車を保有するためには、定期的に車検を受ける必要があります。
車検は費用がかかり、車を保有するための維持費で大きな負担要素になっています。
そもそも車検とは、どのような目的でどのような義務やルールがあるのかを一から詳しく解説します。
車検とは
車検とは「自動車検査登録制度」の略称で、現在は広く「車検」という言葉が業者や運輸局を含めて定着しています。
車検は、国土交通省が指定する車両に対して、一定期間ごとに検査を行い、自動車の所有権を公証するために登録する制度です。
車検が必要な車両
- 自動車(軽、乗用車、貨物車、大型車を含む全ての自動車)
- 排気量250ccを超えるオートバイ
- 公道を走行する特殊車両(車検付きフォークリフトなど)
ミニカーや250cc未満のオートバイや原付バイクは車検の必要がありません。
自動車免許(普通・中型・大型)で運転できる4輪自動車(4輪バギーなどのミニカーを除く)は、全て車検が必要になります。
車検の目的
車検は1930年にバスやタクシーなどの安全性確保を目的に制度化され、1951年に交付された道路運送車両法によって乗用車を含めて義務化、また制度改革を繰り返して現在の車検制度に至りました。
日本は第二次世界大戦以降、急速な経済成長を遂げて、自国の車産業も大きな発展を遂げたため、個人でも車を保有する方が増えてきました。
車社会に変化すると、当然交通事故も増えてきます。自動車による交通事故は死亡事故に発展する事も多く、安全対策が大きな課題でした。
交通事故の原因の中には正しい保安部品を付けていない車や、車の故障によるものが多く、保安基準に適合して、しっかり整備を行っている車両にする事を義務付けるために車検制度ができました。
現在もその概念は変わらず、日進月歩で車の故障リスクや安全性能は高くなったとはいえ、定期的に保安基準に適合している車か検査する事を義務付けて、故障や整備不良による事故リスクを抑制しています。
また、定期的に検査を行う事で不正改造車の撲滅や排ガス規制不適合による環境汚染を予防しています。
車検制度とほぼ同時期の1955年に始まった自賠責保険の加入も義務付けられて、自賠責保険に加入していないと車検の継続検査を受けられない仕組みになっています。
車検は自賠責保険や重量税などの税金の支払い漏れを防止する役割も担っています。
車検のルール
車検は道路運送車両法第4条によって、車検が必要な車両で公道を走行する車に登録(新規・継続)を義務付けています。
違反すると、運転者に対して道路交通法によって免許の違反点数の加点と罰金による罰則が科されます。
車検は大きく分けて「新規登録(新車・中古車)」と「継続検査」の2種類があります。
車検は一度登録をすると1年〜3年の有効期限があり、継続検査を受けることで、車検有効期間を延長して車を乗り続けることができます。
車検を受けるためのルールについて解説します。
車検に必要な費用
車検は以下の法定費用を納付することが義務付けられています。
- 自賠責保険
- 重量税
- 印紙代
自賠責保険と重量税は車のクラスや重量、車検期間、地域によって費用が異なります。
重量税は経過年数やエコカー減税などによって金額が変わることもあります。
エコカーではない満13年未満で自賠責保険が全国価格の適用になる地域の車検にかかる法定費用の一例を紹介します。
〜法定費用の一例(全国価格)〜
・軽自動車2年継続車検
自賠責保険:26,370円(24ヶ月)
重量税:6,600円
印紙代:1100円
合計:34,070円
・小型乗用車(総重量1トン未満)2年継続車検
自賠責保険:27,640円(24ヶ月)
重量税:16,400円
印紙代:1100円
合計:44,170円
・中型乗用車(総重量1.5トン未満)2年継続車検
自賠責保険:27,640円(24ヶ月)
重量税:24,600円
印紙代:1100円
合計:53,340円
・大型乗用車(総重量2トン未満)2年継続車検
自賠責保険:27,640円(24ヶ月)
重量税:32,800円
