車検は保安基準の適合検査に合格しないと継続できません。
車検の検査項目と内容を検査不適合になる事例や、知っておくと便利な豆知識と併せて紹介します。

継続車検を受けるには、国土交通省が定めた保安基準に適合する検査を受ける必要があります。
車検検査は、項目ごとに車を動かして必要な検査を行います。
この検査を受ける設備がライン上になっている事から「検査ライン」と呼ばれています。
車検の検査ラインの内容と項目を紹介します。

同一性の確認

車検の検査ラインの入り口に入ると、係員によって車検証と継続検査申請書の内容と車両の同一性について確認されます。
車検証には、乗車定員や排気量、総重量、外寸などが記載されています。
その内容と車両の状態で相違がないか確認します。

主な同一性の確認

乗車定員とシートの数、安全装備があっているか?

車は車種ごとに乗車定員が定められています。
乗車定員に応じた座席数や、人数分のシートベルトやヘッドレストが付いているかを確認します。

荷物の積載のためにシートを取り外している場合や、後方視界確保やフルフラット化などシートアレンジのためにヘッドレストを外している場合は車検に通りません。
よくある事例では、ミニバンを商用バンのように荷物の積載に特化するために、シートを外して床にベニア板を貼るなど自作改造されるケースがあります。

このように、乗車定員に見合ったシートの取り付けが困難な場合は、構造変更の申請で乗車定員を変更する方法もあります。
ただし、保安基準による弊害が多く乗用車から、4ナンバーの商用車や8ナンバーの福祉車両扱いにするなど区分変更を同時に行うケースが多く、手間や専門技術が必要になります。

外寸の確認

外寸については、全ての車両をメジャーなどで明確に検査する事は少なく、検査員の目視によって不正改造が行われていないか確認します。
疑わしい場合は精密に外寸を測定し同一性を確認します。

キャリアなど、特定の付属品は外寸にはカウントされず取り付けたままでも車検に通ります。
違法改造の要素がある社外エアロパーツや、車からはみ出したオプションが付いていると車検に通りません。

総重量の確認

検査ラインの中に、車の総重量を測定する装置があります。
総重量が車検証に記載されている重量をオーバーしても、最大積載量をオーバーするなど大きな問題がなければ車検は通ります。

車検は総重量に応じて重量税が計算されます。車検証に記載されている総重量より重たいと、重量税の金額が上がる事があるので注意しましょう。
ティッシュや書類など軽い日用品は積んだままでも大きな影響はありませんが、重たい荷物を積んでいる場合は、事前に車から降ろしておくようにしましょう。

車体番号や原動機の確認

車体番号や原動機の型式、排気量などが車検証記載内容と同一か確認します。
エンジン載せ換えをしている場合や車体番号が削られて確認できない場合は車検に通りません。
エンジン載せ換えなど、車検証記載の内容と変わっている場合は構造変更の申請をする事で、登録および車検を通す事ができます。

外廻り点検

検査員が車の周りを1周しながら、保安基準不適合になっている部分の確認や、不正改造、車検証情報との同一性の確認を行います。
車検に落ちる主な要因は、ライトなど灯火類のレンズやガラスの欠損、最低地上高(9cm)の確保、必要な保安部品(反射板など)の有無の確認が行われます。

ライトなどの灯火類のレンズは、ヒビや亀裂が入っている程度で強度や灯火類の点灯に支障がなければ、車検に通る場合があります。
レンズの一部が割れている場合は車検に通りません。ガラスはひび割れや目立つ飛び石傷があると車検不適合になります。

タイヤの車検適合基準

外廻り点検で重要な項目がタイヤです。
タイヤは消耗品で使うほど溝が少なくなっていきます。
車検検査で見られる項目は残り溝です。4本全ての残り溝1.6mm以上残っている事が保安基準適合条件です。

タイヤは寿命を知らせるスリップラインがあります。タイヤ側面に△のマークがあり、その延長線上の溝が1.6mm突起しています。
スリップラインと、隣接する溝が平らになるほどタイヤが磨り減っていると車検に通りません。

残り溝は1箇所でも不適合箇所があると車検は通りません。外減りや内減り、片減りなどで一部でも残り溝が1.6mmを下回っている場合、そのタイヤを交換する必要があります。
その他、ワイヤーが見えている場合や側面に大きな亀裂が入るなど検査員が走行に支障があり危険と判断された場合も保安基準不適合になります。
タイヤ接地面のひび割れや亀裂程度であれば車検は通ります。

灯火類の点検

外回り点検と同時にヘッドライト、ウインカー、ブレーキランプ、バックランプなどの灯火類が正常か点検します。
電球切れは交換しないと車検に通りません。フォグランプやブレーキのマウントランプが付いている場合は、その車についている灯火類全てが正常に作動しないと車検不適合になります。
また、ライトの色が規定の色と異なる場合や、ウインカーの点滅スピードが適切でない場合(ハイフラやワット数変更による不正改造)も車検が落ちる要因になります。

