車検は本来、整備や検査など一連の流れで2〜3日預けて作業する事が一般的でした。
ディーラーや老舗整備工場など、自社で検査を行える指定工場を利用すれば、朝に預けて夕方受け渡しの1日車検での対応もできます。

さらに、近年では大手チェーン店をはじめ、30分や60分などの短時間スピード車検を行っている業者も増えています。
最短○○分などと明記しているスピード車検や短時間車検は、本当にその時間通り終わるのでしょうか?

スピード車検、短時間車検でかかる時間

車検を業者に依頼する利用者からは、スピード対応など時間を求める声も多いです。
最短○○分などのスピード車検や短時間車検は、店舗の待合室で待っている間に終わるメリットがあります。

1時間前後の時間で終われば、代車が不要で家と工場を引取りと納車で合計2往復する手間もかかりません。
しかし、車を預ける車検と違い、たとえ数十分の作業の遅れでも、店舗で待っている事から予定通りの時間で終わらないとストレスを感じる方も多いです。

スピード車検の利用者は休日を利用している方が多く、その後予定を入れているケースもあります。
しかし、○○分車検は時間通りに作業が終わらない場合もあるので注意しましょう。

スピード車検、短時間車検が時間通りに終わる割合

○○分車検は、主に最短時間を明記しています。つまり、その時間で必ず車検が終わると保証されているものではありません。
仮に60分車検と明記している業者でも90分や120分ほどの時間がかかってしまう事は珍しくありません。

最短時間で終わる条件は、車の調整や整備、部品交換の必要がほとんどなく、点検と検査のみで作業が終わる場合です。
本当に最短時間で終わるのは、走行距離が少ない新車購入後1回目の車検や、12ヶ月法定点検や半年点検など普段から点検整備をしっかり行っている方のみです。

業者によって異なりますが、全体の半数以上は最短時間を数十分単位で超過する作業時間がかかっています。
なかには9割以上が最短時間では終わらない業者もあります。

スピード車検や短時間車検は時間ごとに予約を取って1日の作業予定を段取りしています。
30分〜60分の最短時間を明記している業者でも、作業の予定表は1つの車検で90分前後の枠を取って対応している場合もあります。

部品交換が必要だと、その日に車検が通らない場合も

車検を通すには保安基準適合検査に合格しなければいけません。
電球切れやブーツなど主要な部品の亀裂やひび割れ、タイヤの摩耗など状況に応じて部品交換をしないと車検に通りません。

部品交換の項目が多いと、その作業時間が車検最短時間に上乗せされます。
また、部品の在庫がないと、その日のうちに車検が通らない場合もあります。

法定点検や半年点検など日常的に点検整備をしっかり行っていないなど、車の状態に不安がある場合は事前見積をして、必要な交換部品をあらかじめ発注しておくとよいでしょう。

車検に必要な時間

車検を通す事が目的であれば、検査ラインを通して必要な書類の記入のみで作業は完了します。
検査のみであれば、指定工場の場合で不具合がなければ10分〜15分ほどで終わります。

別途、点検を行う場合でも車検のための点検は目視点検や触手点検が中心なので15分前後で完了します。
そのほか、受付時間なども含めて合計30分ほどが最短の所要時間です。

点検項目や調整箇所によっても60分程度が、車検を行うための現実的な最短所要時間です。

短時間車検、スピード車検を行っている業者の企業努力

ディーラー車検の場合、主に車検に必要な作業枠は120分を取っています。
消耗品交換や調整、整備などを含めると、車検は本来2時間前後が適正時間です。

しかし、30分や60分などのスピード車検を行っている車検業者は、よりスピーディーに作業を進めるため、様々な企業努力を行っています。
車検のスピード対応に強い整備工場の取り組み事例は次のものがあります。

  • 複数の整備スタッフによる同時作業
  • 記録簿や点検表など事務作業をスムーズに行うシステムの導入
  • 立会制度や部品交換の可否を確認する専属スタッフの配置など、利用者の部品交換の確認をスムーズに取るための運営体制
  • スピード車検に対応するための整備スタッフの教育、及び業務マニュアルの作成

車検業者は最短時間による作業よりも過剰整備の獲得に力を入れている

最短○○分などのスピード車検や短時間車検を行っている整備工場でも、最低限の整備で作業を完了させることを優先して考えていない場合もあります。
車検を最低限の内容で時間通りに終えるよりも、消耗品交換など過剰整備を含めて売上を伸ばす事も重視しています。

部品交換や、部品交換のための説明を行った場合は、最短時間で作業が終わらなくても業者側は言い逃れができます。
最短○○分は、顧客獲得のための広告の要素が強く、実際には60分〜90分ほどの作業時間を設けて予定の段取りをしている場合もあります。
スピード車検や短時間車検を利用する際は、最短時間以上待たされる事も想定して利用するようにしましょう。

また、消耗品交換などの過剰整備を提案されたときに、ゆっくり考えて検討する時間がありません。
事前見積りを取るか、想定される消耗品交換を自分で把握しておき、どこまで交換、整備するか考えをまとめておくとよいでしょう。

まとめ

最短○○分などを明記しているスピード車検や短時間車検は最短時間で実際に終わるのは車に何も不具合がなかった場合のみです。
追加整備や調整が出ると、必要以上に待たされる場合もあります。
また、保安基準適合検査に合格させるための交換部品の在庫がないと、その日のうちに車検を通せない場合もあります。

実際の作業時間を確認したい場合や、車検に必要な整備項目に不安があれば事前見積をとっておくとよいでしょう。
必ず最短時間で終わるとは限りませんが、作業効率を上げる様々な取り組みを行っています。

ただし、スピード対応を売りにしている車検工場でも時間内に作業するだけではなく、部品交換を提案して売上を伸ばす事にも力を入れています。
あくまでも○○分車検は最短時間です。事前見積りを取らない場合は90分〜120分くらいの時間がかかる覚悟をしておく事が望ましいです。