車の車検はまとまった出費が出る一大イベントです。
ディーラーに入庫すれば信頼性が高くてサービスが手厚いけど車検費用が高額になる。
ガソリンスタンドなど安さを売りにした業者であれば、車検費用は安いけど、なんとなく心配。
こんな感じで、どちらを選ぶべきか迷っている方も多いでしょう。
私もそんな1人で、愛車が初回車検を迎えることになり、車検を利用する業者で悩んでいます。
そこで、ディーラーと車検に強いガソリンスタンドで実際に見積を取り、知人で元新車ディーラーの営業マンの方に相談してみました。
現役のディーラー勤務ではなく、元ディーラー社員ということもあって、ディーラー車検の良い所と悪い所を包み隠さず教えて頂きました。
車検の入庫先で迷っている方や、新車からの初回車検を迎える方に役立つ情報が盛り沢山なので、是非参考にしてください。
車検の見積書を比較する

早速ですが、ディーラーと車検に強いガソリンスタンドで実際に車を見せて車検見積を取ってきました。
見積書を比較すると値段が結構変わりますが、どちらが良いですかね?
車種 | トヨタ・シエンタ |
---|---|
経年数 | 新車から3年目の初回車検 |
走行距離 | 15,000km |
ディーラー車検見積もり1/2
ディーラー車検見積もり2/2
スタンド車検の見積もり1/1

ディーラーは144,764円、スタンド(車検センター)は70,905円の見積結果ですね。
総額を見ると2倍以上の差がありますが、ディーラーの車検見積は車検後のメンテナンスパックと保証オプションが含まれています。
ディーラーの純粋な車検のみ(メンテパック・保証オプションを抜いた場合)だと112,264円なので、約4万円の差です。
また、ディーラーの車検見積は交換する部品の領域がスタンドの7万円の見積より多いので、一概にディーラー車検は4万円高いと言い切ることはできません。
見積の内容を元に、内訳を分かりやすくまとめました。
ディーラー車検 | ガソリンスタンド(車検センター) | |
---|---|---|
法定費用 | 合計:42,030円 (内訳) 重量税:15,000円 自賠責保険料:25,830円 印紙代:1,200円 |
|
代行手数料 | 5,302円 | 9,800円 |
検査料 | 11,660円 | 8,800円 |
法定24ヶ月点検 | 14,410円 | 10,000円 |
消耗品交換 | 合計:38,840円 (内訳) クーラント:2,750円 ブレーキオイル:3,289円 エンジンオイル:2,493円 オイルエレメント:1,925円 エアフィルタ:8,030円 わさびデエール:2,598円 ブレーキ回りメンテ:3,850円 エンジンルーム洗浄:550円 オイル添加剤:6,380円 ガソリン添加剤:3,080円 撥水あわコート:1,080円 トランスミッタバッテリ:1,000円 リアワイパー:1,815円 エアコン除菌・消臭:0円 |
合計:11,750円 (内訳) ショートパーツ:1,000円 ブレーキオイル:4,000円 エンジンオイル:6,750円 オイルエレメント:0円 ブラッシング:0円 車内除菌:0円 |
特別値引き | なし(各項目ごとの値引きを上記に算入) | ▲9,800円 |
メンテパック | 26,000円 | なし |
保証 | 6,500円 | なし |
合計 | 144,764円 | 70,905円 |

法定費用については必ず発生する費用なので、どこに車検を出しても金額は同じです。
代行手数料や検査料は業者側の利益になる部分で、車検業者によって金額設定が異なります。
仮にディーラー車検でも、消耗品交換を一切行わずに車検と法定点検のみにした場合、73,402円になる計算です。
ガソリンスタンドと同じ消耗品交換をした場合、ブラッシングや車内除菌を除けば差額は1万円前後といった所でしょう。
ディーラーの場合は極端に交換する消耗品を全て削る要望を出すと嫌な顔をされるかもしれませんが・・・
ディーラー車検の見積からエアフィルタと添加剤、リアワイパー、エンジンルーム洗浄を外せば2万円近く安くなるので、同様の内容に合わせた場合の差額は2万円前後になります。
項目を削ると割引の内容が変わる恐れもあるので、内容を見直してディーラー車検をしたい場合は、再度しっかり話を聞いてみてくださいね。

なるほど。項目別に分けてもらったことで、見積書の比較が分かりやすくなりました。
見積を見た正直な印象はどうですか?

見積を取ったディーラーとガソリンスタンドはどちらも良心的な業者だと思いますよ。
私が勤務していたディーラーは代行手数料で約1万円。初期見積の段階では車体下部洗浄で1万円ほどの料金を入れていました。
ガソリンスタンドは最安水準ですね。おそらく、どこの車検業者に相談しても大幅に安くなることはないと思います。
見積を見る限りは、どちらもおすすめできる業者です!
メーカー保証について

今回は新車からの初回車検ですよね。
国産の乗用車は新車から3年もしくは6万kmまで一般保証が付きます。もしディーラー以外に車検を出すなら日程にゆとりを持って車検を受けてください。
ちなみに、新車保証は3年・6万kmの一般保証と5年・10万kmの特別保証の2種類があり、ディーラー車検を受けなくても保証は継続されます。
一般保証をざっくりまとめると消耗品以外の全てのもの。特別保証はエンジンや足回りなど車を動かす主要な部分の保証です。

もし悪い所があればディーラー車検のみメーカー保証で直してもらえるということですか?

