車検業者は看板や広告に「1日車検対応」や、「30分車検」などとスピードを売りにしたサービスを行っている所があります。
また、ディーラーなどの販売店から「時間がなければ1日車検で対応しますよ」と入庫促進される場合もあります。
1日預かり車検や30分車検とは、どういった仕組みなのでしょうか?それぞれの特徴や違いについて解説します。
1日預かり車検、30分車検とは?
車検の本来のルールでは、継続車検を受けるために陸運局に車を持ち込んで、検査ラインを行う必要があります。
持ち込み車検の場合は、車検を通すための作業を行う日と、陸運局に車を持ち込んで検査を受ける日で主に2日の時間がかかります。
さらに交換部品を注文して届くまでの納期などの予備日を含めると3日以上の時間を取られる場合もあります。
しかし、全ての車検を陸運局の持ち込み検査を行っていると、陸運局だけでは対応しきれないため、長年車検業務を行ってきた実績があり、国から指定を受けた工場で、車検の検査業務を委託されています。
国土交通省から車検検査の委託を指定された工場を「指定工場」といい、「民間車検場」と呼ばれる事があります。
指定工場は陸運局への持ち込み不要で自社で検査まで行えるので、1日以内で終わるスピード車検が可能になります。
指定工場でなくても1日預かり車検はできる
認証工場や、その他の民間整備工場、個人の車検代行屋などは自社で車検検査ができないため、陸運局への持ち込み車検を行っています。
持ち込み車検でも、1日預かれば点検整備をして車検の継続検査まで行う事ができます。
ただし、指定工場以外の業者は、時間がタイトになる事や、検査に落ちた場合に対応しきれないリスクがあるため、1日預かり車検を受け入れていない場合もあります。
1日車検に対応しているとしても、陸運局までの移動時間があるため、陸運局に隣接している業者を除いて30分車検などのスピード車検・短時間車検はできません。
1日預かり車検や30分車検は土日祝日も対応
陸運局への持ち込み車検の場合は、陸運局が平日しか営業していないため、土日祝日の検査はできません。
指定工場であれば、自社で検査ができるため、土日祝日でも車検を行う事ができます。
指定工場は、検査を行ったら仮の車検証の効力を持つ「保安基準適合証」を発行します。
後日、陸運局で事務手続きのみ行い、有効期限が更新された新しい車検証を発行しています。
1日預かり車検と30分車検の違い
1日預かり車検と30分車検の違いは次の通りです。
1日預かり車検
所要時間:朝に預かって夕方引渡し
作業の流れ:午前中に点検・検査を行う。必要な消耗品などの部品を発注し、午後に届き次第作業を行う
お客様の対応:朝に整備工場に車を持ち込んで夕方以降に取りに来る。もしくは工場のスタッフに朝引き取りに来てもらい夕方に納車される
代車:可能(要予約、業者によっては有償)
1日預かり車検を行う条件:保安基準不適合に該当する部品の納期が翌日以降になる場合
特徴:タイヤやブレーキパットなど、交換に時間がかかる作業を行っても予定通りの時間に終わる
30分車検
所要時間:入庫から最短30分、部品交換や調整によっては30分以上かかる場合もあり
作業の流れ:入庫したらすぐに点検から検査まで行う
お客様の対応:原則店舗で車検が終わるまで待つ。もしくは近隣の散歩など工場の近くで時間をつぶす
代車:原則用意なし
30分車検を行う条件:保安基準不適合になる部分が少なく、大掛かりな調整整備や部品交換の必要がない
特徴:待っている間に車検が終わるので手間が少ないが、作業状況によって30分以上かかる事もある
指定工場でも30分車検に対応しているとは限らない
指定工場は自社で検査までできるので理論上は30分車検を行う事も可能です。
しかし、「スピード車検」や「短時間車検」、「最短○○分車検」などを明記していなければ、指定工場でも30分車検には対応していなく1日預かり車検が最短プランになります。
指定工場が30分車検をやらない理由は次の事が挙げられます。
- ディーラーなど飛び込みの客や想定以上に作業時間がかかる大掛かりな整備業務が多い
- 30分以上の時間がかかり、客からクレームが入るリスクを懸念している
- タイヤ交換など、ゆっくり必要な交換部品を提案や相談をする時間が取れない
- スピードよりも丁寧な作業による質を重視している
- 工場の部品在庫が少なく、午前中注文して午後に部品が入ってくる
1日預かり車検と30分車検の質の違い
30分車検は最低限の点検と検査のみの簡単な作業しか行いません。
30分車検でも車の状態によって消耗品交換を提案する事もあり、追加作業が発生すると30分以上の時間がかかります。
1日預かり車検と30分車検の品質を比べると、作業時間に余裕がある1日預かり車検の方が充実しています。
しかし、最近はスピード車検や短時間車検を高い品質で提供している業者も増えています。
ただし、30分車検はスピード車検の中でもトップ水準に短い作業時間です。
スピードと品質の両方を求めるのであれば、45分車検や60分車検くらいの時間を明記している業者や車検コースを選ぶとよいでしょう。
最短○○分などのスピード車検や短時間車検でも、評判の良い業者であれば豊富な点検や充実のアフターフォローなど高品質のサービスを提供している所もあります。
一概に30分車検などの短時間車検は、1日預かり車検に比べて質が低いとは言い切れません。
まとめ
- 1日預かり車検は、朝預かって夕方以降に受け渡しする車検
- 30分車検は、来店後店舗で待っている間に最短30分の作業で終わるスピード車検
- 30分車検は指定工場のみ対応できる
- 1日預かり車検も主に指定工場が行っていて、その他の工場は理論上は1日でできても対応していない所が多い
- 指定工場でも30分車検を行っている所は限られている
- 1日預かり車検と30分車検を比べると、全体的に1日預かり車検の方が質が高い
- 30分車検は、ほぼ検査を受けるだけの最低限のプランで45分車検や60分車検の業者やプランを選ぶと品質も高くなる
- ○○分車検などスピード車検や短時間車検でも業者によってはディーラーにも負けない高品質の作業と充実のアフターサービスを用意している