家を売ると、仲介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。その他にも印紙代や登記費用、その他雑費が発生します。
基本的には家の売却価格に対して3〜4%ほどの費用を差し引かれた金額を受け取れます。
私の体験談も含めて、家を売るときの手数料と値引き情報についてまとめました。
家を売る時にかかる手数料と値引きができるもの
家を売るときの手数料は次のものがあります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消登記費用
- 住所変更費用
- 印紙代
- 測量費用
- 住宅ローン繰り上げ返済事務手数料
- 不用品の家具・家電の処分費用
抵当権抹消登記費用と住所変更費用は、それぞれ印紙代と司法書士の手数料合わせて1万円〜2万円ほどです。印紙代は売買価格に応じて2千円〜8万円です。
測量費用は本測量ができていない場合に必要で、相場は20万円〜50万円、住宅ローン繰り上げ返済費用の相場は3千円前後で、ローン残債が無い場合は不要です。
家を売るときの手数料の大半は、不動産業者への仲介手数料になります。
家を売るときの仲介手数料
不動産取引に関する仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法によって以下のように上限金額が定められています。
売買価格200万円以下:5%
売買価格200万円超え400万円以下:4%+2万円
売買価格400万円超え:3%+6万円
売買価格が400万円超えは全て3%+6万円の手数料になります。
■仲介手数料の一例
売買価格 1,000万円:仲介手数料 36万円
売買価格 1,500万円:仲介手数料 51万円
売買価格 2,000万円:仲介手数料 66万円
売買価格 2,500万円:仲介手数料 81万円
売買価格 3,000万円:仲介手数料 96万円
売買価格 3,500万円:仲介手数料 111万円
売買価格 4,000万円:仲介手数料 126万円
売買価格 4,500万円:仲介手数料 145万円
売買価格 5,000万円:仲介手数料 156万円
売買価格 1億円:仲介手数料 306万円
仲介手数料は上限額が相場
宅地建物取引業法で定められている仲介手数料は上限金額で、法律上は上限以下の値引きした手数料でも問題ありません。しかし全国の不動産業者は、基本的に3%+6万円の上限額を基本料金に設定しています。
不動産売却の仲介は業者側に以下の負担があります。
- 広告掲載(ネット、折込チラシなど)
- 問い合わせ客の対応(内覧案内、商談など)
- 仲介依頼者への定期的な報告、相談業務
不動産業者に依頼した場合、ネットや折込チラシの広告料や掲載料は、全て業者負担するものです。そのほか、人件費や店舗運営費など不動産業者は経費も多いため、法律で定められた上限額の手数料を取っています。
買い手が決まる前の段階から、不動産業者に仲介手数料の値引き交渉を行うと、広告費の削減など販売促進活動が疎かになってしまうリスクが発生します。
家を売るときの仲介手数料が値引きになるケース
仲介手数料が3%+6万円(売買価格400万円超えの場合)より安くなる主な事例は次のものがあります。
- 既存顧客のリピート利用
- 専任媒介契約を条件に値引きする
- 売り出し価格よりも値引き交渉されて、売主は応じないけど、どうしても不動産業者が売りたい場合
- 自己発見取引で不動産業者を噛ませたい場合
大手不動産業者は既存顧客に特典を付ける
私が家を売ったときは、中古住宅の購入でお世話になった不動産業者と2回目の取引だったため、仲介手数料が10%安くなりました。特に私から値引き要求はせず、不動産会社の取り組みで既存顧客はリピート割で一律10%安くしているとのことです。
すべての不動産業者でリピート割を用意しているわけではありません。傾向としては全国展開など複数店舗持っている大手ほど、1割程度のリピート割を行っていることが多いです。
一般媒介と専任媒介で値引き事情が違う
不動産を仲介で売るときは、一般、専任、専属専任の3種類があります。
一般媒介:複数の業者に仲介依頼および自己発見が可能
専任媒介:仲介依頼できる業者は専任依頼した1社のみ。自己発見は可能
専属専任:仲介依頼した業者以外に不動産を売ることが禁止(1社のみの依頼で自己発見もNG)
一般の場合は、不動産業者からしてみれば、複数のライバル業者がいて早く買い手を見つけないと、ほかの業者に取られてしまうリスクがあります。購入希望者から値引交渉が入り、売主が応じなかったときには、不動産業者は仲介手数料の値引きを提示してでも、なんとか成約に結びつけようとしてくるケースが多いです。
専任と専属専任は、ほかの不動産業者が売却の仲介業者になれないため、不動産業者の立場では急いで売る必要がないと判断され、仲介手数料を値引きしてまで売ろうとしません。仲介契約期間は3ヶ月のため、期限切れが近づくと仲介手数料を値引きしてでも早期決着させようとするケースもありますが、一般よりも専任、専属専任の方が不動産業者から仲介手数料の値引き提案されることは少ないです。
仲介契約をする際に、専任もしくは専属専任で契約するなら仲介手数料を安くすると提示してくるケースもありますが、当初から値引きをエサに専任を取ろうとする業者は、契約後にしっかり広告費をかけてくれない可能性があるのでオススメできません。
自己発見であれば仲介手数料無料になることも
自己発見とは、買い手を自分で見つけてくることです。自己発見取引は不動産業者を利用せずに、司法書士や行政書士だけを利用してお金をかけずに不動産を売ることもできます。しかし、不動産業者が入っていないとトラブルに発展するリスクも高く、買い手を見つけているけど、不動産業者を利用して取引するケースもあります。
