ブルさんブルさん

私は外壁塗装の手抜き工事と聞いて、雑な作業など低品質な施工をイメージしていました。

しかし、外壁塗装の悪徳業者の手口を調べた所、塗料をごまかしたり、必要な作業工程を省くなど詐欺まがいの行為も行われている事を知りました。

全国の外壁塗装を巡るトラブル事例を調べたなかで、特に多い手抜き工事の手口と防衛策を紹介します。

よくある手抜き工事トップ5とその防衛策


外壁塗装の手抜き工事の手法ベスト5は次のとおりです。

1位:塗り回数をごまかす
2位:塗料をごまかす
3位:下地処理が不十分
4位:付帯物塗装を怠る
5位:手直しをしっかり行わない

①塗り回数をごまかす

外壁塗装は一般的に下塗り、中塗り、上塗りの3回に分けて塗装を行います。見積や打ち合わせでは3回塗ると言いながら、実際には1回か2回しか塗らず、中塗りや下塗りの工程を省く不正行為があります。

3回塗るのは、外壁を美しく長持ちさせるために必要な事です。

塗り回数をごまかされると、塗った直後は違いが分からなくても、本来は10年以上持つ塗料が2〜3年で色あせたり、ひび割れや雨漏りのトラブルを起こす場合があります。

塗り回数をごまかされない防衛策

塗り回数をごまかされないためには、打ち合わせ段階で下塗り、中塗り、上塗りの、それぞれの塗装工程の写真を提出してもらうようにお願いしましょう。通常は上塗りと中塗りは同じ塗料を使いますが、違いを明確にするために中塗りと上塗りの色を少し変えてもらうと明確に3度塗りしているか確認できます。

優良業者はお客から指示されなくても中塗りと上塗りの色を変えて施工しています。白系や薄い色の場合、下塗りの色を大幅に変える事は難しいです。中塗りと上塗りの色が同じだと、塗り忘れがあってもごまかせますが、色を変える事で細部までしっかり塗らないと綺麗に仕上がらなくなります。

業者や職人によっては、細かい事まで口を出したり作業を難しくさせる指示を出すと、嫌な顔をされる事もありますが、外壁塗装の手抜き工事は数十万円〜数百万円相当の損失に値します。塗り回数をごまかす手抜きが多い業界事情を理解して、シビアに業者と向き合うようにしましょう。

②塗料をごまかす

塗料のごまかし方は大きく次の2つの方法があります。

  • 安い(グレードの低い)塗料に差し替える
  • 必要以上に薄めて使用する

塗料のごまかしによる手抜き工事が多いのは、塗料のグレードが低かったり、必要以上に薄めた塗料を使っても、塗りたての仕上がりに差が出ないからです。プロが見ても、塗りたての外壁を見て、良い塗料を適性な濃度で使っていたか見極めるのは困難です。

また、打ち合わせで塗料の種類を決めても、実際に施工現場で同じ塗料を正しく使っているか確認する方がほとんどいません。つまり、塗料をごまかす不正行為は、お客にバレにくいです。塗料をごまかすと、塗料コストが浮いて業者の利益が増えます。

塗りたては差がなくても、安い塗料や規定以上に薄められた塗料では、耐用年数が短くなってしまいます。

塗料のごまかし行為の防衛策

塗料ごまかし行為の防衛策は次の方法があります。

  • 見積書に塗料の品番まで記載されているかチェックする
  • 使用する前の塗料の缶の写真を撮って提出するように求める
  • 一つの缶でどれだけ薄めて使用して、どのくらいの面積を塗れるのか確認する

塗料のごまかし行為は、施工後では何も防衛策を取る事ができません。数年後に本来の耐用年数よりも早く劣化が始まっても、業者は環境のせいにして不正行為を認めようとしません。

塗料のごまかしを防ぐには、見積や打ち合わせの段階で知識があるお客や、細かいお客という印象を業者に与える事が効果的です。細かく作業工程をチェックする姿勢や、不正行為に対して疑いの目がある事をアピールできれば、普段は悪質な手抜き工事をしている業者でも、危機感を持って正しい施工をしてくれます。

つまり、正しい知識や、完全に手抜き工事を防ぐだけの防衛網を持って、業者を監視しなくても、ある程度うるさくて細かいお客だと思ってもらえれば、手抜き工事の被害リスクが大幅に軽減されます。

③下地処理が不十分

外壁塗装は、どれだけ良い塗料を丁寧に塗っても、下地処理が正しくできていなければ、塗料の効果が落ちます。

特にヒビ割れの処理は、正しくノンブリードタイプのコーキング剤を使って処理をしないと、1年ほど経過するとミミズ跡のような「ブリード」と呼ばれるヒビ割れ跡が浮き上がる現象がおきます。