サイドスリップの検査

サイドスリップとは、車の直進性を検査する項目です。
検査ラインに、直線の白線が引いてあり、その上を車を真っ直ぐな状態にしてハンドルを切らずに直進します。
保安基準では1m直進するごとに1.5mm以内の誤差で適合します。

車のサイドスリップは改造などをしなくても、タイヤの磨耗や車重が一方へ偏るなど日常的な使用の中でも少しずつズレていきます。
車検を受ける前にはサイドスリップの検査に適合するためにアライメント調整を行います。

陸運局周辺にある予備検査場では、サイドスリップの検査や調整を行っているので、ユーザー車検で不安がある方や車検に落ちた場合は、予備検査場にサイドスリップの調整を行ってもらうとよいでしょう。

スピードメータの検査

自動車のスピードメーターは原則、前輪の回転数で識別されています。
車検の検査ラインでは、2つのローラーの上に車の前輪を乗せて、タイヤを空転させてスピードメーターを上げていきます。

スピードメーターが時速40kmに達した時点でボタンを押し、機械による判別速度と相違がないかを検査します。
スピードメーターケーブルの不具合がある場合や、タイヤの直径を変える不法改造をしているとスピードメーターが正しく動作せず車検に通らなくなります。

ヘッドライト検査

専用の機械や壁に付けた印を使ってヘッドライトの光軸と光量が適切か検査します。
ユーザー車検で最も検査に落ちやすい項目です。

光軸は車を走らせていくと自然にネジが緩んで少しずつズレが発生します。
車検は検査ラインを通す直前に光軸調整を行うと一発で通る可能性が高まります。

陸運局の周辺にある予備検査場で光軸調整をしてくれます。
光軸調整に落ちても、検査員が「少し左上」など、どのように調整すれば適合するかアドバイスをしてくれます。
受付時間内に光軸を調整して再度検査を受ければ車検に通ります。1日に検査ラインを通せる回数と時間が限られているため、必要に応じて予備検査場で光軸調整をしてもらってから出直すようにしましょう。

排気ガスの測定

エンジンをかけてマフラーから出る排気ガスのCO2の含有量などが適正値かを専用の機械を使って測定します。
社外マフラーを付けている場合は同時に、排気音の測定を行われる場合もあります。
触媒の故障・摩耗やオイル漏れで黒煙を吹いている場合は排気ガスの測定で車検に落ちる場合もあります。
排気ガスの測定でひっかかると、その場の作業で改善する事が困難で一度持ち帰り、整備や修理を行う事になります。

下廻り検査

陸運局の検査ラインは、地面をくり抜き検査院が地下から下廻りの状態を確認できるようになっています。
指定工場の場合は、リフトアップにて下廻りに部品の欠損やオイル漏れなどの不具合がないか検査します。

法定24ヶ月点検は、保安基準適合検査より厳しい点検項目がある

車検と法定24ヶ月点検は別物です。
法定24ヶ月点検は車検の検査を通す事も目的にしています。
そのため、法定24ヶ月点検を国土交通省による指定工場や認証工場でしっかり受けて、必要に応じた適切な整備や調整、部品交換を行えば車検の検査に落ちる事はありません。

法定24ヶ月点検の点検項目は、車検の保安基準適合項目よりも厳しい内容になっています。
法定24ヶ月点検は56項目があり、車検業者によっては更に日常点検などを上乗せして合計100項目前後の点検を行っている場合もあります。

車検を業者に依頼すると、点検結果に応じて悪い箇所や交換が必要な部品を提示されます。
しかし、法定点検は車検検査では見られない項目も含まれています。車検業者に言われた部品を全て交換しなくても車検に通る場合がある事を認識しておきましょう。

車検業者は、車検検査に通る状態でも売り上げを伸ばそうと、早期交換や過剰整備を強く勧めてくる場合もあります。
賢く車検を受けるためには、おおよその車検検査項目や内容を理解して、過剰整備を断る事が必要です。

ただし、車検検査に通る状態でも法定点検の結果、交換や整備を勧められる事は、車を安全に乗るために必要なことです。
車検検査に影響を与えない事は受け流すのではなく、しっかり説明を聞いたり必要に応じて状態を直接確認して適切な整備や部品交換を行うようにしましょう。

まとめ

車検の検査項目は次のものがあります。

・同一性の確認
・外廻り点検
・サイドスリップ検査
・スピードメーター検査
・ヘッドライト検査
・排気ガス測定
・下廻り検査

それぞれ、重視されるポイントや、不適合になりやすい事例を理解しておくと、賢く車検を受けるための知識として役立ちます。