印紙代:1100円
合計:61,540円
車検費用は、このほか保安基準を適合するための整備費用や、車検を依頼する業者への手数料が別途発生する場合があります。
車検検査
車検は、自賠責保険や重量税などの法定費用を納付するだけではなく、車を安全に乗るための保安基準に適合しているか、検査を受ける必要があります。
車検の検査項目は次のものがあります。
・同一性の確認
車検証や申請書類の記載内容と、車両が同一であるかの確認します。シートの取り外しや、エンジンの載せ換えなどがある場合は、改造申請をして登録内容を変更しないと車検が通りません。
・外廻り点検
車の外観や灯火類に問題がないか確認します。ボディーの傷や凹みは走行に支障がなければ保安基準に適合しますが、ライトのレンズやガラスが割れていると保安基準に適合しません。
そのほか、最低地上高の確保など不正改造が行われていないかもチェックされます。
・サイドスリップ検査
サイドスリップとは車の直進性を確保するための前輪の角度です。
車は直進安定性を増すために真直ぐではなく、僅かに左右それぞれ内側に向けられる事が多く、サイドスリップ角度の調整機能が付いています。
長年走っていると、サイドスリップの角度がズレてくるので調整が必要です。車検ではサイドスリップの角度が適性になっているかmm単位で測定します。
車検整備で調整が必要になることが多い項目です。
・スピードメーター検査
スピードメーターが適切に動いているか確認します。
検査方法は、タイヤを機械で空転させてスピードメーターが時速40kmを指した時に検査を受ける車の運転者がボタンを押して実際の速度とメーターの速度の誤差を確認します。
スピードメーターのケーブルの接触不良や、タイヤの直径を変える不正改造などがあると車検が通りません。
・ヘッドライト検査
光量・光軸調整を行います。光軸は走行を繰り返していくとズレてくるので調整が必要になることが多いです。
・排気ガス測定
マフラーの出口に専用の機械で排気される空気を測定して排気ガスが適正値内かチェックします。マフラーの触媒が磨耗していると不適合になる事があり、特にディーゼル車が検査に落ちやすい項目です。
・下廻り検査
車の下部を検査員が確認して、舵取り装置の確認やオイル漏れなど不具合がないか検査します。
以上の8項目全てに適合することが車検の検査に適合するための条件です。
車検を受ける場所
車検を受ける場所は原則、全国各地にある運輸支局(陸運局)です。なお、軽自動車は運輸支局に隣接する軽自動車協会です。
継続検査や新規登録の車検証の発行は全て運輸支局での手続きが必要です。
運輸支局には車検の検査ラインがありますが、全ての車の検査を運輸支局で行うキャパシティはありません。
そのため、国土交通省が指定した整備工場に検査業務を委任しています。
国土交通省から指定を受けた工場は民間車検場とも呼ばれ、自社で検査までできるので短時間車検に対応しています。
認証工場やその他の整備工場や代行業者が、陸運支局に持ち込みでの車検代行業務を行っている場合があります。
つまり、車検を受ける方法は次のものがあります。
- ユーザー車検による、運輸支局への持込
- 指定工場への依頼
- 認証工場やその他業者の持ち込み車検代行の利用
指定工場の車検を利用した場合は、保安基準適合証が発行され、2週間は車検証と同じ効力を持ちます。
その間に指定工場のスタッフが書類のみを運輸局で発行してもらい、後日ユーザーに有効期限が変更された新しい車検証を配布します。
車検を受けるには、車を預けるだけではなく、納税証明書をはじめ必要書類があります。
事前に利用する業者の指示に従って、車検に必要な書類を揃えておくようにしましょう。
新規登録の車検
車検は新車やナンバーが無い中古車を新規に登録する時も必要です。
新規登録の車検は次の方法があります。
- 新車メーカーによる完成検査終了証による書類のみの手続き
- 中古車販売業者などが行う予備車検による書類のみの手続き