下地処理は、要所には手間暇をかけて丁寧な作業をする必要があります。悪質業者や腕が悪い業者は、下地処理が不十分のため、塗装後の劣化が早くなってしまいます。

丁寧な下地処理をする業者の見極め方

下地処理が不十分な手抜き工事は、業者が悪意を持って手を抜いているケースよりも、業者自体の腕や知識が不足している場合の方が多いです。

たとえば、ひび割れの補修には、ブリード現象を防止するノンブリードタイプのコーキング剤を使わないといけません。しかし、ノンブリードの存在を知らない業者も多いのが現状です。

正しい下地処理をしてくれる業者を見極める時は、「他の家の外壁にミミズ跡のような物が出ているのは何故ですか?」と聞いてみましょう。ブリードの事を説明してくれる業者であれば信頼できますが、「自然現象」と回答された場合はその業者は正しい知識を持っていません。

また、ミミズ跡の話を切り出したり、ブリードの説明をしてもらう事で、「このお客は正しい下地処理を行わないとクレームになる」と、業者側に危機感を与える事ができます。

④付帯物塗装をサボる

私は前回外壁塗装をした時は、予備知識が非常に少なかったです。外壁塗装は依頼した屋根と外壁だけ塗ってもらえる物だと思ってましたが、雨といや、排水管などの付帯物の塗装もしてもらえて、こんな事までやってもらえるのだと感心しました。

しかし、後から調べて分かった事ですが、外壁塗装はこうした付帯物塗装も重要な工程で、正しく付帯物塗装をしてもらわないと、家が傷むのが早くなってしまいます。こうした付帯物塗装は、手間がかかり私のようにお客が目を向けない部分でもあります。

本来は鉄の部分はペーパーヤスリで漂着物を綺麗にしたり、傷んだ木材部は下塗りを入れて3度塗りをするなどの基本工程があります。悪質な手抜き工事をする業者は付帯物塗装全てをやらない事は少ないですが、ペーパー掛けや重ね塗りの工程を省いています。

木やプラスチックなどの付帯物は、外壁よりも早く傷みが出て劣化が始まるものなので、優良業者は外壁よりも手間をかけて付帯物塗装を行っています。

付帯物塗装を疎かにされない防衛策

付帯物塗装をしっかり行ってもらうには、打ち合わせの段階で付帯物塗装についての話をしっかりする事です。木部は何度塗りするかや、付帯物で使う塗料などを事前に確認しておきましょう。

また、見積もりでは付帯物塗装についての記載を確認し、どこまでの作業が含まれているかを確認しておきましょう。付帯物塗装についての話をお客側からする事で、サボるなどの手抜き工事を防げます。

仕上げのチェック時も付帯物がしっかり塗装されているのかチェックしましょう。

⑤手直しをしっかりしない

どれだけ腕が良くて経験が長いベテラン塗装職人でも、数百平米の外壁と屋根を一発で完璧に塗り上げるのは難しい事です。そのため、外壁塗装は全ての作業が終わってから、再度確認をしてムラや作業が荒い部分があれば、手直しをして最後の仕上げを行います。

外壁塗装は、一度作業をした後でも手直しで不備や見栄えを修正する事ができます。しかし状況によっては手直しに手間と時間がかかり、作業を省略してしまう悪徳業者もいます。

手直しをしっかりさせる防衛策

手直しは塗装工程の一番最後の仕上げ作業です。手直しの工程を手抜きされるのは、塗装工事の期間で「このお客なら適当な仕事をしても平気」と思われている可能性があります。

打ち合わせや作業途中の確認作業などで、細かくしっかりしたお客という印象を与えれば、丁寧な手直しの作業をしてもらえます。

また、塗装期間の中で1日か2日でもいいので、職人の目の見える所で、塗装の状態を確認するようにしましょう。

手抜き工事の業界用語

外壁塗装などリフォームの現場では「消せ!消せ!」と話をしている場合があります。「消せ」という言葉は業界の隠語で「工程を省け」という意味を持っています。もし工事中に消せといった言葉が聞こえてきたら、表に出ていって監視をするなどの対処が必要です。

しかし、工事が始まってから消せという言葉が聞こえて防衛策を取ろうとしても、効果的な方法がありません。

手抜き工事が慢性化している悪徳業者に引っかからないように、防衛策を取る事と同時に打ち合わせの段階で、手抜き工事をしない信頼できる業者を見極める事の方が大切です。

おわりに

外壁塗装の手抜き工事は、打ち合わせをしっかり行えば防衛できる事が分かりました。また、一部では職人に悪気はなくても技術力や経験の不足によって、不十分な施工になってしまう事もあります。

私は前回外壁塗装をした時は、営業や職人に対して良いお客だと思われたいという思いから、細かい事をあまり言いませんでした。しかし、数百万円単位の大きな工事だからこそ、心を鬼にして手抜き工事をさせないようなシビアな対応が求められる事が分かりました。

次回外壁塗装をする時は、知っている事でもわざと細かい質問を繰り返したり、塗装工程の写真提出を求めるなどの対処をしようと思います。