
私は2016年1月に築55年の実家を売却しました。
税金や確定申告が必要かと思っていましたが、売った家の購入価格よりも売却価格の方が安かったため、税金は一切かからず、確定申告も必要ありませんでした。
家を売るときの税金について調べてみましたが、ネットの既存情報は、解説サイトによって言っていることが違うことも多々あり、非常に分かりにくかったです。
宅地建物取引士の参考書も調べましたが、計算式の紹介はあるものの、税金がかかる基準についての記載がなく、私が抱いていた疑問については解消されませんでした。
ここでは、私なりに、家を売る税金と計算方法について調べた結果をまとめました。
なお、実際に家を売る場合は、仲介や買取を依頼する不動産会社や、税理士などの専門家に相談をして、最終的には税務署の確認を取って対応してください。
税金が発生する基準を全力で調べてみた
家を売って利益が出た場合は、譲渡所得に対して住民税と所得税がかかります。税率は家を売った不動産の所有期間によって異なります。
ただし、居住用などマイホームを売った場合は3,000万円の控除枠があるので、大半のケースは非課税になります。
譲渡所得の計算方法
私は譲渡所得の計算方法について、大手不動産会社監修のWEBページや、宅地建物取引士の参考書などで調べましたが、正直あまり理解ができませんでした。計算式は難しいことはないのですが、理屈や根本的なルールの一部が、ネットでは間違った情報がとても多いです。
私の調べた結果、譲渡所得の計算のポイントをまとめると、以下のようになります。
- 個人の居住用物件の売却は、譲渡所得について3,000万円の特別控除枠があるので、3,000万円以下の売却価格であれば、税金はかからない(事業用物件は除く)
- 売却物件の居住期間が、5年以内、5年超え、10年以上で譲渡所得に対する税率が変わる
- 買値よりも安く売れた場合でも、譲渡所得がかかる可能性がある
個人の居住用物件は3,000万円の控除枠があるので、税金がかかるケースは非常に少ないです。3,000万円以上で売却できた場合には、その地域の不動産相場が大幅に上がった場合や、建物が古いのに売却価格は高値が付いた高額売却成功時は譲渡所得が発生しやすいです。
税金がかからない人が多い一方で、大きな利益を出すと、譲渡所得に対して最大39.63%の税率で所得税と住民税が発生します。たとえば控除枠を差し引いて譲渡所得が1,000万円になった場合、居住期間が5年以下であれば400万円近くを税金で徴収されてしまいます。
譲渡所得税額=課税譲渡所得②×税率(住民税・所得税)
課税譲渡所得②=譲渡収入金額(売却価格)-(取得費③+譲渡費用)-特別控除(居住用の3,000万円特別控除の特例等)
取得費(概算法)③=相続で引き継いだ古い物件など取得費がかからない場合(※)もしくは昭和27年12月31日以前から所有していた住宅・土地を売却した場合は譲渡収入金額の5%
取得費(実額法)③=建物購入代金 × 0.9 × 償却率④ × 経過年数
※昭和28年1月1日以降に取得した住宅・土地を売却する場合で、取得価格不明の場合の原則は原則法ですが、国税庁や一般財団法人日本不動産研究所など概算法よりも効率的な計算方法があれば代用可能(概算法が強制ではない)
法定耐用年数表(定額法)による非事業用不動産の償却率④
・木造=耐用年数33年、償却率0.0.31
・軽量鉄骨=耐用年数40年、償却率0.025
・鉄筋コンクリート造=耐用年数70年 償却率0.015
長期譲渡所得(所有期間5年超え) = 20.315%((所得税15.315%・住民税5%)
長期譲渡所得(10年超所有軽減税率の特例) = 課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%・住民税4%)/課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%)
短期譲渡所得(所有期間5年以下) = 39.63%(所得税30.63%・住民税9%)
所有期間は不動産を売った時の1月1日現在の時点に計算されます。
減価償却の考え方
私は不動産譲渡所得税についてのルールや計算式を勉強した中で、取得費に減価償却が絡んだ時点で理解できなくなりました。償却費が考慮される理由は、家に住んだ分、建物を古くなったのだから取得した当時よりも価値が低くなるという概念です。