いいえ。車検や整備の入庫先を問わずメーカー保証を受けることができます。ただし、保証修理をできるのはディーラーのみです。
仮にスタンドなどディーラー以外の業者に車検を出した場合、法定24ヶ月点検を通じて悪い所を発見したら、ディーラーに連絡を入れて保証修理を受ける流れになります。
一般保証は車検満了日で切れてしまうので、期日ギリギリにディーラー以外の業者に出すと、日程的な問題で保証を受けられなくなる恐れがあるので注意してください。
懸念しないといけないのは、スタンドなど安く車検をやる所は、大きな不具合がない限りは軽微な不具合をスルーされることがあります。
たとえば走行に一切影響を与えないゴムパーツに僅かな亀裂が入っていた場合、ディーラーであれば保証修理で交換。安い民間車検業者はそのまま車検を通してしまうことが多いです。
メーカー保証のある初回車検に限定して言えば、ディーラー車検を受ける価値は大きいと思います。

今回はディーラーで車を見せて車検見積をして、大きな不具合がないとのことで見積提示をしてもらいました。
車検に出して追加費用や新たなに保証修理する不具合が見つかる可能性はあるのですか?

現在乗っていて自覚できる不具合がなく、直近で車を見せた車検見積をしている場合、保証修理に発展する可能性は極めて低いです。
なお、車検見積では主要な消耗品の交換状況を確認しているので、追加費用が発生することは滅多にありません。
車検の見積で行う簡易検査と法定24ヶ月点検は見る項目や車をバラす範囲が変わってくるので、稀に車検整備(法定点検)を通じて不具合を発見することもありますが、確率は1%未満です。
ちなみに、直近でディーラーに点検をしてもらったのはいつ頃ですか?

ざっと1年半位前です。

なるほど。正直微妙ですね。
新車購入後の無料点検以降に点検を受けてないのであれば「保証の終わるタイミングなので一度ディーラーに整備してもらった方がいいのではないですか?」
メンテパックなどで半年ごとの点検を受けているのであれば「不具合のある可能性は低いので、安いスタンドの車検でも十分だと思います」
このように回答できる所なのですが・・・
いずれにしてもディーラー車検は信頼の面で付加価値を払うものなので、そこに価値を感じるかどうかが車検選びのポイントです。
可能性は極めて低いですが、ディーラー車検を選んだことで、スタンドの車検では受けられなかった保証修理を受けられる可能性が多少あります。
そこを保険だと思って付加価値としての費用を払えるかが一番のポイントですね。
そのほか気になることを色々聞いてみた

ディーラーの整備士とガソリンスタンドの整備士は整備の品質で差が出ますか?

見積を出した2社の中でディーラーの方が絶対に整備士の腕が良いと断言することはできませんが、一般的にディーラーの方が新卒で優秀な人材が入ってきます。
また、難しい整備を多数こなす機会が多いので、整備士のスキルはディーラーの方が優れている可能性が高いです。
ただし、今回は新しい車の初回車検で、最低限の点検と消耗品交換する内容なので、担当する整備士の腕で将来的な不具合リスクが変わることはないでしょう。

交換する消耗品の質は変わりますか?

メーカーは基本的に全て純正部品を扱っています。
エンジンオイルで見れば、メーカーが車に最適化するように専用開発したものになりますが、ガソリンスタンドで扱う社外品のオイルと大きな差が出ることはありません。
価値観の違いにはなりますが、私の個人的な見解で言えばディーラーの扱う消耗部品にこだわる必要性は低いです。

ディーラーの見積のみに入っている消耗品交換の必要性はどうですか?

私は営業マンで整備士ではないので確かなことは言えませんが、単価の大きなエアフィルターについては、3年で1万5千kmなら交換しなくてもOKだと思います。
ただし、少なからず摩耗やホコリが溜まっているはずなので、交換しておいて損はない部品です。
添加剤は割高ですね。添加剤は定期的に入れることが望ましいので、これまで添加剤を入れていない(強いこだわりがない)のであれば、入れなくてもいいと思います。
リアワイパーのみ見積に入っているのは、亀裂が入っているなどの不具合があったからでしょう。リアワイパーは日常的に使う機会が多いかによって変わります。
わさびデエールはエアコン消臭剤なので、車内の臭い対策にどう向き合うかが重要。部品量販店で売っているエアコン消臭グッズの方がコスパは良いです。
トランスミッタバッテリはカギの電池交換で一般的な寿命は5年前後です。今、交換しておけば電池切れのリスクを軽減できますが、走行距離を考えると次の車検でもいい気がします。
短い距離を頻繁に乗るなど、キーレスを使う頻度が多いのであれば交換する価値が大きいです。
クーラントについては、3年間変えていないのであれば金額的にも交換することがおすすめ。ただし、交換しなくても次の車検までに不具合の出る可能性は低いです。

メンテパックは必要ですか?