- 陸運支局に車を持ち込んで検査ラインを通す
新車の場合は、メーカーで完成検査を受けると、書類のみの手続きでナンバーを発行できます。
新車ディーラーは、新車に限りナンバーの封印業務の委託を受けていることが多く、陸運支局に車を持ち込まずに、登録に必要な全ての手続きができます。
ただし、完成検査終了証の有効期限は9ヶ月で、期限を切れると新車でも車両を陸運支局に持ち込んで、検査ラインを通さないといけなくなります。
新車販売店が長期在庫の大幅値下げをするのは、完成検査終了証の有効期限内に売りたいという思惑があります。
中古車の場合は、遠方の業者で購入する時に、あらかじめ販売業者が検査ラインを通して予備車検を受ける事で、3ヶ月以内に限り検査ラインを通す必要がなく、登録できます。
ただし、ナンバーの封印が必要なので原則陸運支局へ車両の持ち込みが必要です。
整備や検査ラインを通すノウハウが無い個人が自ら登録する場合に予備車検が活用される事が多いです。
こうした、新車の完了検査や中古車の予備検査を受けている車両を除いて、新規登録する時は継続検査の持ち込み車検と同様に、運輸支局で検査ラインを通して登録と車検を同時に行う必要があります。
なお、新車に限り、乗用車は3年、商用車は2年と継続検査より1年長い有効期間が付与されます。
車検と法定点検の違い
「車検 = 法定点検」と勘違いされる方がいますが、車検と法定点検は全くの別物です。
法定点検は法定12ヶ月点検と法定24ヶ月点検があります。乗用車の継続車検は2年ごとなので、車検時に法定24ヶ月点検をセットにしている業者も多数あります。
法定点検は車を安全に乗るために、法律上義務化されていて、国土交通省から認められた指定工場か認証工場で受けられます。
車のフロントガラス左上に貼ってある丸いステッカーが法定点検を受けた証になっています。
法定点検は、法的に義務化されていますが、受けなくても罰則はありません。
ディーラーなどは義務化されている事から、車検を受ける場合は必ず法定24ヶ月点検を受けないといけない自社ルールを作っている事もありますが、実際には持ち込みによるユーザー車検や格安車検業者を利用することで、法定点検を受けずに車検だけを受ける事も可能です。
ただし法定点検は車を安全に乗るために必要なもので、故障の早期発見ができるメリットがあります。
法定点検を受けずに磨耗している部品をそのままにしておくと、寿命が来る前に交換するよりも修理費用が高くついたり、事故に繋がる場合があります。
普段から小まめなメンテナンスをしない方や、自分で車や消耗品の状態の見極めができない方は12ヶ月ごとに法定点検を必ず受けるようにしましょう。
車検は業者によって費用がさまざま
車検を業者に依頼する場合、点検項目や消耗品交換など内容が同じでも、業者によって車検費用が大きく変わる場合があります。
全般的にディーラー車検は費用が高く、車検専門店、ガソリンスタンド、部品量販店は安い傾向があります。
車検は安ければいいという訳ではなく品質も重要ですが、業者をしっかり見極めることが重要です。
最近では、格安車検業界の競争が激化していて、低価格で高品質、安心のアフターフォローを行っている優良業者が増えてきました。
まとめ
車検とは、車を保有して公道を走るための義務で科された制度で、乗用車であれば2年ごと(新車購入時のみ3年)で保安基準に適合している検査と、自賠責保険、重量税、印紙代の法定費用を払う必要があります。
車の安全や事故防止、法定費用の徴収、排ガス規制や不法改造の抑制を目的にしています。
車検費用は車の重さや車両クラス、用途、エコカー減税の有無などによって異なり、依頼する業者ごとに手数料や追加整備費用がかかります。
車検は8項目の検査に全て適合する事で継続(登録)でき、法定点検を受けないで車検のみ通すことも可能です。
ただし、車検は安全に乗るためのもので、車検の時くらいはしっかり点検整備をしておかないと故障リスクが高まり、結果的に修理費用が高く付いてしまう事もあります。