は、確定申告した時の保険料が大幅に高くなる可能性があるので注意しましょう。保険料の確定および納付書の送付は、地域によって若干の違いはありますが、一般的に5月〜6月です。
不動産売却益によって扶養を外れることはあるのか?
健康保険は扶養に入ると安くなります。健康保険で扶養という考え方があるのは社会保険のみです。国民健康保険の場合は扶養家族という概念がありません。社会保険の場合は扶養から外れることがありますが、社会保険ごとのルールによっては、給与所得だけで計算していることもあるので、社会保険なら100%扶養から外れるわけではありません。各団体にご確認ください。
ただし、家を売って特別控除枠を差し引いても利益が出る場合は、翌年だけ扶養から外れて扶養家族の保険料が大幅に高くなる可能性もあるので注意しましょう。
なお、一部のネット情報では、所得税・住民税は3,000万円の特別控除があるけど、健康保険の所得の控除には3,000万円の控除枠が適用されず、税金はかからないけど健康保険料は上がるといった情報がありました。
健康保険料に関することは、宅地建物取引士など不動産関連の資格の参考書には記載がない部分ですが、大手不動産会社の解説ページ等を複数比較した結果、健康保険料についても特別控除が適用されたあとの金額で反映されることが分かりました。
そもそも私が家を売った時には、「家を売っても課税対象にならない条件であれば確定申告する必要ない」と、税務署の担当者から言われました。確定申告しなければ、特別控除枠を考慮せずに計算するための資料そのものがありません。
家を売って損したとき
家を売った時の損失で損益通算するには、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」もしくは「居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」のいずれかが適用されることが条件です。
両方に該当しなければ、家を売って損が出ても何もありません。(不動産売買を事業として行っている場合は除く)
■特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用条件(全て該当が必須)
- 自分が住んでいる住宅もしくは以前住んでいた住宅で住まなくなってから3年目の12月31日以前の住宅を売却すること
- 売却の年の1月1日現在の所有期間が5年を超える住宅
- 売却した家の売買契約書凍結日の前日時点において、その住宅にかかkる償還期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 売却した年とその前年以前3年間にほかの譲渡損失の繰越控除を受けていない
- 繰越控除を受ける年分の合計所得金額3,000万円以下であること
- 売却する年の前年、前々年において「居住用財産3,000万円の特別控除」、「特定居住用財産の買換えの特例」、「居住用財産の軽減税率の特例」の特例を受けていない
- 住宅の売却金額が住宅ローンの残高を下回っていること
■居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(全て該当が必須)
- 自分が住んでいる住宅もしくは以前住んでいた住宅で住まなくなってから3年目の12月31日以前の住宅を売却すること
- 売却の年の1月1日現在の所有期間が5年を超える住宅
- 売却した年とその前年以前3年間にほかの譲渡損失の繰越控除を受けていない
- 譲渡資産を売却した前年1月1日〜翌年12月31日までに日本国内にある買換え資産を購入すること
- 買換え資産の床面積は50平方メートル以上(上限なし)であること
- 買換え資産において取得年の12月31日時点で10年以上の住宅ローン残高があること
- 繰越控除を受ける年分の合計所得金額3,000万円以下であること
- 売却する年の前年、前々年において「居住用財産3,000万円の特別控除」、「特定居住用財産の買換えの特例」、「居住用財産の軽減税率の特例」の特例を受けていない
どちらかに該当する可能性がある場合は、事前に不動産屋の担当営業マンか税理士に確認をして、適用可否の確認しましょう。損益通算ができれば、給与所得などほかの所得で発生した所得税が減額されます。損益通算しきれない分の損失は、翌年以降に繰り越せます。
損失時の損益通算特例は期限付き
平成29年9月現在、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と、居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、平成29年12月31日までの期間が定められています。
ただし、過去に何度も期限が設けられて、期限満了を迎えるごとに延長されてきた経緯があります。平成30年以降も延長される可能性がありますが、現時点で平成29年12月31日までと国税庁からアナウンスされていますので、早めに検討を行い、平成30年以降に売却する場合は国税庁ホームページから最新情報を確認してください。
(参考URL:https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3390.htm)
おわりに
家を売って利益や損失が出ても、ほとんどのケースでは、納税義務や損益通算がありません。私も家を売った経験がありますが、税理士や税務署の担当者に確認をした結果、特に何もありませんでした。
3,000万円の特別控除枠を差し引いても利益が残り課税対象になる場合や、損益通算の特例が使える場合は、売却時期の選定や税金対策の方法によって、税金や健康保険の負担額が大きく変わってくることもあります。
少しでも可能性を感じたら税理士など専門家に相談をして、自分のケースの場合の詳細や、行うべき税金対策や最適な売り時について確認してください。