詳細プランを見ていないのですが、おそらく半年ごとの点検とオイル交換などがセットになったプランだと思います。
パッケージングの内容通りに点検とオイル交換をすればメンテパックの方が大幅にお得ですが、今まで半年毎の点検を受けていなかったのであれば、走行距離を考慮しても付けなくていいと思います。
今後は小まめに点検を受けたいと思っているのであれば、積極的に検討してみてください。

「保証がつくしプラン」は必要ですか?

https://toyota.jp/after_service/syaken/hosho/
公式サイトより勉強させて頂きました。
次の車検までの2年保証がついて+6,500円は安いと思います。
ただし、安いだけあって保証修理を受ける場合は免責があるのですね。
延長保証は保険のようなものなので、加入するかどうかは価値観次第だと思います。
私の見解は走行距離も少ないし、強くお奨めするものではないです。ちなみに新車でも壊れることがあるのでメーカーは保証を付けています。
走行距離が少なければ故障しないと言い切ることはできません。
延長保証を希望するならディーラー車検を受けるべきですね。

安い業者で車検を出すと売る時の査定価格に影響が出ますか?

査定時は車検の残存期間と車の状態(消耗品の摩耗状態や不具合など)を考慮するので、どこで車検を受けていても売る時の値段は変わりません。
例外として、車検を通してから早い段階で個人売買での売却をするのであれば、ディーラー車検を受けて直近でディーラーによる点検整備を受けたことをアピールすれば売りやすくなります。

そのほかに比較するポイントはありますか?

あくまでも見積と整備業者名(看板)を見た印象ですが、ディーラーは指定工場。ガソリンスタンドは認証工場の可能性が高いです。
指定工場は工場内で車検の検査ラインを通すことが可能。認証工場は陸運局に車両を持ち込んで検査ラインを受ける流れです。
一概に指定工場の方がいいとは言い切れませんが、持込車検をする認証工場は陸運局まで自走するので、立地によっては車検に出すとガソリンが減った状態で戻ってきます。
ガソリン代の差は大きくても数千円程度ですが、認証工場に比べて指定工場の方がお得です。
また、整備内容と業者のスタイルから朝預けて夕方以降にできあがる一日車検が可能。スピード車検のように待っている間の数時間で終わらせることは難しいと思います。
ディーラーであれば、無料で納車・引き取りと代車の用意をしてくれる可能性が高いです。
ガソリンスタンドでも同様のサービスを付けてくれる可能性もあるので、代車や引き取りを希望する場合は事前に確認した上で比較検討してください。
多忙な場合は、車検に出す手間を考慮することも大切です。

最後にブルさん(元ディーラー社員)は愛車の車検をどうしていますか?

私の場合は同級生が独立をして整備工場を経営しているので、現在はそこで車検など整備全般をお願いしています。
ちなみに、車検代金は見積をもらったガソリンスタンドより若干高いですよ。
友人との付き合いだけではなく、ディーラーよりも安くて何かあればクレーム対応をしっかりしてくれることが、同級生の工場を使っている決め手です。
場所が近ければ、そこを紹介したい所ですが残念です。
車のことが詳しくなくて、初回車検ということもあるので、ガソリンスタンドの車検に少しでも不安があればディーラー車検を利用するのが無難だと思います。
消耗品やメンテパックの有無を見直した上で、金額を見ながら比較してみてください。
車検費用を節約したいのであれば、ガソリンスタンドを利用するべきです。
車の故障リスクは運の要素もあるので一概に言い切ることはできませんが、年式と少ない走行距離を考えると、スタンドで最低限の内容に済ませても次の車検までに不具合が発生する確率は低いです。
もし私が相談された地域で見積を出した2社から選ぶのであれば、ガソリンスタンドを選びます。

とても参考になりました。ありがとうございます。

2回目(5年目)以降の車検になるとタイヤやバッテリーをはじめ消耗品交換の必要性が高まり、車検の入庫先選びのポイントがまた変わってきます。
その際は、また相談してください。
まとめ
今回のケースで見た車検の入庫先選びのポイントをまとめると、
- 車検は無料見積をしている業者が多いので、実際に見積を取って比較する必要性が高い
- 見積比較は総額ではなく消耗品の交換範囲で選ぶ
- ディーラー車検は信頼性のほか、保証修理をワンストップで対応できたり、延長保証プランなどの付加価値がある
- 最低限の内容で見てもディーラー車検は多少割高
- 割高な部分に対して安心感などの付加価値を感じられるかが入庫先選びのポイント
以上のようになります。
今回はいずれの見積も良心的な内容でしたが、ディーラーによっては各種手数料や工賃が高い見積を出してくることがあります。
ディーラーとガソリンスタンドの見積を取って比較するだけでも、価格や交換する部品の正当性をチェックできますよ。
ちなみに今回私は保証等の諸々の費用を削ってディーラーで依頼しました。
家族がメインで使うということもあり、なんとなく安心できる方を選びました。
洗車もしてもらってピッカピッカ。
車も喜んでいます!!