例えば5,000万円で新築を購入して、買値と同じ5,000万円で売れたとします。この場合、差し引きゼロではなく、居住した年数に応じて建物を減価償却しているから、その分は利益が出ているということになります。つまり、取得期間が長くて古い家ほど、減価償却が進むので、取得費を安く計算しないといけません。
なお、取得費が売ったお金の5%を切った時は、一律5%で計算を行います。同様に相続など古い家で取得した金額が不明の場合も、取得費は5%で計算を行い、平成27年12月以前に取得していた場合は例外なく5%になります。
たとえば4,000万円で家を売って取得費を5%で計算した場合、課税譲渡所得は次の計算になります。
課税譲渡所得=4,000万円(譲渡収入金額)-200万円(4,000万円の5%の取得費)-3,000万円(特別控除)=800万円
しかし、減価償却については建物のみが対象になるため、この計算も実は正しくないケースがあり注意が必要です。土地の価値が取得時と変わっていないのであれば、償却率は建物の建築価格を基準に計算することになるので、3,000万円以上で売れても、非課税になる可能性が高いです。
減価償却費を含めて不動産譲渡所得税の概念をまとめると、以下のようになります。
- 売却価格3,000万円以下なら、居住用物件の3,000万円控除があるので基本的に非課税
- 売却価格から土地相当価格を差し引いた金額が3,000万円以下なら、減価償却が大きくても土地としての利益が大きくなければ非課税になる可能性が高い
- 土地と減価償却を考慮した建物の合計利益が3,000万円を超えると不動産譲渡所得税がかかる
譲渡所得に算入できる経費
不動産譲所得の計算は、取得時や売却時にかかる経費も計上可能です。単純に土地、建物の取引価格だけで計算を行いません。
譲渡所得に算入できる経費は以下のものがあります。
■所得費に算入できる経費
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙代
- 登記費用および司法書士への報酬
※基本的には、購入時に払った総額から、ローン関連の費用、火災保険費用を差し引いた額)
■譲渡費用に算入できる経費
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙代
- 登記費用および司法書士への報酬(売り主負担で行った場合は全額、買い主負担で登記する場合は売り主側の負担分は抵当権抹消費用など)
- 引き渡しのための転居費用、クリーニング費用など
- 売るために行ったリフォーム費用(居住中に行ったリフォームは、減価償却分を差し引いて取得費に計上可能なケースもあり)
- 測量費用
- その他、家を売る(引き渡し)するためにかかった費用
家を売って儲かったときの納税の流れ
家を売って利益が出ると、翌年の所得税と住民税が課税対象になります。確定申告を行い税率が確定すると、驚くような税金が発生したというケースもあります。大きな利益が出た場合は、翌年の税金を払い終わるまでは、相応の現金を手元に残しておきましょう。
また、家を売って利益が出ると、健康保険料が上がるケースもあります。さらに、損した場合は住宅ローン残高より売却価格が安くなり、さらに特定の条件を満たせば、損失を給与所得などほかの所得に損益通算で差し引ける場合もあります。
家を売って利益が出た方と、住宅ローン残高が多く、不足額の負担をして家を売った方はコチラのページをご覧ください。
家を売って益が出た場合、損が出た場合
おわりに
家を売るときの税金の計算はなかなか難しいのですが、私が家を売ったときに各種専門家や税務署担当者から言われた内容は以下の通りです。
- 不動産仲介会社の営業マン(宅建保持者) → 買ったときより安い価格なら税金はかからない
- 不動産仲介会社が主催した税務相談会で担当してくれた税理士 → 買ったときより安い価格なら税金はかからない
- 確定申告時に担当してくれた税務署の担当者 → 家を売って利益が出てないのであれば確定申告しなくていい
マイホームの売却は3,000万円の控除枠もあるので、一般的な家の場合、課税対象になる方は少ないと思います。不動産会社、税理士、税務署の方の反応を見ても、ほとんどのケースで家を売っても税金がかからないということで間違いなさそうです。少なくとも、3,000万円以下で売れた家は、税金のことは心配ないでしょう。
譲渡所得が発生する場合は、償却率など難しい計算式もあり、素人が課税額を独自に計算して把握することは困難です。念のため、売却価格3,000万円を大きく超える金額で、土地と建物を合わせた利益が3,000万円を超える可能性が少しでもあれば、事前に税理士などの専門家に相談しておくことが必要です。