私の妻の家族は、相続された不動産(空家の中古戸建)を近所の方から直接購入希望者を見つけました。自己発見取引で不動産業者なしで取引することもできましたが、トラブルを避けるため、近くの小規模不動産業者に依頼して、自己発見を理由に仲介手数料無料で家を売りました。依頼を受けた不動産業者は、買い手のみ仲介手数料を受け取ることで仲介業務を引き受けてくれたようです。
このように、すでに買い手の自己発見ができている場合は、仲介手数料を最大100%値引きできます。ただし、自己発見の購入希望者と話をするときに、あらかじめ不動産業者を噛ませて取引したいと了承を取っておく必要があります。
買い手からしてみれば、少しでも安く買いたいため、売り物件を自分で見つけたのであれば、わざわざ不動産業者に仲介手数料を払いたくないと不動産業者を噛ませることに反対されるケースもあります。
仲介手数料以外の手数料相場一覧
家を売るときに不動産業者への仲介手数料以外にかかる手数料や費用の相場情報をまとめました。
抵当権抹消登記費用
抵当権とは、家の担保をかける登記手続きのことで、主に住宅ローンを組む金融機関が設定します。購入時に住宅ローンを組んで、抵当権の抹消手続きが完了していない家を売却するときは、抵当権抹消登記を同時に行う必要があります。
家を売るときの移転登記(家の名義を買い手に変える)は、買い主負担になりますが、抵当権抹消登記費用は売主負担になります。抵当権抹消登記費用は、登録免許税として不動産1個につき1,000円の印紙代がかかります。土地と建物の両方がある戸建住宅の場合、土地と建物でそれぞれ1,000円で合計2,000円の登録免許税がかかります。
別途、登記手続きを代行する行政書士や司法書士の手数料1万円前後がかかります。
住所変更
住所変更費用の相場は1万5千円前後です。
家を売ったときに、すでに新しい住所に引っ越しと住民票の移動が完了している場合は、売主の印鑑証明も新住所のものしか取得できなくなります。
売る家の登記簿謄本上の所有者の住所と、印鑑証明書の住所が違う場合は、買い手に家を引き渡す際に住所変更登記の申請が必要になってきます。住所変更登記が必要になるのは、売主の都合のため司法書士への手続き代行費用を売主が負担することになります。
なお、住民票の移動は転入(引っ越しをして古い家に住まなくなった日)から14日以内に行うように法律で定められています。
印紙代
家を売るときの売買契約書には、取引価格に応じた印紙を貼らないといけません。
印紙代は以下の通りです。
100万円超500万円以下:2,000円
500万円超1,000万円以下:10,000円
1,000万円超5,000万円以下:15,000円
5,000万円超1億円以下:45,000円
1億円超5億円以下:80,000円
契約金額の記載の無いもの:200円
通常は売主と買主で一部ずつ売買契約書を作成し、双方が必要な印紙代を負担します。売買契約書の作成は、売主と買主で合わせて1部でも法律上は問題ありません。
私は家を買ったときは、売主と買主でそれぞれ売買契約書を作成し、印紙代を100%負担しました。家を売ったときは買主が不動産業者だったこともあり、売買契約書は1部の作成で私はコピーを受け取り、印紙代は買主と折半にしました。
測量費用
売却物件が本測量をできていない場合は、売却時に測量を求められるケースがあります。測量費用の負担に法律のルールはなく、測量をしないまま売ることもできますが、それでは買い手が納得してくれません。不動産業界の傾向として、測量費用は売主が負担するのが一般的とされています。
私が家を売った際の測量費用は約24万円でした。相場は25万円〜40万円ほどで、以下の条件があるとより高額になる可能性があります。
- 市有地・国有地に面している等
- 土地の形が複雑
- 土地が広い
- 近隣と紛争が発生している土地
家を売るときは、事前に本測量された実績があるか調べ、不動産業者に測量費用の目安や注意点を確認しておきましょう。近隣と紛争が発生して交渉が長期化すると、境界交渉に1年以上かかり、売買契約そのものが流れてしまうケースもあります。
住宅ローン繰り上げ返済事務手数料
住宅ローン残債がある場合のみ必要になります。
住宅ローン繰り上げ返済事務手数料は金融機関ごとに設定できますが、一般的には3,240円(税込)です。
不用品の家具・家電の処分費用
家を売るときは、引き渡しまでに、家の中を家具・家電(建付家具を除く)を含めて空っぽにしないといけません。荷物が多い場合は処分業者を利用することになります。家の大きさや不用品の量にもよりますが、通常の業者に依頼した場合の相場は20万円〜30万円です。
市の委託でゴミ収集を行っている公社に相談すると、安く対応してもらえる場合があります。(私も利用しました)
古家付きの土地として売却し、買主が家を解体することを決めている場合は、事前に相談して買主もしくは買主が依頼する解体業者にお金を渡して、安く処分してもらえる場合もあります。
おわりに
家を売るときの手数料は、必ずかかるものも多く、司法書士に依頼する手続きなど、手数料をケチって自分で行うとトラブルに発展するものもあります。ある程度は不動産業者に任せて、売却を進めるといいでしょう。不安があれば仲介を依頼する時点で、売る時にかかる概算費用を出してもらうとよいでしょう。
値引き余地があるのは仲介手数料ですが、売主から過剰に値引き交渉すると、不動産業者に広告費をケチられるなど、サービス品質が下がる可能性があります。「3%+6万円」は必ず払うものだと思って、仲介手数料の値引きよりも、希望価格で買い手を見つけることを熱心に取り組んでくれる業者を選ぶことが大切です。
ちなみに、不動産業者から仲介手数料の値引きを提案してくる場合も、広告費をかけずに専任契約を取ろうとしていたり、実績作りのため、強引に安い条件で成約させようといった思惑がある場合もあるので注意しましょう。
仲介手数料以外の費用では、測量費用が高額になりやすいので、売りに出す前に不動産業者に相談して本測量の必要性と概算相場を確認しておくとよいでしょう。